教育・保育要領には「カリキュラム・マネジメント」という言葉が繰り返し登場します。ですが現場の先生方からは「大切なのは分かるけれど、結局どうすればいいの?」という声もよく聞かれます。
特に日案や週案に追われる中で、計画や評価が「とりあえず書くもの」になってしまいがちです。気が付くと指導計画をただ埋める作業のように感じ、そこに子どもたちの育ちをどう反映させるか迷っている姿を見かけます。
けれども経験を重ねる中で見えてくるのは、カリキュラム・マネジメントは保育士一人の作業ではなく、園全体で子どもの育ちを支える仕組みなのだということです。そして、それを実現するのが「チーム保育」です。
この記事では、教育・保育要領に基づくカリキュラム・マネジメントをわかりやすく解説し、園全体で要領を生かす具体的な方法を紹介します。
カリキュラム・マネジメントとは?
教育・保育要領での定義
教育・保育要領は、幼児期の教育を「生活や遊びを通して行う」と示し、保育の質を高める仕組みとして「カリキュラム・マネジメント」を位置づけています。
これは単なる計画づくりではなく、
計画(年間指導計画・月案・週案・日案)
実践(日々の保育)
評価(子どもたちの姿を見取る)
改善(課題を次の計画に反映する)
このサイクルを園全体で回し続ける取り組みを意味します。
一人ではなく園全体で取り組む理由
例えば「遊びの中で協同性が育っている」と見取る先生もいれば、「まだ一人遊びが多い」と見る先生もいます。視点は人によって違うからこそ、複数の職員が子どもたちの姿を共有し合うことが欠かせません。
チーム保育とカリキュラム・マネジメントの関係
共通理解を持つことの大切さ
チーム保育では担任だけでなく、補助の先生、フリー保育士、さらには調理や事務を担当する職員も含めて、園全体で子どもに関わります。そのため、共通理解を持って関わることが子どもたちの育ちを支えます。
同僚との対話で広がる気づき
ある先生が給食を食べ渋る子にどう対応すべきか悩んでいました。ところが別の先生は「外でしっかり遊んだ日はよく食べています」と気づいていました。この悩みを共有したことで、活動量と食欲の関係に気づき、計画を改善できました。
役割分担で持続可能に
記録を若手が担当し、振り返りをベテランがまとめる、というように役割を分担することで、負担が減り、チーム全体で取り組みやすくなったりします。
園全体で要領を生かす仕組みづくり
年間指導計画を園全体で見直す
4月に作った年間指導計画は、一度立てて終わりではありません。子どもたちの姿に合わせて定期的に修正し、園全体で確認することが大切です。
週案・日案をチームで共有する
週案や日案は「提出するためのもの」ではなく、保育を共有するツールです。短時間でも同僚と「今日のねらい」を声に出して確認するだけで、全員が同じ視点で保育に取り組めます。
評価と改善を職員会議で話し合う
週に一度でも子どもの姿を持ち寄って話し合うことで、「評価が形だけ」になるのを防げます。
保護者さんと連携する
園内だけで完結するのではなく、保護者さんに「園ではこのようなねらいを持っています」と伝えると、家庭との一貫性が生まれ、育ちがより確かになります。
よくある悩みと工夫のヒント
評価が形骸化してしまう
「◯か×か」で終わらせず、エピソードを記録しましょう。
例:「ボール遊びで泣いていた子が、自分から参加して友達と笑顔を見せた」
職員ごとに見取りが違う
要領にある「10の姿」や「5領域」の言葉を共通言語にすると、判断のズレが少なくなります。
振り返りの時間が取れない
活動後に3分だけ「今日の気づき」を共有する“立ち話ミーティング”でも十分です。
安心して取り組める仕組みにするために
若手も意見を出せる雰囲気づくり
ベテランは答えを教えるのではなく一緒に考える姿勢
チームで補い合う文化を育てる
こうした仕組みがあると、園全体で持続的に取り組めるようになります。
日々の小さな実践例
連絡帳に「要領の視点」を一言添える
子どもたちの遊びを写真で記録し、会議で共有する
同僚と「今日のねらい」を口に出して確認する
小さな積み重ねがカリキュラム・マネジメントの実践につながります。
仲間がいる安心感
「自分のやり方でいいのだろうか」と悩むことは自然なことです。むしろ、子どもたちの育ちを大切に考えている証拠です。同僚と悩みを分かち合うことで「自分だけじゃない」と安心でき、新しい視点に気づくこともあります。
さらに学びを深めたい先生方へ(おすすめの本)
現場での実践をより豊かにするために、以下の本もおすすめです。
「幼保連携型認定こども園教育・保育要領解説」 ― 要領の基礎理解に
「対話的保育カリキュラム(上) 理論と構造」 ― 対話を基盤に保育実践を組み立てる
「保育の質を高めるチームづくり 園と保育者の成長を支える」 ― チームでの工夫を知る
まとめ
カリキュラム・マネジメントは教育・保育要領に基づき、計画・実践・評価・改善を園全体で循環させる仕組みです。一人で抱えるのではなく、チーム保育として仲間と共に進めることで、子どもたちの育ちは確かに支えられます。
大切なのは、完璧を目指すことではなく、今日気づいた一つの子どもの姿を仲間と共有することです。
今日からまず、同僚と子どもたちの小さなエピソードを共有し、次の計画に活かす習慣をつけてみるといいですね。