子育て

【解説】発達支援で使われる専門的な方法|ABA療法・TEACCH・感覚統合をわかりやすく紹介

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 お子さんの発達について調べていると、「ABA療法」「TEACCH」「感覚統合」といった専門的な言葉を目にすることが増えてきます。けれど、お父さん・お母さんにとっては、「難しそう」「どれがうちの子に合うのかわからない」と感じることも多いのではないでしょうか。

 健診や園の面談で「こういう方法がありますよ」と名前だけ聞いて、そのままになっている親御さんも少なくありません。インターネットで検索すると、賛成の意見もあれば慎重な意見もあり、「結局どう考えればいいの?」とますます迷ってしまう、という声もよく耳にします。

 幼児教育の知見をもとにすると、発達支援で使われる専門的な方法は、どれか一つが絶対の正解というものではありません。それぞれ大切にしている視点や得意な領域があり、お子さんの特性や困りごとによって、合う・合わないが変わってきます。また、専門家だけが使う特別な魔法ではなく、「家庭での関わりにも生かせる考え方のセット」として捉えることもできます。

 この記事では、発達支援でよく名前が挙がるABA療法・TEACCH・感覚統合について、「どんな方法なのか」「どんなお子さんに合いやすいのか」「家庭ではどう生かせるのか」を、専門用語をかみ砕きながら整理していきます。難しい理論ばかりではなく、日常生活の具体例も交えてお伝えしますので、肩の力を少し抜いて読んでいただけたらうれしいです。

 全体を通して大切にしたいのは、「方法選び」そのものよりも、「わが子のどんな姿を見取るのか」という視点です。ABA療法にも、TEACCHにも、感覚統合にも共通しているのは、「その子が困っている背景を理解しようとすること」「環境や関わり方を工夫して、育ちを支えること」です。ご両親が専門用語に振り回されず、お子さんの姿に立ち返って考える手がかりになればと思います。

発達支援の方法が多すぎてわからないときに

「どれが正解?」と迷いやすい今の情報環境

 ここ数年、発達支援に関する情報は一気に増えました。SNSや動画サイト、個人ブログ、本や雑誌など、発達支援で使われる専門的な方法を紹介する記事はたくさんあります。ABA療法を詳しく解説するサイトもあれば、TEACCHや感覚統合の体験談を語る方もいます。

 一見すると心強い状況ですが、親御さんにとっては「情報が多すぎて選べない」という新たな悩みにつながることもあります。「この人はABA療法を強くすすめている」「あっちではABAに慎重って書いてある」「別のところではTEACCHがいいと書いてある」といった具合に、読むほど頭が混乱してしまうのです。

 また、「今すぐ始めないと手遅れになる」といった強い言葉に出会って、あわててしまうこともあります。焦りは、ご両親の心のエネルギーを大きく消耗させてしまいます。焦った気持ちのまま方法を選ぶと、後から「本当にこれでよかったのかな」と自分を責めてしまうことにもつながりかねません。

 まずは、「迷うのは自然なことだ」と自分に言ってあげてください。大切なのは、たくさんの情報を一気に取り込もうとするのではなく、「基本の考え方」を押さえながら、一つひとつ落ち着いて整理していくことです。

「うちの子に合う方法」が知りたいという切実な気持ち

 多くのお父さん・お母さんは、「有名だから」「人気があるから」という理由だけで方法を選びたいわけではありません。本音のところでは、「この子の今の困りごとを少しでも軽くしてあげたい」「この子らしさを生かしながら育ちを支える方法が知りたい」と願っておられるのではないでしょうか。

 たとえば、次のような悩みはありませんか。

・こだわりが強くて、切り替えに時間がかかる
・集団の活動になると、一人だけ動けなくなってしまう
・音や光、触られる感覚がつらそうで、日常生活で困っている
・指示は通っているのに、行動につながりにくい

 こうした具体的な困りごとに対して、「ABA療法がいいらしい」「TEACCHが合うかもしれない」「感覚統合が必要なのでは」と、さまざまな情報が飛び交います。そのたびに、「うちの子にはどれが合うんだろう」と不安になってしまうのは、当然のことです。

 本来、発達支援で使われる専門的な方法は、「ラベルを貼るためのもの」ではありません。お子さん一人ひとりの姿を見取るためのレンズであり、「どんな環境や関わり方なら力を発揮できるか」を一緒に考えるための道具です。方法そのものが主役なのではなく、「お子さんとご両親の生活」が主役であることを忘れないようにしたいですね。

