保育

【解説】乳児保育における教育・保育要領のポイント ― 応答的な関わりを中心に

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乳児保育においては、食事・排泄・睡眠・遊びといった生活そのものが「学び」の基盤になります。教育・保育要領でも「乳児保育は、応答的な関わりを通して育ちを支えることが重要」と繰り返し示されています。

しかし、実際の現場ではこんな悩みを耳にします。

  • 「毎日の生活援助に追われ、要領をどう生かせばいいのか分からない」

  • 「応答的な関わりって、具体的に何をすればよいの?」

  • 「発達差の大きい0・1・2歳児にどう対応すればいいのか迷う」

オムツ替えや授乳で精一杯で「これが教育につながっているのだろうか」と不安に思うことがあるかもしれません。けれども、要領を丁寧に読み解き、日々の生活行為を学びとして捉え直すことで、乳児保育がぐっと豊かに感じられるようになります。

この記事では、教育・保育要領が示す乳児保育のポイントを整理し、応答的な関わりの実践や生活行為を通じた支援方法を具体的に紹介します。

乳児保育における教育・保育要領の基本的な考え方

乳児期は生活そのものが学びの基盤

教育・保育要領は「乳児期の教育は、生活や遊びを通して行う」と明記しています。つまり、授乳・睡眠・排泄・遊びの一つひとつが「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」という5領域に結びついているのです。

例えば、食事の時間は「健康」を育むだけでなく、「言葉のやりとり」「人間関係(先生や友達と共に食べる喜び)」にもつながります。

「応答的な関わり」とは何か

要領で強調される「応答的な関わり」とは、子どもの発信に対して大人が敏感に気づき、受け止め、適切に返す関わり方を指します。言葉にならない泣き声や仕草にも「あなたを理解しているよ」と伝えることが、安心感と信頼関係を育て、発達の基盤になります。

保育所保育指針との共通点と違い

保育所保育指針と大きな方向性は同じですが、認定こども園教育・保育要領では「教育と保育の一体性」がより強調されています。乳児期から「養護と教育を一体的に展開する」ことが求められているのです。

0・1・2歳児の発達の特徴と要領の読み取り方

0歳児 ― 安心できる関係と生活リズムの安定

0歳児にとっては「信頼できる大人に守られている」という安心感が何より重要です。授乳や抱っこを通じて「安心できる環境」が保障されることで、探索意欲や人との関わりが芽生えていきます。

事例
泣いている0歳児にすぐ抱き上げるのではなく、まず目を合わせて「どうしたの?」と声をかけたところ、泣き止んで手を伸ばしてきました。このやりとりが「伝えれば応えてくれる」という信頼の積み重ねになります。

1歳児 ― 自我の芽生えと探索活動

1歳児は「自分でやりたい」という気持ちが強くなり、同時にイヤイヤ期も始まります。要領では「探索活動を十分に行い、自我を育むこと」が大切とされています。

事例
スプーンを持ちたがる子に「自分で食べてみる?」と促すと、最初はこぼしましたが、何度も挑戦するうちに上手に口へ運べるようになりました。この繰り返しが自立心や挑戦する力を育てます。

2歳児 ― ことばの発達と友達関係の始まり

2歳児は語彙が増え、簡単な会話ができるようになります。また、友達への関心が高まり、トラブルも増えてきます。要領では「言葉による伝え合いの芽生え」と「協同性の基盤づくり」が示されています。

事例
おもちゃを取り合って泣いていた二人に、「どうしたの?」と声をかけると、一人が「これ、貸して」と言えました。言葉を介して関係を調整する経験は、人間関係を築く大きな一歩です。

日常の生活行為を通した支援の実践例

食事 ― 共に味わうことで「健康」と「言葉」を育む

  • 「おいしいね」「たくさん食べられたね」と言葉を添える

  • 食事を共に楽しむ雰囲気をつくることで、食欲や安心感が増す

ポイント
食事は単なる栄養補給ではなく、人とのつながりや言葉の育ちを支える時間です。

排泄 ― 自立の芽生えを尊重する関わり方

  • 「おしっこ出たね」「トイレ行こうか」と言葉をかける

  • 成功体験を一緒に喜ぶ

ポイント
失敗しても叱らず「次はできるね」と受け止めることで、自立心が無理なく育ちます。

睡眠 ― 安心できる環境と個別リズムへの配慮

  • 静かな雰囲気、落ち着ける空間をつくる

  • 個々の眠気のサインを見逃さず、柔軟に対応する

ポイント
睡眠の質が整うと、日中の探索活動にも集中できるようになります。

遊び ― 探索や模倣を通じた学びの広がり

  • 積み木を重ねる → 思考力・協同性

  • ごっこ遊びをする → 言葉・社会性

  • 運動遊び → 健康・挑戦心

ポイント
遊びはすべての領域につながる学びの宝庫です。

応答的な関わりをどう実践するか

子どもの発信に気づき、受け止め、返す

乳児の発信は泣き声や表情、しぐさなど言葉にならない形が多いです。その小さなサインに応答することが育ちの基盤です。

言葉にならないサインを読み取る力

「眠そうに目をこすっている」「不安げに先生を探している」など、行動から気持ちを推測し、声を返すことが応答的な関わりです。

一対一の関わりと集団の中でのバランス

一人ひとりとの関係を大切にしながらも、集団生活の中で安心できる雰囲気をつくることが求められます。

現場でよくある悩みと解決のヒント

「忙しくて一人ひとりに丁寧に関われない」

→ 応答的な関わりは時間の長さではなく「質」。短い一言でも子どもの発信に応えることが大切です。

「発達差が大きくて対応に迷う」

→ 要領は「個々の発達や特性に応じて」支援することを前提にしています。平均に合わせるのではなく、子どものペースを尊重する姿勢が大切です。

「保護者との認識のズレ」

→ 「オムツは早く外すべき」などの期待と園の方針が異なる場合、教育・保育要領を根拠に説明すると理解が得られやすくなります。

乳児保育の難しさとやりがい

  • 「生活援助で手一杯になり、保育の意味を見失いそうになる」

  • 「子どもの小さな変化に気づけたとき、やりがいを感じる」

こうした思いは、多くの保育教諭が経験しています。完璧を目指さなくても、日々の小さな応答の積み重ねが子どもの育ちを支えているのです。

今日からできる工夫

  1. 子どもの行動に必ず「声を返す」
    → たとえ短い一言でも「気づいているよ」と伝わります。

  2. 日誌や連絡帳に「要領の言葉」で一言記録する
    → 「探索活動」「自立心」など、要領の表現を意識的に使う習慣づけ。

  3. 園内で乳児保育の事例を共有する時間をつくる
    → 職員全体で応答的な関わりを学び合う。

まとめ

乳児保育における教育・保育要領のポイントは、生活そのものを学びと捉え、応答的な関わりを通じて子どもの育ちを支えることです。0・1・2歳児は小さなサインや日々の生活行為の積み重ねが成長につながる時期。完璧な援助を目指すよりも、一人ひとりの発信に丁寧に応答することが、要領に沿った実践そのものです。

今日からまず、「子どもの発信に必ず声を返す」小さな一歩を意識してみると、それが乳児保育の質を高める大きな第一歩になります。

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  • この記事を書いた人

かつおう

田舎の自然の中で、9歳の娘と6歳の息子をのびのびと育てるパパ。 IT × 脳科学 × 心理学を活かし、職員と子どもたちが共に成長できる園運営に取り組んでいます。 変化の速い“答えのない時代”において、職員と子どもたちが自ら考え、失敗を恐れず挑戦しながら答えを探究している、こども園の園長です。

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