まだ間に合う。今しかできない子育てを楽しもう。

子育てのすすめ

【解説】認定こども園教育・保育要領とは? まずは全体像をつかもう

認定こども園で働く保育教諭にとって、「教育・保育要領」は仕事の軸となる大切な指針です。
しかし、実際に読んでみると「文章が難しい」「保育所保育指針や幼稚園教育要領との違いがよく分からない」と戸惑う方も多いでしょう。

園長先生に「要領を読んでおくといいよ」と渡されたものの、正直どこから理解すればよいのか迷いました。けれども日々の保育を振り返りながら少しずつ読み解くうちに、この要領が「子どもの育ちを支える地図」であることが見えてきたのです。

本記事では、認定こども園教育・保育要領の全体像をわかりやすく整理し、保育所保育指針や幼稚園教育要領との違いや共通点を解説します。そして、保育現場でどのように活かせるのか、具体的なヒントもお伝えします。保育教諭にとって「明日からの実践が少し変わる」記事になればいいなと思います。

認定こども園教育・保育要領とは?

制度の背景と目的

認定こども園は2006年に始まり、2015年の子ども・子育て支援新制度で大きく位置づけが強化されました。
少子化や共働き家庭の増加を背景に、「教育」と「保育」を一体的に行う施設が求められたのです。

教育・保育要領は、この認定こども園が実践すべき教育・保育の基準を示す国の指針。単なる理念集ではなく、保育教諭が日々の保育を考える上での「共通のものさし」となっています。

認定こども園の役割と対象年齢

認定こども園は0歳から就学前の子どもまでを対象にしています。

  • 保育の機能(保護者が就労している子どもへの長時間保育)

  • 教育の機能(幼稚園と同じ教育的活動)

  • 地域子育て支援の機能(未就園児や保護者への支援)

この3つを併せ持つのが最大の特徴です。つまり認定こども園は「子どもの生活と学び、そして家庭や地域を支える拠点」と言えるでしょう。

保育所保育指針・幼稚園教育要領との違いと共通点

3つの要領の位置づけ

  • 幼稚園教育要領:文部科学省が所管。教育を重視。

  • 保育所保育指針:厚生労働省が所管。保育を重視。

  • 認定こども園教育・保育要領:内閣府が所管。両者を統合。

対象年齢や管轄は異なりますが、すべての根本には「子どもの最善の利益」があります。

共通点 ― 子どもの最善の利益を大切に

2018年の改訂で3つの要領に共通して盛り込まれたのが「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」です。
これは非認知能力、つまり「思いやり」「自分で考える力」「人と関わる力」など、生きていく上で大切な力を育む視点です。

また「遊びを通した学び」が重視されている点も共通しています。例えばブロック遊びの中で「崩れないようにどう作ろうか」と試行錯誤することは、思考力や協力する力を育てる大切な経験です。

違い ― 認定こども園独自の特徴

  1. 0〜5歳を通じた一貫性
    → 保育と教育を切れ目なく展開できる。

  2. 保護者支援
    → 子育て相談や家庭教育支援が要領に明記。

  3. 地域との連携
    → 園外の親子に開放する活動や地域イベントでの役割も重視。

私が勤務していた園では、毎週地域の親子向けに「園庭開放」を実施していました。要領に基づき地域支援を行うことで、園の存在が地域の安心につながると実感した場面です。

教育・保育要領の内容の全体像

5領域(健康・人間関係・環境・言葉・表現)

子どもの経験や学びを整理した枠組みです。

  • 健康:体を動かし、心身の調和を図る。

  • 人間関係:友達や大人と関わり、社会性を育む。

  • 環境:自然や社会と触れ合い、好奇心を広げる。

  • 言葉:聞く・話す・読む・書くの基盤を育てる。

  • 表現:音楽や絵画、身体表現を通して自分を表す。

例:夏の水遊びをする際、子どもたちは「冷たい!」「水が飛んだ!」と声をあげます。これは「健康」(体を使う)だけでなく、「言葉」(気持ちを表現する)、「人間関係」(友達と協力して遊ぶ)にもつながる経験です。

「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」10項目

例を挙げると…

  • 健康な心と体 → 毎日の生活リズムを大切にする。

  • 自立心 → 「自分でやりたい!」という気持ちを育てる。

  • 思考力の芽生え → 遊びの中で「なぜ?」「どうしたら?」を考える。

  • 協同性 → 友達と相談して活動を進める。

これは保育者が「評価する基準」ではなく、「子どもの姿を見取るための視点」です。

現場でつまずきやすいポイントと解決のヒント

「養護と教育の一体的展開」ってどうする?

例えば、おむつ替えは一見「養護」ですが、その際に「スッキリしたね」「今日は暑いね」と声をかければ、子どもとの関係性を深め、「言葉」や「人間関係」の育ちにつながります。日常生活すべてが教育の場になるのです。

指導計画への反映方法

週案・日案では「活動内容」だけを書くのではなく、要領の領域や10の姿に照らして「ねらい」を設定しましょう。
例:「リズム遊び」→「健康:体を十分に動かす」「表現:音に合わせて表現する」

保護者対応での活用

「遊んでばかりで学びは大丈夫ですか?」と聞かれることがあります。そんなときこそ要領を根拠に説明すると説得力が増します。
「教育・保育要領でも、遊びを通して主体的に学ぶことが重視されています」と伝えることで、保護者も安心して園に信頼を寄せてくれます。

 みんな最初は難しい

新人保育教諭の中には「要領を完璧に理解しないといけない」と思い込む人がいます。けれども先輩たちも最初は同じように戸惑いました。
大切なのは「少しずつ理解を深めていけばいい」という気持ちです。

今日からできる小さな実践

  1. 1日の活動から1つだけ領域を意識して振り返る

  2. 園内研修で要領の一節をテーマに話す

  3. 保護者との会話に要領の用語を1つ取り入れてみる

こうした小さな積み重ねが、やがて要領を自然に理解し活かせる力になります。

まとめ

認定こども園教育・保育要領は、0〜5歳の子どもを支えるための「道しるべ」です。保育所保育指針や幼稚園教育要領との共通点を理解し、認定こども園ならではの特徴である保護者支援や地域連携を意識することで、保育の質は一段と高まります。

完璧に覚える必要はありません。大切なのは日々の保育を振り返りながら「これはどの領域につながるのかな?」と意識してみること。小さな実践が積み重なれば、子どもたちの育ちとあなた自身の成長がつながっていきます。

今日から「1つの領域を意識して振り返る」ことから始めてみてはいかがでしょうか。

  • B!