専門用語に振り回されないために大事にしたい視点

 では、どうすれば専門用語に振り回されずにすむのでしょうか。ポイントは、「名前」ではなく「中身」に目を向けることです。

 ABA療法という名前を聞いたときには、「行動を小さなステップに分けて、できたら具体的にほめる方法なんだな」というイメージを持てるだけでも、見え方が変わります。TEACCHという言葉には、「見通しが持ちにくいお子さんのために、視覚的な手がかりを増やして安心できるようにする考え方なんだな」という理解が加わると、日常の工夫に結びつきやすくなります。

 感覚統合という言葉も、「なんとなくかっこいい専門用語」ではなく、「体や五感から入ってくる情報を整理する力に注目した支援なんだ」と知ることで、「うちの子がすぐに疲れてしまう背景には、こういうことがあるのかもしれない」と想像しやすくなります。

 発達支援で使われる専門的な方法の名前に出会ったときには、「これはうちの子に合うか・合わないか」だけで判断するのではなく、「どういう考え方にもとづいているのか」「家庭でできる工夫に置きかえるとしたら何か」を意識してみてください。次の章からは、そのヒントになる共通ポイントを押さえながら、それぞれの方法の特徴を見ていきます。

発達支援の方法に共通する考え方をおさえておこう

「困りごと」を行動として見ていく視点

発達支援で使われる専門的な方法には、共通して大事にされている視点があります。その一つが、「困った行動」を叱る対象ではなく、「理由のあるサイン」として見ていくことです。

たとえば、

・急に走り出してしまう
・順番を待てずに割り込んでしまう
・大きな声で叫んでしまう

こうした行動は、周りの大人から見ると「困る姿」に見えます。でも、ABA療法やTEACCH、感覚統合の考え方では、「どうしてこの行動が必要になっているのか」をていねいに考えます。

音が怖くて、早くその場から逃げたいのかもしれません。どうしていいか分からず、不安が大きすぎて叫ぶしかなかったのかもしれません。幼児教育の知見をもとにすると、「悪い子だからそうしている」と決めつけるのではなく、「そうせざるを得ない理由がある」と考えることで、お子さんの姿を見取る角度が変わってきます。

環境を整え、見通しをつくることの大切さ

もう一つの共通点は、「お子さん本人だけを変えようとしない」ということです。発達支援で使われる専門的な方法は、どれも「環境」をととのえることを重視します。

・音や光が強すぎる場所を避ける
・やることを絵や写真で示して、見通しを持ちやすくする
・急な予定変更をなるべく減らし、前もって知らせる

こうした工夫は、TEACCHでよく用いられる考え方ですが、ABA療法や感覚統合の実践の中でも同じように大事にされています。お子さんの行動だけを「がんばって変えなさい」と求めるのではなく、「動きやすい環境」に変えてあげることで、自然と落ち着きやすくなることも多いのです。

ご両親にとっても、「この子の性格の問題」だと思うより、「環境との相性の問題」だと考えたほうが、少し気持ちが楽になるかもしれません。環境をととのえることは、お子さんの育ちを支える、とても現実的でやさしいアプローチです。

家庭・園・専門機関がつながるほど力を発揮する

発達支援で使われる専門的な方法は、家庭だけでがんばるものではありません。園や学校、専門機関とつながりながら取り入れることで、より力を発揮しやすくなります。

たとえば、

・園ではTEACCHの考え方でスケジュールを視覚化
・専門機関ではABA療法の手法で行動のステップを整理
・家庭では、その両方の考え方をヒントに、声かけや環境を少し整える

このように、「ばらばらなやり方」ではなく、「共通するねらい」をもって関わることで、お子さんも安心しやすくなります。「園ではこうしているので、家でも似たやり方を取り入れてみたいのですが…」と相談してみるのも、とても良い一歩です。

次の章からは、具体的にABA療法・TEACCH・感覚統合とはどのような方法なのかを、それぞれわかりやすく紹介していきます。「名前だけ知っていた状態」から、「なんとなくイメージできる状態」に変えていきましょう。

ABA療法とは?行動のしくみを使った支援

ABA療法の考え方をやさしく整理

ABA療法の「ABA」は、「応用行動分析」という意味の英語の頭文字をとったものです。少し堅い言葉ですが、やっていることをシンプルに言うと、「行動の前後にあるきっかけと結果を整理して、望ましい行動を増やしていく方法」です。

