毎日の保育が終わったあと、あなたはどのように振り返りをしていますか?
「今日は楽しく過ごせた」「思ったよりうまくいかなかった」…その場の感想で終わってしまい、次の保育につながらないこともあるのではないでしょうか。
実は、振り返りを「教育・保育要領」に照らすだけで、子どもの育ちをより深く見取り、翌日の計画や週案・日案に確実につなげることができます。
振り返りの欄に「元気に遊んでいた」とだけ書いて提出して、主幹から「それだと次にどう生かすかが分からないよ」とアドバイスを受けてませんか?「5領域」や「10の姿」を意識して書くようにしてみると、計画と実践が自然と結びつき、保育の見通しが持てるようになってきます。
この記事では、教育・保育要領を軸にした振り返りの方法を具体的に解説し、日常の簡単な実践例から園内研修での活用までをご紹介します。
教育・保育要領を軸に振り返る意味
要領は「子どもの育ちを見る物差し」
教育・保育要領は、国が定める保育の基本方針です。「健康」「人間関係」「環境」「言葉」「表現」の5領域と、「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」が示されており、子どもの成長を多面的に捉える物差しのような存在です。
振り返りをこの要領に照らすと、「今日は楽しかった」で終わるのではなく、「協同性が育っている」「思考力の芽生えが見られた」といった具体的な気づきに変わります。
「ねらい」と「内容」を意識することで深まる振り返り
要領には「ねらい(育ってほしい力)」と「内容(経験する活動)」が示されています。
振り返りの際、「今日の活動はねらいにつながっていたか」「内容が子どもに合っていたか」を意識することで、計画の質も高まります。
振り返りが保育の質向上につながる理由
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子どもの姿を言語化できるようになる
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計画と実践のズレに気づける
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園全体で共通理解を持ちやすくなる
日々の保育に取り入れられる簡単な振り返り方法
一言メモ法 ― 活動ごとに子どもの姿を残す
保育終了後に長文を書くのは大変です。おすすめは「一言メモ」。
例:「鬼ごっこでルールを守ろうとしていた(協同性)」「お片付けを友達に声かけしていた(自立心)」
→ 簡潔に書くことで続けやすく、あとから要領と結びつけやすくなります。
5領域チェック ― 今日の活動はどの領域?
活動を終えた後に「健康・人間関係・環境・言葉・表現」の5領域のどれに当てはまるかを○でチェックする方法です。
例:製作遊び → 表現・思考力、友達との協力 → 人間関係
→ 見落としていた子どもの育ちに気づくことができます。
「10の姿」対応付け ― 子どもの行動を照らしてみる
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を振り返りに使うと、子どもの成長を長期的に見通すことができます。
例:「今日の給食では苦手な野菜に挑戦した」→ 健康な心と体・自立心
写真活用 ― 記録より視覚で残す
文字にするのが苦手な場合、活動中の写真を残すのも有効です。職員会議や研修で「この場面はどの領域・どの姿につながるか」と話し合うと共通理解が深まります。
週案・日案に振り返りを生かすコツ
評価欄を「できた/できない」ではなく「次への提案」にする
NG:「マラソンを楽しんでいた」
OK:「最後まで走り切った達成感が見られた。次回は距離を少し伸ばして挑戦心を育てたい」
子どもの具体的なエピソードを短く記す習慣
「誰が」「どんな姿を見せたか」を具体的に書くことで、後から見返したときに活用しやすくなります。
次の週の計画に1つだけ改善点を反映する
振り返りで見つけたことをすべて改善する必要はありません。まずは1つだけ取り入れることで、計画が現実的になります。
園内研修での活用方法
事例共有 ― 要領のどの項目に当てはまるかを話し合う
日常の活動写真や動画を持ち寄り、「これはどの領域?どの姿?」と分析するワークは効果的です。
振り返りワーク ― 子どもの姿を深く掘り下げる
同じ場面を見ても、保育者によって捉え方はさまざま。意見交換を通じて視点が広がります。
共通理解づくり ― 職員間で同じ視点を持つ
園内研修で「要領に基づく振り返り」をテーマにすれば、全員が同じ基準で子どもの育ちを見られるようになります。
現場でよくある悩みと解決のヒント
振り返りが時間的に負担になる
→ 長文は不要。まずは一言メモやチェックリストから始める。
要領の言葉が難しくて使いにくい
→ 「協同性」=「友達と一緒に遊ぶ力」など、わかりやすい言葉に置き換える。
振り返りが形式的になってしまう
→ 子どもの姿を出発点にする。「今日は〇〇ちゃんがこんなことをした」から始めれば自然と具体的になります。
振り返りに悩むのは自然なこと
「毎日忙しくて振り返りどころじゃない」と感じるのは誰でも同じです。私自身も新人時代は、子どもの片付けに追われ、振り返りは形だけでした。ですが、先輩が「まずは一言でいいんだよ」と教えてくれてから、少しずつ習慣化できました。多くの保育教諭が同じ壁を経験しています。
今日からできる小さな一歩
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1日1回、子どもの姿を要領に照らしてメモする
→ 例:「友達に玩具を貸していた → 協同性」 -
週1回、同僚と「この子の姿」を要領に沿って共有する
→ 短時間でも話すだけで視点が広がります。 -
園内研修で「要領を活かした振り返り」をテーマに取り上げる
→ 写真や動画を使えば具体的に議論できます。
まとめ
教育・保育要領を軸にした振り返りは、子どもの育ちを深く見取り、次の保育へつなげる大切な習慣です。難しく考える必要はなく、まずは「子どもの姿を要領に照らして一言書く」ことから始めれば十分です。
園全体で共通の視点を持つことで、保育の質は確実に高まります。
今日から、あなたの振り返りに「5領域」や「10の姿」を一つ取り入れてみませんか? それが子どもの育ちをより確かに支える第一歩になるのかもしれません。
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