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【解説】指導計画と保育実践のズレを防ぐ方法 ― 要領に基づく見直し方と改善事例を紹介

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保育の現場で指導計画を立てても、実際に子どもと過ごす中で「予定通りにいかない」「思っていた姿と違う」という経験をする先生は多いのではないでしょうか。指導計画と保育実践の間に生まれるズレは、どの園でも自然に起こることです。

ただし、このズレを「失敗」と捉えるのではなく、子どもの姿を見取って計画を見直すチャンス として活かすことが大切です。教育・保育要領に基づいた振り返りを行えば、計画と実践をすり合わせながら、子どもの育ちに合った保育を進められます。

この記事では、指導計画と保育実践のズレが起こる理由、要領に基づいた見直しの方法、そして現場での改善事例を紹介します。先生自身の悩みを共感しながら、一歩前進するためのヒントを得られる内容となっています。

指導計画と保育実践のズレとは

指導計画=「保育の設計図」

指導計画とは、年間・月間・週案といった形で「子どもの育ちをどう支えるか」を見通すために立てる計画です。これは園全体の方針をもとに、子どもの発達や興味を考慮して作成されます。

保育実践=「子どもの今の姿」

一方で保育実践とは、日々の生活や遊びの中で子どもが実際に見せる姿です。計画では「工作を通じて表現を育む」とねらっていても、子どもがその日夢中になっているのは鬼ごっこかもしれません。

ズレが生まれるのは自然なこと

「計画と違ったから失敗」と思う必要はありません。子どもは大人が思い描いた通りに成長するわけではなく、環境や体調、友だちとの関係で変化するものです。大切なのは、そのズレをどう受け止め、保育の質につなげるかです。

ズレが生まれる具体的な場面(共感ポイント)

子どもが予定した活動より外遊びに夢中になる

計画では「室内で製作活動」だったのに、子どもたちは園庭の水たまりに夢中。先生は「今日は計画通りに進まない」と焦えるかもしれません。しかし、外遊びの中にも「探究心」「協同性」が育まれているのです。

発達段階の違い

計画では「ひらがなの興味を育てる」活動を準備したけれど、鉛筆を持つ手の力がまだ弱く、子どもは楽しめない。このように子どもの発達に差があるのは当然で、計画を柔軟に見直す必要があります。

集団の雰囲気に左右される

「歌をみんなで歌う」予定でも、その日クラスでトラブルがあれば集中できないこともあります。計画通りに進まないことで悩むのは先生共通の経験であり、「わたしだけではない」と思えると少し気持ちが楽になります。

ズレを防ぐための基本的な視点

子どもの興味や発達を尊重する

教育・保育要領でも「子どもの主体性を尊重する」ことが示されています。大切なのは、先生が準備した計画を押し通すことではなく、子どもの姿に合わせて柔軟に変更する力 です。

「できた・できない」ではなく「姿」を見取る

「跳び箱を跳べたかどうか」ではなく、「挑戦して何度も繰り返していた」「友だちに応援されていた」といった姿を捉えることで、子どもの成長をより深く理解できます。

計画を“道しるべ”として捉える

計画は「縛り」ではなく「方向性」です。ズレが生まれたときに振り返る材料として位置づけると、計画と実践の関係がより健全になります。

要領に基づく見直し方

「ねらい」と「内容」を軸に振り返る

要領には各年齢ごとに「ねらい」と「内容」が示されています。計画を見直すときは、この「ねらい」に立ち返り、実践が子どもの育ちにつながっているかを確認します。

日々の保育記録やエピソードを活用する

「今日、〇〇ちゃんが友だちにブロックを貸していた」など、短い記録を積み重ねることで、計画と実践を見直す根拠が生まれます。

職員同士の話し合い

一人で悩むのではなく、園全体で振り返りを行うことが大切です。違うクラスの先生が見た視点が、新しい気づきを与えてくれることもあります。

保護者さんとの情報共有

家庭での姿も含めて子どもを理解することが、計画を見直すうえで役立ちます。

改善サイクルの実践方法

PDCAサイクルを保育に応用する

  • Plan(計画):子どもの姿をもとに計画を立てる

  • Do(実践):日々の保育で実践する

  • Check(振り返り):子どもの姿をもとに計画と実践を照らし合わせる

  • Act(改善):次の計画に活かす

この流れを習慣化すると、計画と実践のズレが少しずつ減っていきます。

定期的な振り返りミーティング

月ごとや学期ごとに「計画と実践のズレ」をテーマにした話し合いを行うと、園全体で改善の視点を共有できます。

計画の修正を恐れない

「計画を変更すると手抜きに思われるのでは」と感じる先生もいますが、むしろ柔軟な修正こそが子どもに寄り添う保育の証です。

改善事例の紹介

戸外活動を増やした事例

計画では室内活動を中心にしていましたが、子どもたちが自然に興味を持っていることに気づき、戸外活動を増やしました。その結果、集中力や表現力が高まりました。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を意識した事例

要領に示される「10の姿」の一つ「挑戦する子ども」を意識し、発表の機会を増やした園もあります。「できる子」だけでなく、挑戦した子を認めることで、クラス全体に挑戦を楽しむ雰囲気が広がりました。

保護者さんの声を取り入れた事例

「家庭でなかなか食事の習慣がつかない」という保護者さんの声を受け、園でも食事指導を見直しました。園と家庭の協力で子どもの生活習慣が安定した成功例です。

現場で取り入れやすい工夫

記録をシンプルにする

長文の記録にこだわる必要はありません。「今日できたこと」「子どもの言葉」を短くメモするだけでも十分です。

週単位・月単位の振り返り

毎日すべてを振り返るのは難しいので、定期的にまとめて振り返る習慣をつけると続けやすいです。

園内研修で事例を共有

先生同士が自分のクラスの「ズレと改善」を共有することで、学び合いが生まれ、園全体の力が高まります。

まとめ

  • 指導計画と保育実践のズレは自然なものであり、先生が悩むのは当然のこと。

  • 教育・保育要領を軸に見直すことで、ズレを子どもの育ちに活かすことができる。

  • 記録や振り返り、職員間の共有を通じて改善サイクルを回すことが重要。

  • ズレを恐れるのではなく、子どもの姿を理解するチャンスとして前向きに取り組むことが、保育の質の向上につながる。

次回の保育で「計画と違った子どもの姿」を一つメモに残してみませんか? その小さな一歩が、計画と実践をすり合わせる力となり、子どもの育ちをより丁寧に支えることにつながるといいですね。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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