たとえば、「片づけをしない」という困りごとがあったとします。ABA療法では、

・片づけの前に何が起きている?(前)
・片づけてほしいとき、どんな声かけをしている?(行動)
・片づけなかったとき、どう対応している?(結果)

というように、「前・行動・後」の3つに分けて考えます。そして、「前」や「後」の関わり方を変えることで、「行動」も少しずつ変わっていく、という考え方を大切にします。

次では、ABA療法が日常の中でどのように活かされているのか、身近な例を交えながら見ていきます。

日常生活でよく使われているABA的な関わり

ABA療法と聞くと、「専門家が行う特別な訓練」というイメージを持つ方もいます。けれど、その考え方の一部は、すでに多くのご家庭や園で自然に使われています。

たとえば、次のような場面です。

・できたらシールを貼る、ごほうびカードを渡す
・最初はとても簡単な課題から始めて、少しずつ難しくする
・「あと3回やったらおしまいね」と、終わりを決めて取り組む

これらは、「できた行動をきちんと認めて増やしていく」「負担が大きくなりすぎないように段階をつくる」という、ABA療法の基本的な考え方とつながっています。

たとえば、「歯みがきを嫌がるお子さん」の場合、いきなり全部を完璧にしようとするのではなく、

  1. 今日は歯ブラシを口にちょっと入れられたらOK
  2. 次は、前歯だけを3秒ずつみがけたらOK
  3. 慣れてきたら、全体を少しずつ

というように、「できたらほめる」「少しずつステップアップする」形にします。これはまさに、発達支援で使われる専門的な方法としてのABA療法を、家庭向けにやさしくアレンジしたイメージです。

ここで大切なのは、「ごほうびで釣る」ことが目的ではない、という点です。小さな成功体験を積み重ねて、「やればできるんだ」「やってみてもいいかも」と感じられる場面を増やすこと。そのことで、お子さんの育ちを支えることにつながっていきます。

ABA療法のメリットと注意したいポイント

発達支援で使われる専門的な方法としてのABA療法には、メリットも多くあります。

・やることが具体的で分かりやすい
・今、何を目指しているかが明確になる
・できたことを積み重ねるので、成功体験が増えやすい

特に、「どう関わればいいか分からない」と感じている親御さんにとっては、「まずこの行動から練習してみよう」と目標がはっきりするだけでも、気持ちが少し楽になることがあります。

一方で、注意したいポイントもあります。

・「ごほうびがないとやらない」状態になってしまうことがある
・大人の指示を待つ姿が強くなり、自分から考える機会が減ることがある
・やり方だけが一人歩きすると、「管理されている」と感じさせてしまうことがある

そのため、ABA的な関わりを取り入れるときには、「子どもの気持ち」や「楽しさ」を大切にする視点が欠かせません。常に新しいごほうびを用意するのではなく、「できてうれしい」「ほめられてうれしい」という感情の部分を大切にしていきたいですね。

また、「この行動をやめさせる」という目的だけで使うのではなく、「何ができるようになったら生活が楽になるかな」という観点から、目標を一緒に考えていくことが大切です。ご両親がお子さんの姿をていねいに見取りながら、「この子にとって意味のあるステップは何だろう」と考える時間そのものが、発達支援の大切な一部になります。

家庭でABA的な考え方を取り入れるときの工夫

では、家庭でABA的な考え方を取り入れるとき、どのような工夫ができるでしょうか。ポイントをいくつか挙げてみます。

  1. 目標は「小さく・具体的に」
    「しっかり片づけられるようになる」ではなく、「レゴを箱に入れられたらOK」のように、今の力から少し頑張れば届きそうなラインに設定します。
  2. うまくいったときのほめ方を具体的に
    「すごいね」だけでなく、「レゴを箱に入れてくれて助かったよ」「最後までやりきれたね」のように、行動のどこが良かったのかを言葉にします。
  3. うまくいかないときは、お子さんではなく環境や目標を見直す
    「この子はやる気がない」と決めつけるのではなく、「難しすぎたかな」「どのタイミングなら取り組みやすいかな」と考え方を変えてみます。

