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【解説】『自律する子の育て方』に学ぶ ― 自ら考え行動する力を育てる保育実践

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「声をかければ動くけれど、自分からはなかなか動こうとしない」「指示しないと片付けが進まない」「園児がすぐに『先生どうしたらいい?』と聞きに来る」。こうした場面に、心当たりはありませんか。

忙しい日々の中で、つい「早くしてね」「こうしようね」と先回りしてしまうことは、ごく自然なことです。ただ、その積み重ねが、子どもたちの「自分で考えて動いてみたい」という芽を小さくしてしまうこともあります。「自律してほしい」と願いながら、「言うことをよく聞く子」を目指す関わりになっていないか、不安になる保育士も多いのではないでしょうか。

幼児教育の知見をもとに考えると、「自律」とは、大人から離れて何でも一人でできることではありません。自分の気持ちや状態に気づき、必要なときには助けを求めながら、自分なりに選んで行動しようとする力です。そしてその土台は、乳幼児期の人との関わりや、遊び・生活の経験の中で少しずつ育っていきます。

この記事では、書籍『自律する子の育て方』のエッセンスを手がかりにしながら、園生活の中で自律の芽を見取り、育ちを支えるための視点をまとめていきます。読んでいるうちに、「明日、この声かけを試してみよう」「同僚とこのページを一緒に読みたい」と感じてもらえるといいなと思います。

『自律する子の育て方』が保育現場で注目される理由

今、なぜ「自律する子」を育てることが大切なのか

今の社会は、変化のスピードがとても早くなっています。将来、子どもたちが出会うであろう仕事や暮らしのあり方は、大人の私たちにも予想がつきません。そのような時代に必要とされているのは、「決められた答えを早く出す力」だけではなく、「自分で考え、試し、学び続ける力」です。

幼児教育の分野でも、「自ら考え行動する力」「主体性」「自己肯定感」といったキーワードがよく語られるようになりました。幼稚園教育要領や保育所保育指針でも、子どもたちが自発的・主体的に関わる遊びや生活の大切さが強調されています。つまり、自律の土台づくりは、小学校に入ってから急に始まるものではなく、日々の保育の中で丁寧に育てていくものだと言えます。

一方で、現場では「安全」「時間」「集団での生活」といった制約もあります。「自分で考えてほしいけれど、危なくて見ていられない」「一人ひとりのペースに合わせたいけれど、スケジュールが決まっている」といったジレンマに、保育士が悩むことも少なくありません。こうした中で、『自律する子の育て方』のように、脳科学や学校現場の知見をもとにした実践書に注目が集まっています。

書籍『自律する子の育て方』の概要とキーワード

『自律する子の育て方』は、子どもが自分で考え行動する力をどう育てるかを、心理学や脳科学、教育現場の実践をもとに解説している本です。対象は主に小学生以降ですが、その根っこにある考え方は、園児や子どもたちの育ちにも十分応用できます。

キーワードの一つが「心理的安全性」です。これは、失敗しても責められない、間違えても受けとめてもらえる、と子どもが感じられる安心感のことです。心理的安全性があるからこそ、「やってみよう」「わからないから聞いてみよう」という自律の一歩が生まれます。

もう一つのキーワードが「メタ認知」です。少し難しそうな言葉ですが、簡単に言えば「自分の考えや気持ちを、一歩引いて見つめる力」です。「いまドキドキしているな」「さっきは怒りすぎたかもしれない」と自分の状態を言葉にできることは、自律する子への大事なステップになります。園生活でも、子どもたちのつぶやきや表情から、こうした姿を見取ることができます。

保育士が抱えがちな「自律」と「従順さ」のすれ違い

現場の声を聞くと、「よく話を聞いて、静かに座っていられる子」「指示どおりに動ける子」が“いい子”として評価されやすいという実情があります。もちろん、集団生活の中で基本的な約束を守ることは大切です。しかし、「大人の指示に従うこと」が続きすぎると、「どうしたい?」「どう思う?」と聞かれたときに、戸惑ってしまう子も出てきます。

