保育教諭にとって、保護者さんとの信頼関係は保育の質を支える大切な要素です。どれだけ子どもに丁寧に関わっていても、保護者さんに伝わらなければ「ただ遊んでいるだけでは?」と誤解されることもあります。
そんなときに役立つのが「教育・保育要領」。国が定めた指針を根拠にして説明すると、活動に説得力が生まれ、保護者さんからの信頼も得やすくなります。
保護者さんから「遊んでばかりで小学校に上がって困らないでしょうか」と質問され、答えに詰まった経験があります。しかし「教育・保育要領でも遊びを通した学びが重視されています」と伝えるようになってから、説明に自信が持てるようになりました。
この記事では、教育・保育要領を活かした保護者対応の方法を、事例や工夫を交えて紹介します。
なぜ教育・保育要領を保護者説明に活かすのか
要領は国が定めた信頼性の高い基準
「教育・保育要領」は保育所保育指針・幼稚園教育要領・認定こども園教育・保育要領を統合する国の指針です。保護者さんにとっても「国が定めた基準」と聞けば納得感が得られやすいのです。
「遊び=学び」であることを伝える根拠になる
砂遊びや鬼ごっこなど、一見ただの遊びに見える活動も、要領では「思考力」「協同性」「健康」などにつながる学びとして示されています。要領を根拠にすれば「遊びは学び」という説明に説得力が生まれます。
家庭と園の方向性を一致させやすい
要領に基づいた説明をすると、「園が子どもの育ちをどう見ているか」が明確になります。その結果、家庭と園が同じ方向を向いて子どもを支えやすくなるのです。
よくある保護者さんの疑問と要領を根拠にした答え方
「遊んでばかりで勉強していないのでは?」
→ 回答例:「教育・保育要領でも『遊びを通した学び』が重視されています。砂遊びでは思考力や協同性が育ち、文字や数への関心の芽生えにもつながるんです。」
「子ども同士のトラブルを放っておいていいの?」
→ 回答例:「要領には『人間関係の形成』が大切と書かれています。けんかも経験のひとつで、友達と折り合いをつける力を育てる大切な場面なんです。」
「発達が遅れている気がするのですが…」
→ 回答例:「要領でも『発達には個人差がある』と明記されています。焦らず、その子のペースに合わせて支援していきますので安心してください。」
教育・保育要領を使った説明の実践例
日常の活動を要領の言葉で説明する
例:「砂遊びを通して『思考力の芽生え』や『協同性』が育っています。」
連絡帳や園便りに要領の視点を取り入れる
例:「今日は友達と協力してリレーを楽しみました。教育・保育要領にある『協同性』が育まれている姿です。」
個人懇談で子どもの成長を要領に照らして伝える
例:「Aくんは最近、自分の考えを友達に伝えることが増えてきました。これは要領で示されている『言葉による伝え合い』の育ちです。」
現場での課題と解決のヒント
要領の言葉が難しくてそのまま伝えにくい
→ 「協同性」→「友達と一緒に活動する力」など、わかりやすい言葉に言い換えましょう。
時間がなくて丁寧に説明できない
→ 日常の会話だけでなく、連絡帳やお便りを活用すれば無理なく伝えられます。
園全体で説明がばらつく
→ 職員会議や研修で「共通の言葉」を作っておくと、園全体で一貫性が出ます。
保護者対応に悩むのは自然なこと
「説明しても納得してもらえないのでは」と不安になるのは、誰しも経験することです。私も新人時代、保護者さんに質問されると緊張してしまい、うまく答えられないことがありました。しかし、要領を活用するようになってからは「国の指針をもとに説明している」という安心感が支えになりました。
今日からできる小さな一歩
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週案や日案に「要領の言葉」を1つ書き添える
→ 例:「おにごっこ(健康・協同性)」 -
連絡帳で「活動→ねらい→姿」を簡単に書く練習をする
→ 「砂遊び→工夫して山を作る→思考力が育っている」 -
園内研修で「要領をどう保護者さんに伝えるか」をテーマに話す
→ 園全体で共通の説明方法を持つと安心感につながります。
まとめ
教育・保育要領は、保育現場の指針であると同時に、保護者さんへの説明の根拠としても非常に有効です。要領を活かして「遊び=学び」「発達は個人差がある」ということを伝えれば、保護者さんの理解と信頼を得やすくなります。
大切なのは、難しい専門用語をそのまま伝えることではなく、要領の視点をわかりやすい言葉に置き換えて日々の活動と結びつけること。
今日からまず、連絡帳や日常の会話に「要領に基づいた言葉」を一つ取り入れてみませんか? それが保護者さんの安心と信頼、そして園と家庭のよりよい連携につながります。
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