このように、ABA療法は、親御さんが自分を責めないための視点としても役に立ちます。「子どもが悪い」「親が悪い」と矢印を向けるのではなく、「やり方をちょっと変えてみようか」とチームで試行錯誤していくイメージを持てるといいですね。

次は、視覚的な手がかりを使って見通しをつくるTEACCHについて見ていきます。ABA療法と同じく、名前は難しく聞こえますが、家庭で活かせる工夫がたくさん詰まっています。

TEACCHとは?視覚的な手がかりで見通しをつくる支援

TEACCHの特徴とねらい

TEACCH(ティーチ)という名前を初めて聞いたとき、「英語でよく分からない」「専門家だけの言葉」と感じた親御さんも多いかもしれません。もともとは、自閉スペクトラム特性のあるお子さんや大人の方を支えるために、アメリカで生まれた支援の枠組みです。

TEACCHの大きな特徴は、「目で見て理解しやすくする」という点にあります。言葉だけの説明が苦手なお子さんに対して、

・写真やイラストで、その日やることを示す
・作業の手順を、一つひとつ視覚的に示す
・「どこで」「何を」「どれくらい」「終わったらどうなるか」を見える形にする

といった工夫を通して、「何をしたらいいか分からない」「突然の変化が怖い」といった困りごとを和らげていきます。

たとえば、朝の支度が苦手なお子さんがいるとします。「早くしなさい」「なんでできないの」と言葉で急かす前に、

  1. 顔を洗う
  2. 服を着る
  3. ごはんを食べる
  4. くつをはく

という流れを、簡単なイラストや写真で貼り出しておきます。終わった項目にチェックをつけたり、カードを外したりすることで、「今どこまで進んだのか」「あとどれくらいで終わるのか」が、ぱっと見て分かるようになります。

これも、発達支援で使われる専門的な方法としてのTEACCHの考え方を、家庭向けにアレンジした例の一つです。「この子のせい」と見るのではなく、「情報の出し方を変えることで、動きやすくできないかな」と考えるのが、TEACCHのやさしい視点だと言えます。

次では、TEACCHでよく使われる「構造化」と呼ばれる工夫を、家庭でも試しやすい形でご紹介していきます。

スケジュールや作業の「構造化」の具体例

TEACCHでは、時間や場所、作業の流れをわかりやすく「構造化」することを大切にします。構造化とは、「なんとなく」ではなく、「目で見てわかる形に整理すること」とイメージしていただくとよいかもしれません。

たとえば、一日の流れが分かりにくいお子さんの場合、写真やイラストを使ったスケジュール表が役立ちます。

・「おきる」
・「ごはん」
・「ようちえん(こども園)」
・「かえってくる」
・「おやつ」
・「あそぶ」
・「おふろ」
・「ねる」

といった項目をカードにして、マグネットボードや壁に貼ります。終わったものは、裏返したり、はずしたりすることで、「今どこまで来たか」「次は何か」がひと目で分かるようになります。

作業の構造化も同じです。おもちゃの片づけひとつをとっても、

  1. かごを持つ
  2. 床のおもちゃを入れる
  3. かごを棚に戻す

というように、手順を3ステップにして、イラストや写真で示しておきます。言葉の指示だけでは見通しが持ちにくいお子さんでも、「これをしたら次はこれ」と分かると、動き出しやすくなります。

このような視覚的な手がかりは、「言葉が遅いから」「理解が遅れているから」といったラベルのためではなく、「情報の伝え方を整えることで、お子さんの育ちを支える工夫」として、とても力を発揮します。

TEACCHのメリットとデメリット

TEACCH的な工夫のメリットは、何よりも「安心感」が生まれやすいことです。

・何をすればいいかが分かる
・あとどれくらいで終わるかが分かる
・終わったあとはどうなるかが分かる

こうした見通しが持てると、不安や緊張が和らぎ、落ち着いて行動しやすくなります。「約束を守れない子」ではなく、「状況が分かりにくくて固まってしまっていた子」が、「わかるから動ける子」に変わっていくこともあります。

一方で、デメリットや注意したい点もあります。

・大人側の準備に手間がかかる
・スケジュールやカードを増やしすぎて、かえって複雑になることがある
・視覚支援がないと不安になりすぎる、という状態になってしまうことがある

そのため、「すべてを構造化しよう」と力を入れすぎないことが大切です。特に困りごとが出やすい場面(朝の支度、外出前、宿題前など)に絞って、少しずつ試していくほうが、ご両親にもお子さんにも負担が少なくてすみます。