『自律する子の育て方』の視点から見ると、「自律」と「従順さ」は同じではありません。むしろ、「大人に合わせること」を優先しすぎると、自分の気持ちや考えを押し込めるくせがついてしまうこともあります。園児や子どもたちの姿を見取るとき、「静かにしている=理解している」「反抗しない=自律している」と短絡的に考えないことが大切になります。

『自律する子の育て方』に学ぶ「自ら考え行動する力」の土台

園生活における「心理的安全性」とは何か

『自律する子の育て方』の中で大切にされているのが、「心理的安全性」という考え方です。少しむずかしく聞こえますが、園生活に置きかえると、とても身近なものです。

心理的安全性とは、「失敗しても怒鳴られない」「間違えても笑われない」「わからないと言っても大丈夫」と子どもたちが感じられる安心感のことです。この安心感があると、園児は「ちょっとやってみようかな」「聞いてもいいかな」と、自分から一歩踏み出しやすくなります。

逆に、「怒られないようにしなきゃ」「間違えたら恥ずかしい」という気持ちが強くなると、子どもたちは「言われた通りにしておこう」「目立たないようにしておこう」と振る舞いやすくなります。それでは、自ら考え行動する力は育ちにくくなってしまいます。

たとえば、製作の時間にのりをたくさん使ってしまった園児に対して、「なんでそんなに使うの!」と強い口調で言うか、「たくさん使うとどうなるかな? 一緒に見てみようか」と一度立ち止まって関わるかで、その後の姿は変わってきます。幼児教育の知見をもとに考えると、前者は「失敗したら叱られる」という学習につながり、後者は「失敗しても一緒に考えてくれる」という安心感につながります。

心理的安全性は、特別なプログラムではなく、日々の声かけや表情、受けとめ方の積み重ねで育っていきます。まずこの安心感づくりから見直してみることが土台になります。

「メタ認知」を園児の姿からどう見取るか

『自律する子の育て方』では、「メタ認知」という言葉もキーワードとして使われています。これは、子どもたち自身が「いまの自分」を客観的にふり返る力のことです。もっとやさしく言うと、「自分の気持ちや行動を、ちょっと外から見るように考えられる力」です。

園生活の中でも、その芽生えはあちこちに見られます。

「さっきは怒ってたけど、いまは仲直りしたよ」
「ちょっとドキドキするから、先生一緒に来て」
「さっき急いだから、こぼしちゃったんだと思う」

こうしたつぶやきは、まさにメタ認知の姿を見取るヒントです。保育士が「そう感じていたんだね」「自分のことがよくわかっているね」と言葉にして返すことで、子どもたちは「自分の気持ちを言っていいんだ」「考えてみるって大事なんだ」と感じていきます。

たとえば、ケンカのあとに「どうしてそんなことしたの?」と責めるように問いただすのではなく、「あのとき、どんな気持ちだった?」と気持ちに寄りそって聞いてみると、子どもは少しずつ自分の行動と気持ちをふり返るようになります。これが、自ら考え行動する力の土台になります。

叱る・ほめるから「対話」と「問いかけ」へ

日々の保育では、「叱る」「ほめる」という関わり方がよく使われます。もちろん、それ自体が悪いわけではありません。ただ、『自律する子の育て方』の視点から見ると、「叱る」と「ほめる」だけでは、自律までは届きにくいことがあると言われています。

「なんでできないの?」と叱られると、子どもたちは「怒られないようにすること」を基準に行動しやすくなります。また、「えらいね」「すごいね」とほめられることだけを求めるようになると、「ほめられないことはやりたくない」「失敗しそうなことにはチャレンジしない」という気持ちが生まれることもあります。

そこで本書が大切にしているのが、「対話」と「問いかけ」です。

「ここ、どうしたらうまくいきそうかな?」
「次は、どんなふうにやってみたい?」
「困ったとき、どんな方法があるかな?」

このような問いかけは、子どもたちの考える力を引き出し、自分で選んだ行動として実感できるようにするためのものです。幼児教育の知見をもとにしても、問いかけを通して思考を深める関わりは、主体性や自律の育ちを支える大切な方法だとされています。

