「服のタグがチクチクして着替えを嫌がる」「掃除機の音に耳をふさいで泣いてしまう」「転んでも痛がらずに平気そうにしている」──そんなお子さんの姿に、どう対応したらいいのか迷うパパやママも多いのではないでしょうか。
ASD(自閉スペクトラム症)傾向を持つお子さんには、感覚が通常よりも敏感すぎる「感覚過敏」や、逆に感じにくい「感覚鈍麻」が見られることがあります。これは単なる「好き嫌い」や「わがまま」ではなく、お子さんが世界をどのように感じているかという特性です。
大切なのは「困った行動」ととらえるのではなく、「安心できるようにどう工夫できるか」を考えること。本記事では、感覚過敏・感覚鈍麻の特徴と、家庭でできる具体的なサポートをやさしく解説していきます。
感覚過敏・感覚鈍麻とは?
感覚過敏の例
音に敏感で、大きな音にパニックを起こす
光がまぶしく、蛍光灯や日差しを避けたがる
肌触りが苦手で、特定の服しか着たがらない
食べ物の食感やにおいに強い拒否反応を示す
感覚鈍麻の例
転んでも痛みに気づかずに遊び続ける
熱い食べ物をそのまま口にしてしまう
体の感覚が鈍く、強い刺激を求めて動き回る
触っても気づきにくいことがある
特性を理解することが安心につながる理由
感覚過敏や感覚鈍麻は「育て方の問題」ではなく、脳の感覚処理の特性によるものです。パパやママが「なぜこの行動をしているのか」を理解することが、まずは安心の第一歩になります。
感覚過敏への家庭でのサポート
音に敏感なお子さんへの工夫
掃除機やドライヤーの音が苦手なお子さんには、イヤーマフやノイズキャンセリングヘッドホンを活用すると安心できます。また「これから掃除機をかけるね」と予告するだけでも、不安が和らぐことがあります。
服の素材やタグに配慮する
肌触りに敏感なお子さんは、縫い目やタグが刺激になることがあります。タグを切る、縫い目の少ない下着を選ぶ、柔らかい素材の服を用意するなどの工夫が効果的です。
食べ物の見た目や食感に配慮する
味よりも食感やにおいに敏感な場合は、苦手な食材を無理に食べさせる必要はありません。形や調理法を変えて「似たような栄養がとれる食べ物」で補うのも立派な工夫です。
感覚鈍麻への家庭でのサポート
痛みに気づきにくいお子さんへの注意
転んでも泣かずに遊び続けてしまうお子さんの場合、小さなけがを見逃してしまうことがあります。パパやママが「痛そうにしていないから大丈夫」と思わず、こまめに体をチェックしてあげることが大切です。
温度の感覚が鈍い場合の工夫
お風呂や食事で熱さを感じにくいと、やけどにつながる危険があります。お湯の温度を大人が必ず確認する、食べ物は少し冷ましてから出すといった対応が必要です。
強い刺激を好むお子さんへの工夫
感覚が鈍いお子さんは、ジャンプしたり走り回ったりと強い刺激を求めることがあります。そのエネルギーを安心して発散できるよう、トランポリンやバランスボールを使った遊びを取り入れるとよいでしょう。
安心できる環境をつくる工夫
家庭の中に「安心スペース」をつくる
リビングの一角にクッションや毛布を置き、「落ち着きたいときはここで休んでいい」と伝えるだけで、お子さんが安心できる居場所になります。
予定や流れを見える化して安心感を持たせる
次に何をするのかがわからないと不安が増します。絵カードやホワイトボードで「今からすること」を見えるようにすると、混乱が減りやすくなります。
お気に入りのアイテムを活用
お気に入りのぬいぐるみや毛布など、「安心の象徴」を持ち歩けるようにすると、外出先でも落ち着きやすくなります。
パパ・ママの心構え
「無理に慣れさせなくていい」という考え方
「周りの子に合わせなければ」と思うと、パパやママの負担が大きくなります。まずは「この子にとってどう安心できるか」を優先することが大切です。
できることから工夫する視点を持つ
一度にすべてを解決しようとせず、「今日はこの方法を試してみよう」と小さな工夫を積み重ねることで、無理なく続けられます。
周囲との連携を大切にする
園や学校の先生に「家庭ではこうしています」と共有することで、支援の一貫性が生まれ、お子さんが安心して過ごせる環境が広がります。
家庭療育をもっと広げたいパパ・ママへ
感覚過敏や感覚鈍麻への工夫は家庭でもできますが、どうしてもパパやママだけでは限界を感じる場面もあるかもしれません。「家庭でできる工夫は試したけれど、もっとお子さんに合ったサポートを体験させたい」と思う方もいらっしゃるでしょう。
そんなときに参考になるのが、遊びや生活の中で自然に発達支援を取り入れられる 子ども向け教育プログラム です。こちらの記事では、ABAや感覚統合の考え方を活かしながら、お子さんが楽しみながら取り組める「療育55レッスン」が紹介されています。
家庭でのサポートと合わせて、お子さんが安心して成長できる体験の場を広げるひとつの選択肢として、参考にしていただけたらと思います。
まとめ
感覚過敏や感覚鈍麻はASD傾向のお子さんに多く見られる特性であり、決して「わがまま」ではありません。
感覚過敏には「刺激を減らす工夫」
感覚鈍麻には「危険を予防する工夫」
安心できる環境やサポートが、お子さんの笑顔を増やす鍵になる
パパやママが「無理に直そうとしなくてもいい」と考えることが、何よりの支えです。今日からできる工夫をひとつ試していただけたらと思います。お子さんが安心して過ごせる毎日となるといいですね。