保育

【解説】カリキュラム・マネジメントとチーム保育 ― 園全体で要領を生かす仕組みづくり

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保育の現場で、こんな悩みを感じることはありませんか。

「要領を大切にしたいけれど、日々の保育とどうつなげればよいかわからない」
「クラスごとに保育の進め方が違い、園全体としての方向性がそろいにくい」
「チーム保育と言いながら、結局は担任任せになっている」
「指導案や記録が、書くだけで終わってしまっている」
「園内研修をしても、日々の保育改善につながりにくい」

カリキュラム・マネジメントという言葉を聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
しかし、保育現場で大切なのは、特別な仕組みを増やすことではなく、子どもの姿をもとに、園全体で保育を見直し、次の実践につなげていくことです。

そして、そのためには一人の保育士だけが頑張るのではなく、チーム保育として、職員同士が同じ方向を向いて子どもの育ちを支える仕組みが必要です。

この記事では、カリキュラム・マネジメントとチーム保育の基本を整理しながら、園全体で要領を生かす仕組みづくりについて、やさしく解説します。

カリキュラム・マネジメントとチーム保育を理解する

カリキュラム・マネジメントとは何か

カリキュラム・マネジメントとは、保育の計画を作って終わりにするのではなく、子どもの姿を見取り、保育を実践し、振り返り、次の環境づくりや援助につなげていく考え方です。

つまり、指導案や年間計画を「書類」として扱うのではなく、子どもの育ちを支えるために生かしていくことが大切になります。

保育の中では、計画通りに進まないことがたくさんあります。
子どもの興味が広がったり、予定していた活動よりも別の遊びに夢中になったりすることもあります。

そのときに、計画から外れたと見るのではなく、子どもの姿から保育を見直すことが、カリキュラム・マネジメントの大切な視点です。

チーム保育とは担任だけに任せない保育

チーム保育とは、担任や一部の職員だけが保育を考えるのではなく、園全体で子どもの育ちを支える考え方です。

クラス担任、フリー保育士、主任、主幹、園長、看護師、栄養士、事務職員など、それぞれの立場から子どもを見守り、情報を共有しながら支えていきます。

保育は、担任一人の力だけで成り立つものではありません。
子どもは園全体の中で育っています。

だからこそ、チーム保育では、子どもの姿、保育のねらい、援助の方向性を職員同士で共有することが大切です。

要領を現場に生かすとはどういうことか

幼保連携型認定こども園教育・保育要領や保育所保育指針、幼稚園教育要領は、保育の根拠となる大切なものです。

ただし、要領を読むだけでは、現場の保育は変わりません。

大切なのは、要領に書かれている考え方を、目の前の子どもの姿と結びつけることです。

たとえば、子どもが友だちと協力して遊びを進めている姿を見たとき、そこには協同性、言葉による伝え合い、思考力の芽生えなど、さまざまな育ちが含まれています。

要領を現場に生かすとは、こうした子どもの姿を見取り、保育の意味を職員同士で共有し、次の実践に生かしていくことです。

現場で起こりやすい悩み

クラスごとに保育の考え方がそろわない

園の中で、クラスごとに保育の進め方や考え方が大きく違うことがあります。

あるクラスでは子どもの主体性を大切にしている。
別のクラスでは大人主導で活動を進めている。
ある先生は環境を重視している。
別の先生は一斉活動を中心にしている。

もちろん、クラスの年齢や子どもの姿によって保育が違うのは自然なことです。
しかし、園として大切にしたい方向性が共有されていないと、子どもの経験に大きな差が出てしまうことがあります。