「自律する子」を育てる保育者のかかわり方

『自律する子の育て方』に学ぶと、保育者の役割は「すべてを教える人」から、「子どもが考えるプロセスを支える人」へと広がっていきます。

園児や子どもたちに任せすぎてしまうと、不安になったり、混乱したりすることもあります。一方で、大人がすべて決めてしまうと、自分で考える機会が減ってしまいます。この間を行き来しながら、「ここは見守る」「ここは一緒に考える」「ここは大人が手を差し伸べる」と調整していくことが、保育士の専門性でもあります。

たとえば、片付けがなかなか進まないとき。「早く片付けて!」と指示する代わりに、「どこから片付けたらやりやすいかな?」「あとどれくらいで終わりそう?」と問いかけてみると、子どもたちは自分で見通しを持ち始めます。時間は少しかかるかもしれませんが、「自分で考えて動けた」という経験は、自律の大事な一歩になります。

このように、日々の小さな場面の積み重ねの中で具体的な形をもっていきます。次では、園での生活や遊びの中で、どのように自律の力を引き出していくかを、もう少し詳しく見ていきます。

保育実践で生かす『自律する子の育て方』のアイデア

生活の場面で主体性を引き出す小さな工夫

「自ら考え行動する力」は、特別な時間だけで育つものではなく、着替え・排泄・食事・片付けなど、日常の生活の中で少しずつ育っていきます。

たとえば着替えの場面。
「早くして」「まだ終わってないの?」という声かけが続くと、園児は「早くしなきゃ」と言われたから動く、という感覚になりがちです。そこで、

「今日はどこから着替えようか?」
「次に着る服を、先に決めてみる?」

といった問いかけに変えてみると、「順番を自分で考える」「見通しを立てる」という小さな自律の芽を支えることができます。うまくいかなかったときも、「どこで困ったかな?」「次はどうしたらやりやすそう?」と一緒にふり返ることで、子どもの姿を見取る機会になります。

食事や片付けでも同じです。
「全部食べなさい」「早く片付けて」とだけ伝えるのではなく、

「どれくらいなら食べられそう?」
「自分の場所の片付け、どこまでできた?」

と問いかけることで、「自分の状態を知る」「自分の行動を調整する」力の育ちを支えることができます。

遊びの中で「選ぶ・決める・振り返る」を意識して組み込む

遊びの時間は、自律の力を育てる宝庫です。『自律する子の育て方』の視点を取り入れるなら、「選ぶ・決める・振り返る」という流れを意識してみるとよいでしょう。

コーナー保育の場面では、
「今日はどこで遊びたい?」と選ばせるだけでなく、

「どうしてそこを選んだの?」
「さっきの遊びと、どっちが楽しかった?」

と聞いてみることで、園児自身が自分の気持ちや選択に気づくきっかけになります。これもメタ認知の芽生えを見取る大切な場面です。

遊び終わりには、短い時間でも、振り返りを取り入れてみることができます。

「どんなところが面白かった?」
「むずかしかったのはどこだった?」
「今度やるとき、どうしてみたい?」

こうした問いかけを通して、子どもたちは「やりっぱなし」ではなく、自分の経験を言葉にして整理することを学んでいきます。幼児期にこうした経験を重ねることが、「自ら考え行動する力を育てる保育実践」につながっていきます。

ルールづくりを「子どもと一緒に考える」時間にする

園生活には、危険を防いだり、みんなが安心して過ごしたりするためのルールが必要です。ただし、そのルールを大人が一方的に決めて伝えるだけだと、「守らされている」という感覚が強くなりがちです。

『自律する子の育て方』の考え方を生かすなら、ルールづくりそのものを、子どもたちと一緒に考える時間に変えてみることができます。

たとえば、おもちゃの取り合いが続いたクラスであれば、
「どうしたら、みんなが楽しく遊べると思う?」
「順番を待つとき、どんな工夫ができるかな?」

と問いかけながら、子どもたちの言葉を拾い、簡単な約束としてまとめていきます。壁に貼るルール表も、「先生が書いたもの」ではなく、「みんなで決めたこと」として扱うと、自分たちのものとして意識しやすくなります。

