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【解説】「協同性」を育てる保育実践 ― 共同制作・ごっこ遊びから考える/子ども同士の関わりを支える保育者の役割

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保育の中でよく話題になる「協同性」という言葉。園児が友だちと関わりながら一緒に活動し、学び合う力を意味します。協同性は一人での活動ではなかなか育ちにくく、共同制作やごっこ遊びなど「他者と関わる場面」を通して大きく育まれます。

しかし「ただ一緒に遊ばせればよい」というわけではありません。子ども同士の関わりが深まるように保育士が環境を整え、関わり方を支えることが大切です。この記事では、協同性を育てる保育実践について具体的に整理し、日々の保育にすぐ取り入れられる視点を紹介します。

「協同性」とは何か?

定義と発達における位置づけ

協同性とは、子どもたちが友だちと関わりながら物事を進める力です。自分の思いを表現しつつ、相手の考えを受け入れ、目的を共有しながら活動する姿が協同性の育ちにつながります。

保育所保育指針や幼稚園教育要領でも、協同性は「人との関わりを通して育つ力」として大切にされています。単なる「仲良く遊ぶ」だけではなく、互いに協力し合い、時には意見の食い違いを調整しながら進めていく力です。

子ども同士の関わりが育む力

園で一緒に絵を描いたり、積み木を組み合わせたりする中で、子どもは「相手の意見を聞くこと」や「どうすればうまくいくかを一緒に考えること」を自然に体験します。これによって、共感する気持ちやルールを理解する力が少しずつ育まれていきます。

例えば、「ここに赤を塗りたい」という子と「青にしたい」という子が出てきたとき、対立を避けるのではなく「じゃあ、半分ずつにしよう」と解決する姿は協同性の大切な一歩です。

共同制作がもたらす学び

制作活動で見られる子どもの姿

園での共同制作は、協同性を育てる代表的な活動です。大きな紙に絵を描いたり、段ボールでお城を作ったりする中で、子どもたちは役割分担をしながら取り組みます。

ある園児はリーダーのように「ここを貼って」と指示を出し、別の子はコツコツと作業を続け、さらに別の子はアイデアを出して工夫します。完成したときに「できた!」と一緒に喜ぶ体験は、達成感を共有する貴重な機会です。

保育士ができる支援

ただ「自由に作ろう」と声をかけるだけでは、子ども同士の関わりが深まりにくいこともあります。保育士が「どうやって作る?」「誰がどの役をする?」と問いかけることで、自然に話し合いが生まれます。

また、作業中に「ぼくがやりたい!」と取り合いになることもあります。その場面では「一緒にできる方法はあるかな?」と子どもたちに考えさせることで、協同性が育つ瞬間につながります。

ごっこ遊びに見る協同性の広がり

ごっこ遊びで生まれる関わり

「お店屋さんごっこ」や「病院ごっこ」などのごっこ遊びは、協同性を育てる格好の場面です。子どもたちは「店員」「お客さん」「医者」「患者」など役割を決め、ルールを共有しながら遊びを展開していきます。

このとき大切なのは、想像を共有しながら「一緒に楽しむ」という体験です。「今日はケーキ屋さんにしよう」「このブロックはケーキね」とやり取りすることで、相手の考えを受け止め、自分の発想をつなげる力が広がります。

保育士の役割

ごっこ遊びでは、保育士が最初に「今日はどんなお店にする?」ときっかけを与えることで、子ども同士の会話が自然に始まります。また、役割をめぐってケンカになったときには「どうしたら二人とも楽しめるかな?」と橋渡しをする役割が必要です。

保育士が「〜の姿を見取る」ことを意識すると、子どもがどんな工夫をして友だちと関わっているかが見えてきます。それを次の活動へとつなげることで、協同性の育ちはさらに広がります。

協同性を支える保育環境づくり

安心できる人間関係

協同性が育つためには、まず安心できる人間関係が必要です。職員同士が連携し、温かい雰囲気を作ることで、子どもたちは「失敗しても大丈夫」と感じられるようになります。また、保護者さんとのやり取りも子どもにとってのモデルとなり、人との協力の大切さを学ぶ機会になります。

日常の中での育ちを支える工夫

  • 当番活動や係活動を取り入れる

  • 異年齢での交流を設ける

  • 成果よりも「関わりのプロセス」を評価する

たとえば給食の配膳を当番で行うと、「どうやったら早く配れるかな」と自然に相談が生まれます。そこに保育士が「すごく工夫してるね」と声をかけることで、子どもたちは協力の意味を実感します。

実践例から学ぶ

実践の一例を紹介します。

「大きな森を描こう」という共同制作では、子どもたちが「ここは川にしよう」「鳥を描こう」と意見を出し合いました。最初は意見がぶつかっていましたが、保育士が「どうしたら両方できるかな?」と促すと、「じゃあ川の上に鳥を飛ばそう!」とアイデアがつながり、全員が満足できる作品に仕上がりました。

また、「お店屋さんごっこ」では、役割をめぐって「店員がいい!」と争いがありましたが、保育士が「交代でやったらどう?」と提案したことで、子どもたちが順番を決め、安心して遊びが続きました。

こうした場面からも分かるように、協同性は日常の中で自然に芽生え、保育士の関わりによって大きく伸びていきます。

明日から役立つおすすめの本

現場で実践できる具体的な活動例を、まずは取り入れてみて実際に感じてみることをおすすめします。

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教育・保育要領に示された「10の姿」を実際の保育場面と結びつけて学べる実践書です。日常の遊びや生活の中でどのように子どもたちの育ちを支えるかを、豊富な事例と写真で具体的に解説。新人保育士から経験豊富な先生まで、保育の質を高めたい方に役立つ一冊です。

  • 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

園児の「思いやり」「協同性」「学びに向かう力」など、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」をわかりやすく解説した一冊です。日々の保育の中でどんな場面を見取り、どう育ちを支えるのかを丁寧に示してくれるので、現場の実践にすぐ役立ちます。日々読み返したくなるので保育士の学び直しにもおすすめです。

どれも専門的な内容をやさしく解説しており、新しい視点で明日からの保育の質を高めたい方にぜひ読んでほしい本となっています。

まとめ

協同性は、園児が友だちと関わりながら一緒に活動する中で育つ力です。共同制作やごっこ遊びは、協同性を引き出す絶好の場面であり、保育士の支援や環境づくりが欠かせません。

子ども同士のやり取りを丁寧に見取り、育ちを支える視点を持つことで、園全体が「協同性の学び場」となります。今日からの保育で小さな工夫を積み重ね、子どもたちの豊かな関わりを大切にしてほしいなと思います。

協同性を意識した保育を進めることで、園児一人ひとりの成長が輝き、保護者さんや職員との信頼関係もさらに豊かになるといいですね。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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