家庭で試しやすいTEACCH的な工夫

家庭で取り入れやすいのは、「今日やることリスト」のような、小さな見える化です。

・朝やることカード(顔を洗う/着替える/ごはん/歯みがき/トイレ)
・夜やることカード(お片づけ/おふろ/パジャマ/絵本/ねる)

など、まずは3〜5個くらいのカードから始めてみるとよいでしょう。お子さんと一緒にイラストを描いたり、写真を使って手作りするのもおすすめです。「やらされることリスト」ではなく、「一緒にがんばるためのリスト」として共有できるといいですね。

また、「どこで」「何をするか」が分かりやすいように、場所ごとに役割をはっきりさせるのも、TEACCH的な工夫です。

・この机は「宿題をする場所」
・このマットの上は「ごろごろしていい場所」
・この棚には「パズルだけを入れる」

というように、空間をゆるやかに分けるだけでも、「今は何をする時間かな?」と考えやすくなります。

こうした工夫は、発達支援で使われる専門的な方法のエッセンスを、家庭でやさしく取り入れたものです。完璧を目指さなくても大丈夫です。お子さんの反応を見取りながら、「これは合っていそう」「これはちょっと違ったかな」と、柔軟に調整していきましょう。

感覚統合とは?「落ち着かない」「こだわり」があるお子さんへの支援

感覚の過敏さ・鈍さを理解する

感覚統合という言葉も、発達支援の場面でよく耳にするようになりました。感覚統合とは、「体や五感から入ってくるさまざまな情報を、頭の中で整理して、うまく使う力」のことを指します。

すこしイメージしてみましょう。

・服のタグがチクチクして、着ていられない
・掃除機やトイレの音が怖くて、その場から逃げたくなる
・じっと座っていると、体がムズムズしてしまう
・よく物にぶつかったり、転んだりしてしまう

こうした姿の背景には、「感覚が過敏(強く感じすぎる)」「感覚が鈍い(感じにくい)」といった特性が関係していることがあります。決して「わがまま」「甘え」ではなく、お子さんなりに環境に適応しようとした結果として、その行動を選ばざるを得なかったのかもしれません。

幼児教育の知見をもとにすると、「落ち着かない」「こだわりが強い」といった表面の行動だけでなく、「この子の体や感覚の世界は、どんなふうに感じられているのだろう」と想像してみることが、感覚統合の大事な一歩だと言われています。

感覚統合遊びの基本と家庭での取り入れ方

感覚統合の視点からは、「心地よい感覚の経験を通して、少しずつ体の使い方やバランスの取り方を学んでいく」ことが大切にされています。専門の作業療法士が行うプログラムもありますが、家庭でできる範囲の工夫もあります。

たとえば、次のような遊びです。

・ブランコやハンモックにゆらゆら揺られる
・クッション山をのぼったり降りたりする
・バランスボールに座ってポンポン弾む
・大きめのクッションに全身を預けてゴロゴロする

これらは、「前庭感覚」(体の傾きや動きを感じる力)や「固有感覚」(筋肉や関節の動きを感じる力)を心地よく刺激すると言われています。無理に激しい遊びをさせる必要はありません。お子さんが気持ち良さそうにしている姿を見取りながら、少しずつバリエーションを増やしていくイメージです。

感覚統合の遊びは、「落ち着きなさい」と言葉で伝えるよりも、「落ち着きやすい状態に体を整えてあげる」ことを目指します。遊びの前後で、「表情がやわらいだ」「椅子に座っていられる時間が少し伸びた」といった変化が見られたら、それはお子さんの育ちを支える一歩になっていると言えるでしょう。

次の続きでは、感覚統合のメリットと注意点、そして専門家に相談したいサインについてお伝えしていきます。そのうえで、こうした専門的な方法を家庭療育の中でどう生かしていくかを、一緒に考えていきましょう。

感覚統合を取り入れるメリットと注意点

 感覚統合の考え方を取り入れると、「落ち着かない」「集中が続かない」といったお子さんの姿が、少し違って見えてくることがあります。

・じっとしていられないのは、「ダメな性格」だからではなく、体の中がソワソワしているサインかもしれない
・服を嫌がるのは、「わがまま」ではなく、肌ざわりが痛いほど強く感じられているのかもしれない