トラブルが起きたときも、「だめでしょ!」で終わらせるのではなく、
「次からどうしたい?」
「同じことが起きたら、何ができるかな?」

と一緒に考えることで、自律の視点から子どもの姿を見取ることができます。

行事や保護者さんとのかかわりに生かす視点

運動会や生活発表会、作品展といった行事でも、『自律する子の育て方』のエッセンスは活かせます。たとえば、演目や役を決めるときに、子どもたちの意見を取り入れる場面を設けることができます。

「どんなことをやってみたい?」
「この役をやってみたい人いる?」

と問いかけ、「やりたい」「やってみたい」という気持ちを大切にしながら決めていくことで、主体的な参加を促すことができます。すべてを希望どおりにすることは難しくても、「一度は気持ちを聞いてもらえた」という経験は、子どもの育ちを支える大切な要素になります。

また、保護者さんとのコミュニケーションでも、「自律する子」をどうイメージしているかを共有しておくことが大切です。「言うことをよく聞く子」だけでなく、「自分の気持ちを伝えられる子」「困ったときに相談できる子」も、自律する子どもの姿であることを、丁寧に説明していく必要があります。

『自律する子の育て方』を取り入れるときの注意点とデメリット

「自律=任せっぱなし」になっていないか

『自律する子の育て方』という言葉だけを聞くと、「子どもに任せることが大事」というイメージだけが一人歩きしてしまうことがあります。しかし、幼児教育の知見をもとに考えると、自律は決して「放任」と同じではありません。

子どもたちが自分で考えようとするとき、後ろでそっと見守る大人の存在が欠かせません。困っているときには、そばに寄って一緒に考えてくれる人が必要です。任せっぱなしになっていないか、職員や同僚同士で確認し合うことも大切です。

「いつも自分で決めて」に疲れてしまう子もいる

自律の大切さを意識しすぎると、つい何でも「自分で決めてね」と投げかけてしまう場合もあります。しかし、中には、選択肢が多いと不安になる子、気持ちが揺れているときには決めること自体が負担になる子もいます。

その日の体調や感情の状態を見取りながら、
「今日は一緒に決めようか」
「ここだけは先生が決めておくね」

と、安心できる枠を用意することも、自律の育ちを支える大事な配慮です。すべてを「自分で」にしないことも、保育士の大切な役割です。

職員間の温度差や価値観の違いへの配慮

園の中には、さまざまな経験年数や価値観をもつ職員がいます。「もっと子どもの主体性を大事にしたい」と考える保育士もいれば、「まずはきちんとできることが大事」と感じる同僚もいるかもしれません。

こうした違いがあるのは自然なことで、「誰かが正しく、誰かが間違っている」というわけではありません。だからこそ、『自律する子の育て方』のような共通の書籍を手がかりにしながら、

「この本はこう言っているけれど、うちの園ではどう考える?」
「自分のクラスでは、こんな姿が見えたよ」

と対話する時間を持つことが大切です。価値観の違いを責め合うのではなく、「園児の育ちを支えるために、どんな関わりがよさそうか」を一緒に探っていく姿勢が、園全体の土台をつくっていきます。

保護者さんとのギャップを丁寧に埋めていく

保護者さんの中には、「しっかり言ってもらわないと困る」「もっと厳しくしてほしい」と感じる方もいます。その背景には、子どもの将来を思う不安や、「自律」と「わがまま」の区別がつきにくいもどかしさがあることも少なくありません。

「甘やかしているのではなく、自分で考える力を育てる関わり方を大事にしていること」
「叱らないのではなく、対話や問いかけを通して学びを深めていること」

を具体例とともに伝えていくことが、園と家庭が同じ方向を向くための一歩になります。ここでも、書籍の考え方や言葉が、説明の助けになる場面が多くあります。

次では、こうした内容を踏まえながら、『自律する子の育て方』という本を保育の学びにどうつなげていくか、読み方や活用の仕方を整理していきます。

『自律する子の育て方』を保育の学びに活かす読み方・使い方

まず押さえておきたい章とキーワード

『自律する子の育て方』を手に取ったとき、最初から最後まで一気に読み切ろうとすると、忙しい保育士にとっては負担になることもあります。そこでおすすめなのは、「いまの自分の悩みに近い章から読む」というスタイルです。

