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【解説】「遊びを通した学び」とは? ― 要領に示された遊びの意味を読み解く

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「遊びを通した学び」という言葉は、保育所保育指針や幼稚園教育要領に何度も登場します。けれども、実際に現場で保育をしていると「これは本当に学びにつながっているのだろうか」と不安に思うことはありませんか?

園児が夢中になって積み木を重ねているとき、砂場で山をつくっているとき、あるいは友達同士で追いかけっこをしているとき。見ている側からすると「ただ遊んでいるだけ」に映るかもしれません。でも、その一つひとつには、考える力や人間関係を築く力、体を動かす力といった大切な育ちが隠れています。

一方で、保護者さんから「今日はどんな学びをしましたか?」と聞かれると、答えに迷ってしまう場面も少なくありません。「遊びが学びです」と伝えても、納得してもらえるかどうか、不安に感じることもあるでしょう。

この記事では、やさしい幼児教育の専門家の視点から「遊びを通した学び」の意味を読み解きます。保育要領に示された内容を踏まえながら、保育士が現場で感じやすい悩みや課題、そして実践のヒントを具体的に紹介します。

読み終えたとき、きっと「遊びをどう見取ればよいのか」「保護者さんにどう伝えればよいのか」が少しずつクリアになっていくはずです。

「遊びを通した学び」とは?基本的な考え方

遊びと学びは切り離せない

子どもたちにとって遊びは、生活そのものです。大人の「勉強」のように机に座って教えられる形ではなく、自分で試し、工夫し、楽しむ中で自然に学びが積み重なっていきます。
例えばブロックを組み立てるとき。子どもは「どうすれば倒れないか」を考えながら、試行錯誤を繰り返しています。このプロセス自体が、論理的思考や空間認識といった学びにつながっています。

保育要領に示される「遊びの意味」

保育要領では、「遊びを通しての総合的な学び」が強調されています。ここでいう総合的とは、運動、言語、社会性、感情、創造性といった複数の領域が遊びの中で同時に育まれることを意味しています。
たとえば「ままごと遊び」では、言葉のやりとりを通してコミュニケーション能力が育ち、役割を演じることで社会性や想像力が養われます。遊びは一つの領域にとどまらず、子どもの全人的な発達に寄与しているのです。

子どもの主体性と探究心との関わり

「遊びを通した学び」が重視される背景には、子どもが主体的に取り組むことの価値があります。保育士が提示した活動ではなく、自分で選び、考え、友達と関わる中で広がる学びは、深い定着につながります。
主体性を持って遊ぶとき、子どもは「探究する人」としての姿を見せます。これは国際バカロレア(IB)が掲げる「学習者の姿」とも重なり、世界的に求められる教育観と一致しています。

保育士が直面するよくある悩み

「ただの遊び」と思われてしまう保護者対応

現場でよく聞く声のひとつが、「保護者さんに説明するのが難しい」というものです。園児が一日中ブロックや砂遊びに熱中していると、保護者さんから「今日は何を学んだの?」と尋ねられることがあります。
このとき、「遊びが学びです」と答えるだけでは納得が得られにくいこともあります。そこで保育士には、遊びを通して育っている力を言葉で説明するスキルが求められます。

活動のねらいをどう設定するか分からない

保育計画を立てるとき、「遊びを通しての学び」をどのように目標に書き込むか悩むことがあります。自由遊びの中に多様な学びがあると分かっていても、具体的に「言葉の発達」や「社会性の広がり」といった項目に落とし込むのは難しいものです。結果として、「ねらいが曖昧」「形だけの記録になってしまう」という声もよく聞かれます。

記録やカリキュラムへの落とし込みの難しさ

保育士は日々の記録を書くときに「この遊びをどう言語化すればいいのか」と悩むことがあります。園児が夢中で描いた絵に込められた意味や、砂場での協力遊びの中で見られる社会性。これらを適切に表現しなければ、「成長の姿を見取る」ことが難しくなってしまいます。
また、同僚や職員間で解釈がバラバラだと、カリキュラムとしての一貫性が崩れてしまうこともあります。