 このように見方が変わることで、ご両親のイライラや自己嫌悪が少し和らぎ、お子さんの育ちを支える関わりにエネルギーを使いやすくなります。

 メリットとしては、

・お子さんが安心して過ごせる環境や遊びを見つけやすくなる
・体の使い方や姿勢が安定し、集中しやすい時間が増える可能性がある
・「困った行動」を減らすだけでなく、「落ち着きやすい状態」を一緒に見つけていける

 といった点が挙げられます。

 一方で、注意しておきたいこともあります。感覚統合の遊びは、やり方によっては刺激が強すぎたり、逆にお子さんの苦手さを増やしてしまったりすることもあります。「高いところが苦手」「回転が怖い」といったお子さんに、無理やりブランコや回転遊びをさせてしまうと、不安や恐怖心が大きくなってしまうことがあります。

 そのため、

・お子さんが嫌がっているサインを見逃さない
・「もう一回する?」と必ず確認する
・負担が大きそうなときは、すぐにやめて休憩する

 といった配慮が必要です。自己流で大がかりなことをするより、「心地よさそうな遊びを、短い時間から」始めるほうが安心です。

専門家に相談したいサイン

 感覚の特性は、誰にでも少なからずありますが、日常生活に大きな支障が出ている場合は、専門家に相談したほうがよいこともあります。

 たとえば、次のようなサインが続くときです。

・少しの音でも耳をふさいでパニックになる
・触られることを極端に嫌がり、生活動作がほとんど進まない
・とても強い力で物を握る、ぶつかる、転ぶなどが頻繁に起こる
・集団生活の中で、感覚の問題が原因と思われる困りごとが多い

 こうした場合、感覚統合に詳しい作業療法士などに相談することで、「この子の感覚の特徴」「どんな遊びや環境が合いそうか」といった具体的なアドバイスをもらうことができます。

 「相談する」という行動は、「問題がある」と決めつけることではありません。今のお子さんの姿をていねいに見取り、これからの育ちを支えるためのヒントを一緒に探す機会だと受け止めていただけたらと思います。

家庭療育で専門的な方法をどう生かすか

家庭だけで抱え込まないための考え方

 ここまで、ABA療法・TEACCH・感覚統合という、発達支援で使われる専門的な方法を見てきました。どれも、考え方そのものは家庭での関わりにも生かせるものですが、「全部自分たちだけでやろう」とすると、ご両親の負担が大きくなりすぎてしまいます。

 大切なのは、「家庭でできること」と「専門家に任せること」を分けて考えることです。

・家庭では、日常の中の声かけや、簡単な見える化、心地よい遊びを意識する
・園や学校では、集団生活の中で配慮してほしいポイントを相談する
・専門機関では、個別の支援計画や専門的な訓練をお願いする

 このように役割を分担していくことで、一人で背負い込まずに、お子さんの育ちを支えるチームをつくっていくことができます。

専門的な方法を「家庭向け」にかみ砕いた情報を活用する

 とはいえ、「どこから手をつけたらいいか分からない」「自分のやり方が合っているか不安」というお気持ちもあると思います。そのときに力になってくれるのが、専門的な方法を家庭向けにかみ砕いて整理している情報です。

 ABA療法・TEACCH・感覚統合などの考え方をふまえつつ、「家庭でどう声をかける?」「どんなふうに環境を整える?」といった具体的な視点でまとめられた解説を読んでみると、「これならうちでも試せそう」というアイデアが見つかることがあります。

 たとえば、家庭療育の考え方や関わり方をわかりやすく解説している記事として、次のようなページがあります。

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 お子さんの特性に合わせて、家でどんな支援ができるかを考えたいときに、「まず何から意識してみるといいのか」「毎日の中で具体的に何ができるのか」をつかむ手がかりになります。専門書よりもやわらかい言葉で書かれているので、「専門用語はちょっと苦手…」という親御さんにも取り入れやすいはずです。

家庭療育をサポートするプログラムを検討するときのポイント

 最近は、家庭療育をサポートする通信講座やオンラインプログラムも増えてきました。ABA療法や感覚統合などの考え方を土台に、「家庭での関わり方」を具体的に教えてくれるものもあります。

 検討するときには、次のようなポイントを見てみてください。

・内容が、専門用語ばかりでなく、日常の場面に落とし込まれているか
・ご両親の負担を考えた分量・ペースになっているか
・質問や相談ができる窓口が用意されているか
・「こうしなければならない」ではなく、「わが家なりに選べる余地」があるか

