「園内研修はあるけれど、どうしても形だけになってしまう」
「教育・保育要領は大切だと分かっているけれど、読み合わせで終わってしまう」
こんな声を先生方からよく耳にします。保育園やこども園にとって、園内研修は職員全体で共通理解を深め、保育の質を向上させる大切な機会です。しかし忙しい日々の中で研修を充実させるのは簡単なことではありません。
そんなときに役立つのが 教育・保育要領を園内研修のテーマにすること です。要領を実際の保育にどうつなげるかを話し合うことで、先生同士の意見交換が活発になり、子どもへの関わりもより一貫したものになります。
この記事では、園内研修で教育・保育要領を活用する具体的な方法や、話し合いを深める工夫、実際の活用事例を紹介します。読み終えるころには「次の園内研修で試してみたい」と思えるヒントがきっと見つかるはずです。
園内研修と教育・保育要領の関係
教育・保育要領とは?
教育・保育要領は、国が定めた保育・教育の基本的な方針や目標をまとめたものです。保育所保育指針や幼稚園教育要領、認定こども園教育・保育要領がこれにあたり、保育現場の「共通言語」となる役割を持っています。
園内研修で扱う意義
園内研修で要領を活用することには、以下の意義があります。
職員全体で共通理解をもてる
子どもの育ちを見る視点を揃えられる
保護者さんへの説明や連携がスムーズになる
ある園では、職員同士の保育観がバラバラで、活動の意図を共有しにくい状況がありました。しかし要領をベースに研修を進めることで「園として大切にしたい方向性」が見えるようになり、職員間の会話がぐっと変わったといいます。
実践と要領をつなげる大切さ
単に要領を読むだけでは「教科書をなぞった時間」になりがちです。要領を「現場での実践」とつなげて考えることで初めて意味をもちます。たとえば「協同性」という言葉を、子ども同士のやりとりのエピソードに当てはめて考えると、先生同士の理解も深まります。
現場でよくある悩み
研修が形骸化してしまう
「読むだけ」「確認だけ」の研修では、学びが深まりません。先生方からも「眠くなってしまう」という声が出ることもあります。
実践に結びつかない
要領の言葉は難しく感じられ、保育にどう活かすのか分かりにくいことがあります。そのため「理論と実践がつながらない」という課題を感じる先生も多いです。
保育観のズレ
「子どもを見取る視点」が先生ごとに違うため、同じ子を評価しても意見が分かれることがあります。園内研修で視点を揃えることは、こうしたズレを減らすためにも重要です。
園内研修で教育・保育要領を活用する方法
要領を「自分たちの言葉」に置き換える
要領の文章は抽象的で分かりにくいこともあります。そこで「自分たちの園での日常に置き換える」ことが大切です。例えば「自立心を育てる」という言葉を「子どもが自分の靴を揃えようとする姿」と具体的にイメージすると理解が深まります。
日々の保育場面と結びつける
先生がそれぞれ「最近の保育で見た子どもの姿」を持ち寄り、要領の観点から考えると効果的です。ある園では「砂場で年長児が年少児を助けていた姿」を題材に、「協同性」と「思いやり」の視点で意見を交わしました。
小グループでディスカッション
全体での意見交換は声が出にくい場合があります。3~4人の小グループで話し合い、その後全体に共有すると、多様な視点が出やすくなります。
翌日からの実践につなげる
研修で話したことを「明日から試してみること」に落とし込むと効果的です。「子どもの言葉をできるだけそのまま記録してみる」など、シンプルな行動目標が望ましいです。
話し合いを活発にする工夫
ファシリテーターを置く
進行役を決めておくと、話が脱線せずにスムーズに進みます。特に若手職員が安心して発言できる雰囲気づくりが大切です。
「問いかけ」を用意する
「今日の保育で『主体性』を感じた場面はありましたか?」など、具体的な問いを設定すると議論が深まります。
付箋やホワイトボードで見える化
意見を付箋に書き出して模造紙に貼ると、視覚的に共有でき、達成感も生まれます。
教育・保育要領を活用した園内研修の事例
年齢ごとのねらいと実践を照らし合わせる
ある園では「3歳児のねらい」をテーマに、先生たちが各クラスでの実例を持ち寄りました。「自分の思いを言葉で伝える姿」を、要領の言葉に沿って整理することで、子どもを見る目が揃ったといいます。
「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を考える
年長児を送り出す時期に「10の姿」を研修テーマにしました。「挑戦する子ども」という言葉を、縄跳びに挑戦する姿や、苦手な発表に手を挙げた姿と結びつけることで、共通理解が広がりました。
保護者さんとの関わりに活かす
「要領の言葉を保護者さんへの説明にどう使うか」をテーマにした研修もあります。「協同性」を「友だちにブロックを貸せた」という事例に置き換えて伝えると、保護者さんにも分かりやすく納得感が得られました。
園内研修を継続的に活かすために
振り返りシートを共有する
研修の感想や明日から試したいことを一人ひとりが書き、職員室に掲示することで学びが広がります。
日々のカンファレンスとつなげる
研修だけで終わらせず、日常のカンファレンスやミーティングで続けて話題にすることで定着します。
保育計画や環境構成に反映する
研修で出た意見を「保育計画の見直し」や「遊びの環境づくり」に反映させると、実感を伴った改善につながります。
先生に伝えたいこと
研修は「評価の場」ではない
園内研修は誰かの正解を探す時間ではなく、お互いに学び合う時間です。失敗談も含めて話せる環境が理想です。
要領を通じて「子どもの姿を見る視点」を共有する
要領の言葉を土台にすると、先生同士の保育観が揃い、子どもを見る目が一貫してきます。
小さな一歩を積み重ねる
研修で出た一つの工夫を次の日の保育に取り入れることが、長期的に園の力を高めていきます。
まとめ
園内研修で教育・保育要領を活用することは、職員間の共通理解を深める大切な方法。
ただ読むのではなく、保育の実践と結びつけることが重要。
話し合いを活発にする工夫や、実際の活用事例を取り入れることで研修が充実する。
研修は「子どもを見る視点」を揃え、園全体で保育の質を高める機会となる。
次回の園内研修で、教育・保育要領の一文を取り上げ、日常の子どもの姿と結びつけてディスカッションしてみませんか? 先生方の保育観が揃い、共通理解が深まる研修となるといいですね。