カリキュラム・マネジメントは、園全体で保育の方向性を確認するためにも大切です。

指導案や記録が書くだけで終わる

保育現場では、指導案や記録に多くの時間を使います。

しかし、忙しさの中で、書類を作ること自体が目的になってしまうことがあります。

本来、指導案や記録は、子どもの姿を理解し、保育をよりよくするためのものです。

「何を書けばよいか」だけでなく、
「書いた内容をどう保育に生かすか」
「記録から何が見えてきたか」
「次の環境や援助をどう変えるか」
を考えることが大切です。

書類を保育改善につなげる視点があると、カリキュラム・マネジメントは現場で生きたものになります。

情報共有がその場限りになりやすい

保育中の気づきや子どもの変化は、日々たくさんあります。

「今日はこの子が友だちに自分から声をかけていた」
「昨日まで嫌がっていた活動に少し参加できた」
「午睡前に不安定になりやすい姿が続いている」

このような気づきは、保育を考えるうえで大切な情報です。

しかし、忙しい現場では、口頭で少し話して終わってしまうことがあります。
共有したつもりでも、関係する職員全員に伝わっていないこともあります。

チーム保育を進めるには、情報共有をその場限りにせず、記録や会議、短い打ち合わせなどにつなげる仕組みが必要です。

園内研修が実践につながりにくい

園内研修を行っても、その後の保育があまり変わらないことがあります。

研修でよい話を聞いた。
資料も共有した。
でも、日々の保育にどう落とし込めばよいかわからない。

このような悩みは、多くの園で起こりやすいものです。

園内研修を実践につなげるためには、学んだ内容を自園の子どもの姿や保育の課題と結びつけることが大切です。

「自分のクラスではどう生かせるか」
「園全体で何を見直すか」
「次の職員会議で何を振り返るか」

ここまでつなげることで、研修がカリキュラム・マネジメントの一部になります。

園全体で要領を生かす仕組みづくり

子どもの姿を中心に話し合う

カリキュラム・マネジメントで大切なのは、書類や行事予定からではなく、子どもの姿から保育を考えることです。

職員会議やクラス会議では、まず子どもの具体的な姿を共有します。

「最近、どのような遊びに夢中になっているか」
「どの場面で友だちとの関わりが広がっているか」
「生活の中で困っている姿はあるか」
「環境を変えたことで、子どもの姿はどう変わったか」

このような問いをもとに話し合うと、要領の内容が現場の保育とつながりやすくなります。

要領を先に読むだけでなく、子どもの姿を見たあとに要領に戻ることで、保育の意味がより具体的に見えてきます。

年間計画・月案・週案をつなげる

カリキュラム・マネジメントでは、年間計画、月案、週案、日々の記録がばらばらにならないことが大切です。

年間計画には、園として大切にしたい育ちの方向性があります。
月案や週案には、その時期の子どもの姿に応じたねらいや環境構成があります。
日々の記録には、実際の子どもの姿や保育士の援助が残ります。

これらがつながっていると、保育の流れが見えやすくなります。

反対に、それぞれが別々の書類になっていると、計画と実践が離れてしまいます。

月案を作るときには、前月の記録を見直す。
週案を考えるときには、今の子どもの興味を反映する。
日々の記録から、次の環境づくりを考える。

この循環を意識することが、園全体で要領を生かす仕組みづくりにつながります。

チームで保育を振り返る時間をつくる

チーム保育を進めるには、職員同士で保育を振り返る時間が必要です。

長い会議でなくてもかまいません。
短時間でも、子どもの姿を共有し、次の関わりを確認する時間があるだけで、保育は変わります。

たとえば、次のような振り返りができます。

「今日、子どもが一番夢中になっていた遊びは何か」
「困っていた子に、どのような援助が合っていたか」
「環境を少し変えるとしたら、どこを見直すか」
「明日、チームとして意識したい関わりは何か」

こうした小さな振り返りを積み重ねることで、担任任せではない保育が育っていきます。

園内研修を保育改善につなげる

園内研修は、知識を学ぶだけで終わらせるともったいないものです。

研修後には、実際の保育にどう生かすかを職員同士で考えることが大切です。

たとえば、要領について学んだあとには、
「自分たちの園で大切にできていることは何か」
「まだ課題がある部分はどこか」
「明日から変えられる小さな実践は何か」
を話し合います。