実践に活かすための具体的な方法

遊びを観察し「学びの芽」を拾う

保育士の大切な役割のひとつは、子どもたちの遊びをただ見守るだけでなく、その中に潜む「学びの芽」を見取ることです。
たとえば、園児が積み木を高く積み上げては崩している場面を考えてみましょう。大人からすると「同じことを繰り返しているだけ」に見えるかもしれません。でも実際は「どうしたら崩れないのか」「もっと高くできるか」という実験を繰り返し、構造の理解や因果関係を探ろうとしています。
このとき保育士が「倒れない工夫があるんだね」と言葉を添えると、子ども自身が学んでいることに気づき、さらに探究を深めることができます。

子どもの思考を深める言葉かけ

「遊びを通した学び」を支えるには、保育士の言葉かけも大切です。たとえば絵を描いている子どもに対して「上手だね」だけで終わるのではなく、「ここはどんな気持ちで描いたの?」と問いかけると、子どもは自分の表現を振り返るきっかけを得ます。
また、友達とケンカした場面でも、「だめでしょ」と叱るだけでなく、「どうして取りたかったの?」「どうしたら一緒に遊べるかな?」と問いかけると、思考力や協働する力の育ちを支えることにつながります。

保育士同士で視点を共有する

遊びをどう見取るかは、保育士によって微妙に解釈が違うことがあります。ある職員は「身体を動かす力」と捉え、別の職員は「協調性の育ち」と捉えるかもしれません。
だからこそ、同僚やチームで日々の保育を振り返り、「この遊びの中にはこんな学びがあったね」と共有することが重要です。視点をそろえることで、子どもたちの育ちを一貫して支えることができ、カリキュラム全体に説得力が生まれます。

安全配慮と「やらせすぎない」バランス

遊びは自由であるからこそ、安全面への配慮も欠かせません。走り回る遊びや高いところに登る遊びは、体を使った育ちを支える大切な機会ですが、怪我のリスクも伴います。
また、保育士が「もっとこうしてみたら?」と先回りしてしまうと、子どもの主体性が損なわれることもあります。安全は確保しつつも、あくまで子どもの意思を尊重し、「やらせすぎない」関わり方を意識することが必要です。

遊びを通した学びの注意点

形だけの遊びになってしまうリスク

時には「遊びを取り入れているつもり」が「活動の形だけ」になってしまうことがあります。たとえば製作活動で、保育士があらかじめ手順を決め、子どもにその通りにやらせてしまうケースです。この場合、子どもは「作品を完成させる」という目標に従っているだけで、主体的な探究や創造が生まれにくくなります。

学びを急ぎすぎることの弊害

遊びの成果をすぐに「文字が書けるようになった」「数を数えられるようになった」といった具体的な学力に直結させようとすると、子どものペースを無視することになります。遊びは長い時間をかけてじっくり学びを育むもの。結果を急ぐあまり、遊びそのものの楽しさを奪ってしまう危険性があります。

保育士の評価が過度にならないように

遊びを記録するとき、どうしても「できた・できない」に注目してしまいがちです。しかし、遊びを通した学びは「過程」にこそ価値があります。
たとえば、友達とのやり取りの中で意見がぶつかったとしても、それは失敗ではなく「コミュニケーションの練習」と捉えることができます。結果よりも、その場面で見られた「子どもの姿を見取る」ことを大切にしたいですね。

よくある質問(FAQ)

遊びは「自由遊び」だけを指すのですか?

いいえ。自由遊びはもちろん大切ですが、保育士が環境を整えて導く「設定保育」や「集団遊び」の中にも学びはあります。大切なのは「子どもが主体的に関わっているかどうか」です。

どんな遊びが学びにつながるのか?

特定の遊びだけが学びを生むわけではありません。砂場、鬼ごっこ、製作、ままごと…あらゆる遊びに学びの要素があります。大切なのは、保育士がその遊びをどう解釈し、どう言葉で支えるかです。

保護者さんへの説明はどうすればよいか?

