保育士・保育教諭として日々子どもと関わる中で、必ず耳にするのが「養護と教育の一体的展開」という言葉です。
しかし現場に立つと、「養護は生活のケア、教育は活動や学習」と分けてしまいがちで、「どう結びつけたらいいのだろう?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
私自身も新人の頃、先輩に「おむつ替えも教育の一環だよ」と言われて戸惑いました。当時は「おむつ替えはただの生活支援では?」と思っていたからです。でも経験を重ねる中で、養護と教育は決して別物ではなく、むしろ重なり合って子どもの育ちを支えているのだと実感しました。
この記事では、「養護と教育の一体的展開」の意味をやさしく解説し、乳児期から幼児期まで切れ目のない支援をどう実践するかを紹介します。新人・中堅の保育教諭の方が「今日からやってみよう」と思える具体的な提案もお伝えします。
「養護と教育の一体的展開」とは?
用語の意味をかみ砕いて理解する
まずは言葉の意味を整理しましょう。
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養護:子どもの心身の健康や生命を守り、安心できる環境を整えること。授乳・食事・排泄・睡眠など、生活全般を支える関わりです。
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教育:遊びや生活を通じて子どもが新しい経験をし、学びを積み重ねていくこと。知識の詰め込みではなく、興味や関心を広げることが中心です。
つまり、「養護=ケア」「教育=学習」と完全に分けるのではなく、生活そのものに学びが含まれているという考え方が「養護と教育の一体的展開」です。
なぜ一体的な視点が必要なのか
子どもの発達は生活と学びが切り離せません。
たとえば、食事の場面では「食べる」という養護の側面に加え、
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食具の持ち方(身体の発達)
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食事のマナー(社会性)
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「おいしいね」と言葉を交わす(言語)
といった教育的な要素が自然に含まれています。
このように、日々の保育はすべて「養護と教育」が重なり合っているのです。
乳児期から幼児期までの切れ目のない支援
乳児期 ― 養護が中心に見えても教育は始まっている
授乳やおむつ替えは一見「養護」だけの行為に思えますが、実は教育的な関わりの宝庫です。
「気持ちよくなったね」「ミルク美味しいね」と言葉をかけることで、乳児は安心感を得て、言葉の芽生えや人との関わりの基盤を築きます。
1〜2歳 ― 自我の芽生えと生活習慣の学び
この時期の子どもは「自分で!」という気持ちが強くなります。
例えば着脱の場面では、ただ服を着せてあげるのではなく「袖はどっちかな?」と声をかけて一緒にやることで、養護(体を整える)と教育(自立心・思考力)の両方を支えることができます。
3歳以上児 ― 遊びを通して生活と学びを統合
幼児期になると、遊びが学びの中心になります。
ブロック遊びやごっこ遊びの中には、友達と協力する力(人間関係)、考える力(思考力)、表現する力(表現)がすべて含まれます。
しかし同時に、遊ぶためには安全な環境、安心できる人間関係という養護的な基盤が不可欠です。
現場でよくある誤解と課題
「養護は保育士、教育は教諭」という分担意識
認定こども園では「養護は保育士」「教育は教諭」と役割を分けてしまうことがあります。ですが要領では、保育士も保育教諭もどちらの視点も持つことが求められています。
「生活=ケア、教育=学習」という固定観念
「おむつ替えはケア」「お絵描きは教育」と単純に分けてしまうと、本来の一体的な発達支援ができなくなります。生活の中にも学びがあり、遊びの中にも安心や安全を守る養護があります。
乳児から幼児への移行で起こる支援のズレ
クラス移行時に「乳児はケア中心」「幼児は学習中心」と切り替えてしまうと、子どもの発達が途切れたように感じてしまいます。園内での引き継ぎや共通理解がとても重要です。
実践につなげる具体的なヒント
日常の生活場面を「教育的視点」で見直す
例えば着替え。
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養護:汗をかいた体を清潔に整える
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教育:服の前後を理解する、手先を動かす、自分で選ぶ
といった要素があります。これを意識するだけで、毎日の生活が学びの場に変わります。
遊びの場面を「養護的視点」で支える
外遊びでは「思い切り走る」という教育的経験がありますが、同時に「転んでも安心できる環境」「水分補給の声かけ」という養護的支えが不可欠です。
カリキュラム・マネジメントに反映する
週案や日案を作る際に「養護と教育の両方のねらい」を明記しましょう。
例:「運動遊び」→ 教育:体の使い方を学ぶ/養護:健康と安全に配慮する。
みんな悩むテーマだから大丈夫
新人の頃は「養護と教育をどう一体的にすればいいの?」と誰もが悩みます。
実際、私も1年目は「ただの着替えにどう教育的意味を見出せばいいのか」と悩んでいました。ですが、先輩と一緒に子どもの姿を観察し、「これも学びなんだ」と気づくことで少しずつ理解が深まりました。
今日からできること
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1日の活動から1つだけ「養護×教育」を意識して振り返る
→ 例:おやつ=栄養補給(養護)+食具の扱いを学ぶ(教育)。 -
先輩や同僚と「これは養護?教育?両方?」と話し合う
→ 共通理解が深まり、園全体での支援につながります。 -
保護者への説明に取り入れる
→ 「おむつ替えや食事も学びにつながっています」と伝えることで、家庭との連携や信頼構築がしやすくなります。
まとめ
「養護と教育の一体的展開」は、保育士や保育教諭にとって欠かせない視点です。乳児期の生活の中の関わりも教育であり、幼児期の遊びも養護的な支えがあってこそ成立します。
大切なのは「生活と学びを分けない」という意識です。
完璧にやろうとする必要はありません。今日からまず1つの活動を「養護と教育の両面」から振り返ってみてください。それが子どもの育ちをより深く支える第一歩になります。
次の保育から、「養護×教育」の視点で子どもの姿を見てみると、新しい気づきがあるかもしれませんね。
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