たとえば、クラスの雰囲気づくりに悩んでいるなら「心理的安全性」に関する章から。園児や子どもたちのふり返りや話し合いを深めたいなら「メタ認知」に関する章から。幼児教育の知見をもとに、自分のクラスの様子と重ねながら読むと、行間のメッセージがすっと入ってきやすくなります。

気になった言葉には付箋を貼ったり、メモを残したりしておくと、あとから同僚との対話にも生かせます。 自ら考え行動する力を育てる保育実践というテーマで読み進めることで、単なる一般書ではなく、現場で役立つ一冊として位置づけられていきます。

園内研修や話し合いで共有する

書籍の内容を保育の学びに深くつなげるなら、一人で読むだけでなく、園内研修や職員会議で共有していくことも効果的です。たとえば、ある章の一部を抜き出して読み合わせ、そのあとに次のような問いを投げかけてみます。

「自分のクラスでは、こんな場面があるか?」
「うちの園の園児の姿と比べると、どんな共通点があるか?」

こうした対話を通して、職員それぞれが感じていることを持ち寄ると、「自律する子」のイメージが少しずつ共有されていきます。新人の保育士にとっても、抽象的な理論ではなく、具体的なエピソードと結びついた学びとして理解しやすくなります。

気になったときにすぐ手に取れるよう、手元においておくのも良い方法です。園として一冊備えておき、職員室や会議で共有しながら読むことで、「自ら考え行動する力を育てる保育実践」の共通言語をつくっていくことができます。

保育士からよくある質問とその答え

「園児にはまだ早いのでは?」という声も聞かれますが、自律の土台は、幼児期から少しずつ育ちます。難しいことを教え込むのではなく、「自分の気持ちを言葉にしてみる」「どうしたいかを一緒に考える」といった関わりの中に、その芽生えを見取ることができます。

また、「忙しくて新しい実践を取り入れる余裕がない」という悩みもよく聞かれます。その場合は、全部を変えようとせず、まず一つだけ「声かけ」を変えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。すでに行っている保育の中に、『自律する子の育て方』の視点を少しだけ足していくイメージです。

保護者さんへの紹介について迷う保育士もいるかもしれません。そのときは、「宿題やしつけをゆるくする本」ではなく、「子どもの自律を長い目で支える本」であることを伝えながら、気になる方にそっと紹介していくとよいでしょう。

まとめ:日々の保育で試してみたい工夫

これまで見てきたように、『自律する子の育て方』から学べるポイントは、園児や子どもたちの育ちを支える日々の保育と深くつながっています。最後に、明日から取り入れやすい「日々の保育で試してみたい工夫」を整理しておきます。

一つ目は、子どもへの声かけを少しだけ変えてみることです。「早くして」「ダメでしょ」だけでなく、「どうしたらうまくいきそう?」「次はどうしてみたい?」という問いかけを意識してみると、子どもたちの考える姿を見取る機会が増えていきます。

二つ目は、心理的安全性を意識しながら、クラスの雰囲気をゆっくり整えていくことです。失敗や戸惑いの場面こそ、「大丈夫だよ」「一緒に考えよう」というメッセージを伝えるチャンスです。安心できる場があるからこそ、子どもたちは自分で考え、行動してみようとします。

三つ目は、同僚や職員と一緒に学ぶ時間をほんの少しでも持つことです。『自律する子の育て方』の一節を共有し、「うちのクラスではどうかな?」と話し合うだけでも、園全体で子どもの育ちを支える視点が揃いやすくなります。

自ら考え行動する力を育てる保育実践は、一気に完成させるものではありません。小さな工夫を一つひとつ積み重ねていくことで、園児や子どもたちの自律の芽が、日々の生活の中で確かに育っていきます。その歩みを支える一冊として、『自律する子の育て方』をそばに置きながら、自分らしい保育を育てていきませんか。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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