「今日は積み木でタワーをつくっていました」と報告するだけでは伝わりません。「倒れないように工夫して、最後まで挑戦していました。粘り強さや考える力が育っています」と具体的に伝えると、保護者さんも安心して遊びの価値を理解してくれます。

理解をさらに深めるために ― 書籍の活用

なぜ書籍が役立つのか

ここまで、「遊びを通した学び」の意味や、保育士が直面する課題、実践の工夫についてお伝えしてきました。
ただし、実際の保育現場では「もっと事例が知りたい」「自分の園に合った取り入れ方を考えたい」と感じることが多いのではないでしょうか。
インターネット上の情報だけでは断片的になりがちで、全体像をつかみにくいというデメリットがあります。

その点、関連書籍は体系的に内容が整理され、研究的な裏づけや豊富な実践事例が紹介されています。読み進めることで「なぜそうするのか」「子どもの育ちをどう見取ればいいのか」が、よりクリアになっていきます。

書籍を活用するコツ

「本は最後まで読む時間がない」という保育士さんも少なくないでしょう。その場合は、目次を見て、自分が困っているテーマや疑問に直結する章から読んでみることをおすすめします。
また、職員会議や研修のときに気になるページをコピーして持ち寄り、同僚と一緒に話し合うと、新しい視点に気づくことができます。
一人で読むだけではなく、園全体の学びにつなげることで、「遊びを通した学び」が共通理解となり、カリキュラムや日々の保育に反映しやすくなります。

書籍を選ぶときの注意点

もちろん、書籍を選ぶ際には注意も必要です。研究的すぎて現場に活かしにくい内容や、実践事例が少なく抽象的なものも存在します。レビューや紹介文を確認しながら、自分の園の保育方針や課題に合ったものを選ぶとよいでしょう。
また、一度に多くを購入する必要はありません。まずは一冊、現場で役立ちそうな本を選び、実際に活用しながら「保育士としての学び」を積み重ねていくことが大切です。

実践を助ける関連書籍の紹介

実践を続ける中で「この関わりで合っているのか」「もっと良い方法はないか」と迷うこともあると思います。そんなときに役立つのが、理論と事例を学べる関連書籍です。ここでは特におすすめの4冊を紹介します。

まずは、この本に書かれている内容をどんどん真似してみてくださいね。そうすることで、日々の保育の負担がぐっと減ります。
その分できた心の余裕で、自分なりの工夫を加えながら保育を改善し、子どもたち一人ひとりの育ちを支えていきましょう。

どれも教育・保育要領に沿った内容で、日々の実践や保護者さんへの説明に役立つものばかりとなっています。

『幼保連携型認定こども園教育・保育要領ハンドブック 』の活用

保育現場で必携の一冊が 『幼保連携型認定こども園教育・保育要領ハンドブック (Gakken保育Books)』 です。要領の内容をわかりやすく整理し、日々の保育や指導計画にどう生かすかを丁寧に解説しています。園児の育ちを支える視点を確認したい新人から、中堅・ベテランの先生まで役立つ実践書です。教育・保育要領を日常の保育に落とし込みたい方にぜひおすすめです。

遊びが学びに欠かせないわけ―自立した学び手を育てるで学べる視点

子どもにとって「遊び」は単なる楽しい時間ではなく、主体的に学びを深める大切な営みです。『遊びが学びに欠かせないわけ―自立した学び手を育てる』は、保育要領の理解を実践につなげたい保育士さんにおすすめの一冊。遊びの価値を理論と事例でわかりやすく解説し、保護者さんへの説明にも役立ちます。

『0・1・2歳児の発達と保育:乳幼児の遊びと生活』で広がる事例

乳児期の育ちを理解するために役立つ一冊が 『0・1・2歳児の発達と保育:乳幼児の遊びと生活』 です。月齢ごとの発達の特徴や、遊びや生活を通した支援のポイントがわかりやすくまとめられています。授乳・睡眠・食事など日常の生活場面をどう保育に結びつけるかを学べるので、新人の方から経験を重ねた先生まで必携の実践書です。