 どんなに評判が良いプログラムでも、すべてのご家庭に合うとは限りません。大切なのは、「わが家の生活リズム」「お子さんの特性」「親御さんの心と時間の余裕」との相性です。

 先ほどのような解説記事を読みながら、「こういう考え方なら、うちにも合いそうだな」「このスタンスなら続けられそうだな」と感じられるかどうかを確かめるのも、一つの目安になります。

よくある質問Q&A|ABA療法・TEACCH・感覚統合について

Q1:家で独学で真似しても大丈夫ですか?

A:本やインターネットで学びながら、家庭でできる範囲の工夫を取り入れていくこと自体は、とても良いことです。ただし、「専門家と同じような訓練を完全に再現しよう」とすると、ご両親にもお子さんにも負担が大きくなってしまいます。

 特に、強い指示やごほうびの使い方、感覚刺激の与え方などは、やり方によっては逆効果になることもあります。「考え方だけ借りて、家庭向けにやさしくアレンジする」というイメージで取り入れていくと安心です。迷ったときには、園の先生や専門機関に「このやり方はどうですか?」と相談してみるのもおすすめです。

Q2:ABA療法・TEACCH・感覚統合のうち、どれが一番おすすめですか?

A:どれか一つが「一番」ということはありません。それぞれ得意な領域や、力を発揮しやすい場面が違います。

・ABA療法:行動を小さなステップに分けて練習したいとき
・TEACCH:何をすればいいか分からず固まってしまうお子さんに、見通しをつくりたいとき
・感覚統合:体や感覚の特性からくる落ち着きにくさを和らげたいとき

 このように、「うちの子の困りごとに、どの視点が役に立ちそうか」という観点で考えてみてください。実際には、一つだけではなく、いくつかの考え方を組み合わせていくことが多いです。

Q3:診断がないと、こうした支援は受けられませんか?

A:診断が必要なサービスもありますが、「発達が気になるお子さん向けの相談」「子育て支援」として、診断の有無にかかわらず利用できる窓口も多くあります。自治体の子ども家庭支援センターや保健センター、発達相談窓口などに、「診断は出ていないけれど、こういうことで困っています」と話してみるだけでも大丈夫です。

 診断はゴールではなく、「お子さんの特性を理解し、必要な支援につなげるための情報の一つ」です。「診断がないから相談できない」と考えず、「気になることがあるなら相談していい」と受け止めていただけたらと思います。

Q4:どのくらい続ければ効果が出ますか?

A:発達支援で使われる専門的な方法は、「数週間で劇的に変化する魔法」ではありません。むしろ、小さな変化を少しずつ積み重ねていくことで、半年、一年という単位でじわじわと変化が見えてくることが多いです。

 だからこそ、「今日もできなかった」と落ち込むより、

・昨日より、少し落ち着いて座っていられた
・前より、自分からお願いできる場面が増えた
・以前ほど大きなパニックにならなくなった

 といった小さな変化を見取ることが大切です。ご両親がその変化に気づき、「できたね」と声をかけること自体が、お子さんの育ちを支える力になります。

まとめ|これから試してみたい工夫

 発達支援で使われる専門的な方法として、ABA療法・TEACCH・感覚統合を見てきました。名前はむずかしくても、その根底にあるのは、「お子さんの今の姿をていねいに見取り、育ちを支える環境や関わり方を一緒に考えていく」という、とてもあたたかい考え方です。

 これから試してみたい工夫として、たとえば次のような一歩があります。

・一つだけ、ABA的なステップ目標を決めて、「できたところを具体的にほめてみる」
・一日の流れを、イラストやカードで簡単に見える化してみる
・お子さんが心地よく感じる感覚遊びを、一緒に探してみる

 そして、「一人で抱え込まず、情報や専門家とつながっていく」ことも大切な工夫の一つです。家庭での関わり方をもう少し整理して知りたいときには、

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のような解説も参考にしながら、「わが家にはどんな関わりが合いそうかな」と考える時間を、ぜひつくってみてください。

 完璧な方法も、完璧な親も必要ありません。お子さんの小さな変化を見つけ、「ここがよくなってきたね」と一緒によろこぶ。その積み重ねこそが、何よりも確かな発達支援になっていきます。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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