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【解説】0~5歳を見通した教育・保育 ― 年齢ごとのポイント

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0歳から5歳までの子どもは、毎年のように発達が大きく変化します。昨日までできなかったことが、ある日突然できるようになったり、言葉や人との関わり方が急に豊かになったり…。保育の現場にいると、まさに日々成長していく姿を目の当たりにしますよね。

教育・保育要領でも、0歳から5歳までの発達段階ごとに配慮すべき視点が示されています。しかし現場の保育教諭からは「実際の活動にどう結びつければいいのか分からない」「年齢ごとの要領の読み方が難しい」という声が少なくありません。

この記事では、教育・保育要領をもとに、0歳から5歳までの発達段階別のポイントを整理し、現場で押さえておきたい実践のヒントを紹介します。新人・中堅の保育教諭の方にも分かりやすく、日々の保育にすぐ役立つ内容をまとめました。

0~5歳を見通した教育・保育の基本

教育・保育要領の位置づけ

教育・保育要領は、保育所保育指針・幼稚園教育要領・認定こども園教育・保育要領を統合する形で示された国の指針です。目的は「幼児期の育ちを切れ目なく支援すること」。発達段階ごとに必要な配慮を示すことで、保育教諭が日々の保育を計画・実践しやすくしています。

「発達の連続性」を意識する大切さ

子どもの成長は「0歳=安心」「1歳=自我」「2歳=ことば」「3歳=集団」「4歳=思考」「5歳=就学」というように年齢ごとに特徴があります。しかし、それは階段のように区切られているのではなく、なだらかな坂道のように連続しています。

つまり、前の段階の育ちが次の段階につながるということ。だからこそ保育教諭には、0歳から5歳を「つながり」として見通す視点が求められるのです。

年齢ごとの発達段階と保育のポイント

0歳児 ― 安心と信頼関係がすべての基盤

0歳児保育の最重要ポイントは「安心できる大人との信頼関係」です。授乳・睡眠・排泄など、生活リズムを安定させることが第一。

実践例

  • おむつ替えの際に「気持ちいいね」と声をかける

  • 授乳時にじっと目を見て安心感を伝える

ポイント
私が担当した0歳児クラスでは、泣くことの多かった子が、保育者の抱っこに安心して少しずつ笑顔を見せるようになりました。この「安心」が後の探索活動の土台になるのです。

1歳児 ― 自我の芽生えと探索活動の広がり

「自分で!」という気持ちが強く出るのが1歳児です。探索活動を通じて、世界を広げていきます。

実践例

  • スプーンを使って自分で食べる経験を尊重する

  • 好奇心を満たすために安全な環境を整える

ポイント
「まだできないから手伝おう」と考えがちですが、失敗しても挑戦する姿を支えることが自立につながります。

2歳児 ― ことばと感情の爆発期

言葉の習得が急速に進み、同時にイヤイヤ期もピークを迎えます。

実践例

  • イヤイヤを受け止めつつ「自分で言えたね」と言葉の成長を喜ぶ

  • 友達とのやりとりで簡単なルールを経験させる

ポイント
「全部イヤ!」と泣き叫んでいた子が、やがて「これがいい」と言葉で気持ちを伝えられるようになったとき、成長の大きな一歩を感じました。

3歳児 ― 集団生活のスタート

3歳児は基本的生活習慣が自立し始め、友達と遊ぶ楽しさを知る時期です。

実践例

  • 給食の配膳や片付けを一緒に行う

  • ごっこ遊びやルールのある遊びを取り入れる

ポイント
この時期は「できる」「できない」よりも「やってみたい気持ち」を育むことが重要です。

4歳児 ― 思考や社会性の広がり

「どうして?」「なんで?」と考える力が育つ時期。協力や役割分担もできるようになります。

実践例

  • グループで工作をして「分担して作る」経験をする

  • 質問に丁寧に答え、一緒に考える姿勢を見せる

ポイント
虫の観察をしていた子どもが「どうしてカブトムシは夜に動くの?」と聞いてきました。図鑑を一緒に調べ、答えを探す過程そのものが「思考力の芽生え」につながります。

5歳児 ― 就学に向けた総合的な育ち

5歳児は「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」につながる総合的な発達が見られます。自立心や協同性、責任感が育ち、小学校への移行がスムーズになるように支援する時期です。

実践例

  • クラスで役割を決めて行事を運営する

  • 自分の考えを友達に伝え、意見を交換する

ポイント
「勉強の先取り」ではなく、「学ぶ姿勢」を育てることが大切です。

教育・保育要領を読むときの視点

「ねらい」と「内容」の違いを理解する

教育・保育要領には「ねらい」と「内容」が示されています。

  • ねらい=子どもに育ってほしい姿

  • 内容=そのために日常で経験する活動

例えば「健康な心と体を育てる」というねらいに対して、「戸外で十分に体を動かす活動」が内容です。この対応関係を理解すると、週案や日案に落とし込みやすくなります。

「指導計画」への落とし込み方

年齢ごとの要領をそのまま使うのではなく、自分のクラスの子どもに合わせて調整することが大切です。「今年の3歳児は虫に興味が強いから、自然との関わりを多めに計画しよう」といった柔軟さが求められます。

現場でのよくある悩みと解決のヒント

月齢差が大きく対応に迷う

同じ学年でも4月生まれと3月生まれでは大きな差があります。
→ 「できる子基準」ではなく、一人ひとりのペースに合わせて支援することが大切です。

活動が発達に合っているか不安

「この活動はこの年齢に合っているのか」と迷ったら、教育・保育要領を確認し、園内で共有する習慣をつけましょう。

就学を意識しすぎて焦る

小学校で困らないようにと先取りしがちですが、要領では「生活や遊びを通じた学び」を重視しています。焦らず、今の時期にふさわしい育ちを支えることが大切です。

みんな年齢ごとの保育に悩む

「この活動はこの子たちに合っているのかな?」と迷うのは自然なことです。私も新人の頃、週案を書きながら「これは発達に合っているのだろうか」と不安になったことがあります。大事なのは、一人で抱え込まず、同僚や先輩と話し合いながら学びを深めることです。

今日からできる工夫

  1. 日案に「発達段階で意識すること」を1行加える
    → 例:「1歳児:『自分で』の気持ちを受け止める」

  2. クラス内に「年齢ごとの目標」を掲示して共有する
    → 職員全員が共通理解できるようにする。

  3. 保護者とのやり取りに要領の視点を交える
    → 「今は自立心が育つ大事な時期です」と説明すると理解が深まります。

まとめ

0~5歳を見通した教育・保育は、発達段階ごとの特徴を理解し、切れ目なく支援することが大切です。教育・保育要領は、そのための道しるべです。

完璧に覚える必要はありません。今日からまず「子どもの姿を年齢ごとの視点で振り返る」ことから始めてみましょう。それが保育の深まりと子どもの豊かな成長につながります。

 

次の週案を立てるときに、「発達段階ごとに押さえる視点」を1つ加えてみると気づきが変わってくるかもしれません。

  • この記事を書いた人

かつおう

田舎の自然の中で、9歳の娘と6歳の息子をのびのびと育てるパパ。 IT × 脳科学 × 心理学を活かし、職員と子どもたちが共に成長できる園運営に取り組んでいます。 変化の速い“答えのない時代”において、職員と子どもたちが自ら考え、失敗を恐れず挑戦しながら答えを探究している、こども園の園長です。

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