『3・4・5歳児の発達と保育:乳幼児の遊びと生活』で広がる事例

就学前の子どもたちを支える先生におすすめの一冊が 『3・4・5歳児の発達と保育:乳幼児の遊びと生活』 です。年齢ごとの発達の特徴や、遊びや生活を通じた支援のヒントがわかりやすくまとめられており、日々の保育実践にすぐ役立ちます。新人の方から経験を重ねた先生まで、子どもたちの育ちを深く理解し保育の質を高めたい方にぜひ読んでほしい一冊です。

どれも専門的な内容をやさしく解説しており、新しい視点で明日からの保育の質を高めたい方にぜひ読んでほしい本となっています。

まとめ ― 明日から実践できること

ここまで、「遊びを通した学び」とは何か、その基本的な意味から現場での悩み、実践の工夫、さらに理解を深めるための書籍活用についてお伝えしました。あらためてポイントを整理し、明日から実践できる行動指針をまとめてみましょう。

遊びと学びは切り離せない

まず大前提として、子どもたちにとって「遊び」と「学び」は別々のものではありません。砂場遊びの中で協力してトンネルを掘る姿、積み木を崩しては挑戦し直す姿、友達と役割を決めてごっこ遊びを楽しむ姿。どれもが「学びの芽」であり、成長のプロセスそのものです。
保育要領で「遊びを通した学び」が強調されるのは、遊びを通じて子どもの全人的な育ちが支えられるからです。

現場での悩みは自然なもの

保育士が「これは学びと言えるのだろうか」「どうやって保護者さんに説明すればいいのか」と悩むのは当然です。実際に記録やカリキュラムに落とし込む際には難しさが伴いますし、同僚との視点のズレに戸惑うこともあるでしょう。
けれども、それは「子どもの姿を真剣に見取ろうとしている証拠」です。悩むこと自体が、専門職としての成長につながっています。

実践の工夫 ― 小さな一歩から

遊びを通した学びを支えるために、まずは次の3つを意識してみてください。

  1. 観察する
     「ただ遊んでいる」ように見える場面にも、必ず学びの芽があります。倒れない工夫をしている、友達に声をかけている、根気よく挑戦している――そうした姿を丁寧に見取りましょう。

  2. 言葉を添える
     子どもの気づきや思いを引き出す声かけをすることで、学びが深まります。「どうしてそう思ったの?」「次はどうしたい?」という問いかけは、思考を育てる種になります。

  3. 共有する
     同僚や職員間で子どもの姿を話し合い、視点を揃えることで、園全体の保育の質が高まります。小さな発見を共有し合うことが、保育士自身の学びにもなります。

注意すべきこと

遊びを「活動の形」だけにしてしまったり、成果を急ぎすぎたりしないことも大切です。遊びは子どもが主体的に取り組むからこそ意味があります。保育士が「やらせすぎる」ことなく、子ども自身の探究心を尊重することを忘れないようにしましょう。

書籍を活用して自信を持つ

保育士としての専門性をさらに高めたい方は、関連書籍を活用してみてください。要領の解説や実践事例がまとまった本は、日常の迷いや不安を整理してくれます。
保護者さんへの説明の言葉が見つからないときや、職員間で共通理解を深めたいとき、本に立ち返ることで「自信を持って語れる根拠」が手に入ります。

日々の保育で試してみたい工夫

  • 子どもの遊びを「ただの遊び」ではなく「学びの芽」として見取る

  • 言葉かけや問いかけを工夫し、思考や感情の広がりを支える

  • 同僚と発見を共有し、園全体の視点をそろえる

  • 必要に応じて書籍を取り入れ、実践に裏づけを持つ

遊びの中にある学びを見取る力は、日々の積み重ねで育ちます。最初から完璧を目指す必要はありません。小さな気づきを大切にし、子どもたちと一緒に育ち続ける姿勢こそが、保育士としての専門性を支える力になります。

おわりに

「遊びを通した学び」とは何かを理解し、実際の現場で活かすことは簡単ではありません。けれども、その一歩を踏み出すことで、子どもたちの姿をより深く見取れるようになり、保育に自信を持てるようになります。

明日からはぜひ、子どもの遊びを「学び」として見つめ直してみてください。そして必要なときは、本や仲間の力を借りながら、一緒に育ちを支えていきましょう。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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