研修、実践、記録、振り返りがつながると、園内研修はカリキュラム・マネジメントを支える大切な機会になります。

チーム保育を進めるための具体的な工夫

会議の目的を明確にする

チーム保育を進めるうえで、会議は大切です。
しかし、ただ情報を伝えるだけの会議では、保育改善につながりにくいことがあります。

会議では、目的を明確にすることが大切です。

「共有するための会議なのか」
「課題を整理する会議なのか」
「保育の方向性を決める会議なのか」
「子どもの見取りを深める会議なのか」

目的がはっきりすると、話し合いの質が変わります。

特に、カリキュラム・マネジメントに関わる会議では、子どもの姿、要領の視点、次の実践をつなげることを意識するとよいでしょう。

記録をチームで見合う

保育記録は、担任だけのものにしておくともったいないです。

子どもの姿や保育士の気づきをチームで見合うことで、別の視点が加わります。

「この姿は協同性にもつながっているね」
「環境を変えたことが、子どもの主体性につながっているかもしれない」
「この子は安心できる大人が近くにいると遊びに向かいやすいね」

このように、記録をもとに話すことで、要領と実践がつながりやすくなります。

また、若手保育士にとっても、記録を見合うことは学びになります。
一人で悩むのではなく、チームで子どもの見取りを深めることができます。

役割分担を固定しすぎない

チーム保育では、役割分担が大切です。
ただし、役割を固定しすぎると、保育が分断されることがあります。

「担任だけが子どもの姿を把握している」
「フリー保育士は補助だけになっている」
「主任は困ったときだけ入る」
「園長は書類確認だけをする」

このようになると、園全体で子どもを支える仕組みにはなりにくいです。

それぞれの役割を大切にしながらも、子どもの姿や保育のねらいを共有し、必要に応じて柔軟に関わることが大切です。

小さな改善を積み重ねる

カリキュラム・マネジメントというと、大きな改革をしなければならないように感じるかもしれません。

しかし、実際には小さな改善の積み重ねが大切です。

保育室の環境を少し変える。
記録の書き方を少し見直す。
会議で子どもの姿を一つ共有する。
園内研修後に、明日試すことを一つ決める。
月案を作る前に、前月の子どもの姿を振り返る。

このような小さな工夫が、園全体の保育を少しずつ変えていきます。

注意点やデメリットも知っておきたい

仕組みを増やしすぎると負担になる

カリキュラム・マネジメントを進めようとして、会議、記録、チェック表、振り返りシートなどを増やしすぎると、職員の負担が大きくなることがあります。

大切なのは、書類や会議を増やすことではありません。
子どもの姿をもとに、保育をよりよくすることです。

新しい仕組みを入れるときは、
「本当に保育改善につながるか」
「職員の負担が大きすぎないか」
「続けられる方法か」
を考える必要があります。

要領をチェックリストのように扱わない

要領は、子どもを評価して点数をつけるためのものではありません。

「この姿ができている」
「この領域が足りない」
という見方だけになると、子どもの育ちを狭く捉えてしまうことがあります。

要領は、子どもの姿を理解し、保育の方向性を考えるための手がかりです。

チーム保育の中でも、要領を押しつけるのではなく、子どもの育ちを語り合うための共通言語として使うことが大切です。

職員間で温度差が出ることがある

カリキュラム・マネジメントやチーム保育を進めようとすると、職員間で温度差が出ることがあります。

「今までのやり方でよいのではないか」
「新しいことを増やされると負担」
「要領の話は難しい」
「忙しくて振り返る時間がない」

このような声が出ることも自然です。

大切なのは、急に変えようとしないことです。
なぜ必要なのかを丁寧に共有し、小さく始めることが、園全体で続けていくためのポイントです。

よくある質問

カリキュラム・マネジメントは園長や主任だけが考えるものですか?

