保育の仕事は園児や保護者さんへの関わりが中心ですが、その基盤となるのは職員同士の人間関係です。
「意見が合わなくてモヤモヤする」「会議で否定されて意見を出しづらい」など、保育現場での人間関係の悩みは尽きません。そんな時にヒントとなるのが、アドラー心理学をわかりやすく解説した書籍『嫌われる勇気』です。
この本は「承認欲求から自由になること」「課題の分離」「勇気づけ」を通して、人間関係をラクにする考え方を提示しています。園内のコミュニケーション改善にも役立つ要素が多く、働きやすい職場づくりに直結します。
本記事では『嫌われる勇気』の内容を保育現場に応用し、職員同士が協力しやすく、安心して働ける職場をつくる方法を事例とともに紹介します。
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職員同士の人間関係が大切な理由
園児の育ちを支える基盤になる
職員の雰囲気は子どもたちに伝わります。緊張感やぎくしゃくした空気は園児の安心感を奪い、逆に温かい雰囲気は「育ちを支える」環境となります。
保育の質が安定する
人間関係に悩みすぎると、目の前の園児を見取る余裕がなくなります。逆に信頼関係があれば「困ったときに助けてもらえる」という安心感から、挑戦的な保育実践もしやすくなります。
保護者さんからの信頼につながる
職員同士の関係が良い園は雰囲気が明るく、保護者さんから「安心して子どもを預けられる」と感じてもらいやすいです。
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保育現場で起こりやすい人間関係の課題
新人とベテランの価値観の違い
新人は「もっとこうしたら楽しい」とアイデアを出し、ベテランは「安全や効率を考えて従来のやり方を守りたい」と考えることがあります。お互いを否定すると摩擦が生まれますが、尊重し合えば園の強みになります。
会議や研修での意見の食い違い
行事準備や保育方針をめぐって意見がぶつかるのは自然なこと。しかし「それは違う」と即否定すると、意見を出すこと自体が怖くなり、園全体の発展が止まってしまいます。
保護者さん対応をめぐる考え方のズレ
「できるだけ細かく説明したい」職員と「必要な部分だけで良い」と思う職員。方針が異なることも多く、そこに否定的な態度が入ると関係悪化につながります。
『嫌われる勇気』に学ぶ関わり方のヒント
承認欲求から自由になる
「認められたい」と思うのは自然ですが、それに縛られると「どう思われるか」が基準になってしまいます。アドラー心理学では「他者の承認を求めない」姿勢を勧めています。園内でも「同僚に好かれようと頑張る」のではなく「園児のためにどうするか」を基準に考えると、関係がラクになります。
課題の分離を意識する
アドラー心理学の重要な考え方のひとつが「課題の分離」です。
たとえば「行事で新しい方法を取り入れるかどうか」は園の課題であり、「その意見をどう受け止めるか」はそれぞれの課題です。自分がコントロールできない部分にとらわれず、自分の課題に集中すると、人間関係の摩擦が減ります。
勇気づけを大切にする
「勇気づけ」とは、相手に「自分にはできる力がある」と思わせる関わり方です。否定せず「まずはやってみよう」と背中を押すことで、職員同士の信頼関係が深まります。
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園内で活かす具体的な実践法
会議で意見を安心して出せる雰囲気づくり
「そういう考えもあるね」「やってみたらどうなるかな」といった受け止めの言葉を使うと、安心して発言できる空気が生まれます。
日常の小さな「ありがとう」を口にする
同僚が手伝ってくれたときに「ありがとう」を積極的に伝えるだけで、信頼感が深まります。小さな習慣が否定しない関係の基盤になります。
相手の姿を見取る
「忙しそうだな」と感じたら「手伝おうか?」と声をかけることが大切です。相手の姿を見取って寄り添う関わりは、安心して働ける職場づくりにつながります。
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事例紹介 ― 『嫌われる勇気』を園内で活かした実践
① 承認を求めすぎて疲れていた保育士が「課題の分離」でラクになったケース
ある若手職員は「先輩に認めてもらえないと不安で仕方ない」と悩んでいました。何をしても「褒められたい」「好かれたい」と思う気持ちに縛られていたのです。
『嫌われる勇気』を読んで「先輩がどう評価するかは自分の課題ではない」と気づいたことで、園児の姿を見取ることに集中できるようになりました。その結果、子どもたちの小さな成長に気づき、自信を取り戻しました。
② 会議で意見が言えなかった職員が「勇気づけ」で発言できるようになったケース
中堅職員のAさんは、会議で意見を出すと「どう思われるか」が気になり発言を控えていました。そこで同僚が『嫌われる勇気』の「勇気づけ」の考え方を意識し、「Aさんの意見をぜひ聞きたい」と声をかけました。その一言でAさんは安心して意見を述べられるようになり、園内の話し合いが活性化しました。
③ 役割分担で衝突していた職員が「共同体感覚」で協力できたケース
行事の準備で「自分ばかり負担が大きい」と不満を持つ職員と、「もっと効率的にやりたい」と主張する職員が対立していました。そこで『嫌われる勇気』にある「共同体感覚」を意識し、「園全体が一つのチームであり、園児の育ちを支えるのが共通の目的」と確認しました。結果、互いの立場を理解し合い、役割を調整して協力できるようになりました。
職員同士の関係を育むために園全体でできること
園内研修でアドラー心理学を学ぶ
『嫌われる勇気』を題材に園内研修を行い、「課題の分離」「勇気づけ」について共有すると共通理解が生まれます。
リーダーが率先して実践する
副園長や主幹などリーダーが「否定しない姿勢」を実践すると、園全体に広がります。園の文化を育てる第一歩です。
日々の振り返りを取り入れる
「今日否定せずに受け止められたこと」を職員同士で共有すると、自然と習慣化していきます。
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まとめ
職員同士の人間関係は園児の育ちを支える基盤であり、保護者さんの信頼にもつながる。
『嫌われる勇気』に示される「承認欲求からの自由」「課題の分離」「勇気づけ」を応用することで、園内の人間関係はラクになる。
否定せずに受け止める姿勢を職員全体で実践することで、働きやすく信頼にあふれた園をつくることができる。
明日からの園内でのやりとりで、同僚の意見を否定する前に「まず受け止める」姿勢を意識してみましょう。それが職員同士の人間関係をラクにし、園児の育ちを支える働きやすい園づくりにつながるといいですね。
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