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【解説】「環境を通して行う教育」とは何か ― 保育環境づくりの視点

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教育・保育要領には「環境を通して行う教育」という言葉が繰り返し登場します。しかし現場で実際に「環境って何を指すの?」「どう整えれば子どもの主体性を育めるの?」と悩む保育教諭は少なくありません。

先生によっては「もっと環境を工夫して」と指導を受けると、玩具の数を増やすことや壁面装飾を豪華にすることが“環境づくり”だと思い込んでしまいがちです。けれども、教育・保育要領が示す「環境」とはもっと奥深い概念であり、子どもの学びを支える土台そのものだったりします。

この記事では、教育・保育要領における「環境を通して行う教育」の意味を整理し、保育室や園庭の具体的な環境構成の工夫や実践例を紹介します。今日から取り入れられる視点も盛り込みましたので、ぜひ日々の保育に活かしていただければと思います。

「環境を通して行う教育」とは?

教育・保育要領に示される環境の定義

教育・保育要領では「環境を通して行う教育」を、子どもを取り巻く空間・人・モノを通じて、子どもの主体的な活動を引き出すものと位置づけています。

つまり環境とは、単なる「場所」ではなく、

  • 保育室の配置や遊具の種類

  • 先生や友達との関わり方

  • 自然や地域社会とのつながり
    といった要素すべてを含む広い概念です。

環境=空間・人・モノの三要素

環境を考えるときに大切なのは、次の三つの視点です。

  1. 空間:保育室や園庭、園全体のレイアウト

  2. :保育者の関わり、友達同士の関係性

  3. モノ:玩具、教材、自然物、道具

この三要素が組み合わさることで、子どもの「やってみたい」という気持ちが引き出されます。

環境が子どもの主体性にどう影響するか

環境は子どもの選択を左右します。例えば、棚に絵本が並んでいなければ読書を選ぶことはできません。逆に、子どもの目線に届く高さに絵本を置けば、自ら手に取り、主体的に活動が広がります。
環境づくりは「子どもの意思決定を支える仕掛け」と言い換えることができるのです。

保育室の環境構成のポイント

子どもの見通しを持てる空間づくり

教育・保育要領は「子どもが安心して生活できる環境」を強調しています。コーナー保育の導入はその一例です。

  • 絵本コーナー

  • 積み木コーナー

  • ごっこ遊びコーナー

このように空間を分けることで、子どもは自分で遊びを選び、集中して取り組むことができます。

素材や玩具の選び方

子どもの発達に応じて、多様な遊びを引き出せる素材を用意することが大切です。プラスチック製の完成品玩具だけでなく、木片・布・空き箱などの「オープンエンド素材(用途が決まっていないもの)」を置くと、想像力を生かした遊びが広がります。

子どもが自分で選べる仕組み

環境構成の目的は「自分で選ぶ力」を育てることです。

  • 棚の高さを子どもの目線に合わせる

  • 道具をラベル付きのカゴに収納する

  • 片付けやすい配置にする
    こうした工夫は、子どもの主体性や生活習慣の自立を支えます。


ある園では、クレヨンを「先生が配る」方式から「自分で取りに行く」方式に変えました。その結果、子どもたちは「自分で準備する」ことに誇りを持ち、活動に前向きになりました。小さな環境の変化が大きな学びを生むことがあります。

園庭・戸外環境の工夫

自然との関わりを深める場

園庭には草花や虫、季節の移ろいがあります。人工的な遊具だけでなく、自然物に触れる機会を意識的に保障することが大切です。

  • 四季の草花を植える

  • 虫探しや観察の場を用意する

  • 落ち葉や小枝を自由に使えるようにする

自然体験は「環境の領域」に直結し、感性や探究心を育みます。

挑戦と安全のバランス

園庭での活動は、走る・登る・転ぶといった身体的チャレンジの宝庫です。保育者は危険を排除するのではなく、「リスクを予測し、子どもが学ぶ経験」に変える視点が求められます。

園庭を学びのフィールドにする視点

園庭は単なる「体を動かす場」ではなく、探究や協力の舞台にもなります。

  • 運動遊び → 健康の領域

  • 虫取り → 環境の領域

  • 畑での栽培 → 食育・生活習慣
    多様な領域が園庭で交わるのです。

環境を通した教育の実践例

砂場を活用した思考力・協同性の育ち

砂場は代表的な環境教材です。友達と協力して山やトンネルを作る中で、協同性や思考力が育まれます。

絵本コーナーが言葉の発達を促す

子どもの目線に置かれた絵本は、主体的に「読みたい」という気持ちを引き出します。読み聞かせだけでなく、自分でページをめくる経験も言葉の発達を支えます。

製作コーナーでの創造力の広がり

空き箱や布切れを自由に組み合わせる活動は、発想力や表現力を高めます。「正解のない遊び」が創造性を伸ばすのです。

園庭の畑から「食育」や「環境意識」へつなげる

野菜の栽培を通じて「食べ物がどこから来るか」を学びます。収穫して調理まで行えば、環境や健康との結びつきも体験できます。

現場でよくある悩みと解決のヒント

スペースが狭くて工夫できない

→ 棚の配置を変える、コーナーを小さく分けるなど、環境改善は小さな工夫から始められます。

玩具がマンネリ化する

→ 同じ玩具でも配置や組み合わせを変えるだけで子どもの興味は再び高まります。

安全管理との両立が難しい

→ リスクをゼロにするのではなく、「ここで転ぶ経験は成長につながる」と考え、危険の予測とルールづくりを工夫することが大切です。

環境づくりに悩むのは自然なこと

「もっと良い環境にしたい」と思っても、スペースや予算の制約の中で悩むのは当然のことです。私自身も新人の頃、「十分な環境を整えられていない」と自信をなくしたことがあります。しかし先輩に「完璧を目指すのではなく、子どもの姿に合わせて少しずつ変えればいい」と言われて気持ちが楽になりました。

今日からできる工夫

  1. 園内を子どもの目線で歩いてみる
    → 大人では気づかない不便や魅力が見えてきます。

  2. 環境の一角を1か所だけ見直す
    → まずは絵本棚や製作コーナーなど、取り組みやすい場所から。

  3. 子どもと一緒に環境をつくる
    → 「どんな遊び場がいい?」と子どもに相談しながら改善することで、主体性をさらに伸ばせます。

まとめ

「環境を通して行う教育」とは、空間・人・モノを通じて子どもの主体性を引き出すこと。保育室や園庭の環境を工夫するだけで、子どもの探究心や協同性は大きく育ちます。

大切なのは、立派な設備を整えることではなく、子どもの姿に合わせて小さな改善を重ねることです。

今日からまず、園内の一角を子どもの目線で見直してみませんか? その小さな一歩が、環境を通した教育を実現する大きな力になります。

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  • この記事を書いた人

かつおう

田舎の自然の中で、9歳の娘と6歳の息子をのびのびと育てるパパ。 IT × 脳科学 × 心理学を活かし、職員と子どもたちが共に成長できる園運営に取り組んでいます。 変化の速い“答えのない時代”において、職員と子どもたちが自ら考え、失敗を恐れず挑戦しながら答えを探究している、こども園の園長です。

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