いいえ。園長や主任だけでなく、保育士一人ひとりに関わるものです。

もちろん、園全体の方向性を整える役割は管理職やリーダーにあります。
しかし、日々子どもと関わり、姿を見取っているのは現場の保育士です。

子どもの姿を共有し、保育を振り返り、次の環境や援助を考えることは、すべてカリキュラム・マネジメントにつながります。

チーム保育を進めるには何から始めればよいですか?

まずは、子どもの姿を共有することから始めるとよいでしょう。

難しい仕組みを作る前に、
「今日気になった子どもの姿」
「うまくいった援助」
「明日少し変えてみたい環境」
を短く話し合うだけでも、チーム保育は進みます。

小さな共有を続けることで、園全体で子どもを支える意識が育っていきます。

要領を読む時間がなかなか取れません

忙しい現場では、要領を最初から最後まで読む時間を取るのは難しいことがあります。

その場合は、日々の保育で気になった場面から要領に戻る方法がおすすめです。

たとえば、友だちとの関わりが広がっている場面なら「人間関係」や「協同性」、自然物への興味が深まっている場面なら「環境」や「思考力の芽生え」とつなげて読んでみます。

必要なところから少しずつ読むことで、要領が現場とつながりやすくなります。

園内研修で扱う場合はどう進めればよいですか?

園内研修では、要領の説明だけで終わらせず、自園の子どもの姿に置き換えて話し合うことが大切です。

たとえば、写真や記録を使って、
「この姿にはどのような育ちがあるか」
「次にどんな環境を用意するとよいか」
「チームとしてどう関わるか」
を話し合うと、実践につながりやすくなります。

関連書籍で学びを深める

要領を根拠から理解したい方へ

カリキュラム・マネジメントとチーム保育を進めるためには、まず要領の考え方を理解することが大切です。

日々の保育で迷ったとき、要領の解説書が手元にあると、保育の根拠を確認しやすくなります。

園全体で要領を生かす仕組みづくりを進めたい方は、まず基本となる解説書を一冊持っておくと安心です。

園内研修や職員会議で、保育の根拠を共有したい方におすすめです。

カリキュラム・マネジメントを実践に落とし込みたい方へ

子どもが環境や人、自分自身と関わりながら育つ保育を深く考えたい方におすすめの一冊です。対話的保育カリキュラムの理論と構造、生成発展カリキュラムの考え方などが扱われており、子どもの姿から保育を組み立てる視点を学べます。計画ありきではなく、子どもの対話や探究を大切にした保育を見直したいときに役立ちます。

子どもとの対話を基盤に保育実践を組み立てたい方におすすめです。

チーム保育や園内研修を深めたい方へ

チーム保育を進めるには、職員同士で同じ視点を持つことが大切です。

園内研修や保育の振り返りに使える本があると、話し合いの土台ができます。

特に、子どもの見取り、10の姿、環境構成、保育記録、職員間の連携を扱う本は、園全体で学びを深めるきっかけになります。

担任任せにせず、園全体で保育を考える文化をつくりたい方におすすめです。

まとめ:これから試してみたい工夫

カリキュラム・マネジメントとチーム保育は、難しい仕組みを増やすことではありません。
子どもの姿をもとに、保育を見直し、園全体で要領を生かしていくための考え方です。

これから試してみたい工夫は、次の4つです。

・子どもの具体的な姿を職員同士で共有する
・指導案や記録を、書くだけでなく次の保育につなげる
・園内研修で学んだことを、自園の子どもの姿に置き換える
・要領を、保育を語り合うための共通言語として使う

保育は、一人で抱えるものではありません。
担任、フリー保育士、主任、主幹、園長など、それぞれの立場から子どもを見取り、支え合うことで、園全体の保育は少しずつ深まっていきます。

要領に基づいた保育を実践したい方、チーム保育をよりよくしたい方、園内研修や記録を保育改善につなげたい方は、関連書籍を手元に置きながら、日々の保育とつなげて学びを深めてみてください。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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