
保育の現場で、こんな悩みを感じることはありませんか。
「子どもたちが落ち着かず、いつも部屋の中がざわざわしている」
「一斉に動かす保育になってしまい、一人ひとりに合わせる余裕がない」
「噛みつきやトラブルが起きるたびに、どう支援すればよいか迷う」
「環境づくりを見直したいけれど、何から始めればよいかわからない」
保育士は毎日、子どもたちの安全を守りながら、生活、遊び、食事、排泄、午睡、保護者対応、記録など、たくさんのことに向き合っています。
その中で、「もっと子どもが心地よく過ごせる保育にしたい」と思っていても、日々の忙しさに追われてしまうことがあります。
そんな保育士さんにとって、書籍『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は、保育実践を見直すための大きなヒントになる一冊です。
この記事では、『保育の中に心地よい暮らしをつくる』から学べる環境づくりと支援方法を、保育現場で実践しやすい形でやさしく解説します。
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』をチェックする
書籍『保育の中に心地よい暮らしをつくる』とは
子どもが幸せに過ごす保育を考える一冊
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は、日々の保育の中で、子どもが安心して、心地よく、自分らしく過ごすための保育実践を考える本です。
著者はユリアさんで、出版社はかもがわ出版です。書籍情報として、A5判、104ページ、2020年10月発売と紹介されています。
本書では、子どもたちを一斉に動かすのではなく、一人ひとりを大切にする保育の手立てが具体的に提案されています。出版社の紹介では、一斉での食事や排泄をやめることなど、集団の中で一人ひとりを大切にする保育の手立てを扱う内容とされています。
「心地よい暮らし」は特別な保育ではない
「心地よい暮らし」と聞くと、特別な園だけができる保育のように感じるかもしれません。
しかし、本当に大切なのは、毎日の保育の中にある小さな場面を見直すことです。
食事の時間は、子どもにとって落ち着ける時間になっているでしょうか。
排泄は、子どものペースや気持ちを大切にできているでしょうか。
室内環境は、子どもが自分で遊びを選び、安心して過ごせる場になっているでしょうか。
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は、こうした日常の当たり前を見つめ直すきっかけを与えてくれます。
保育実践を変えたい保育士に向いている理由
本書は、「今の保育を少しでもよくしたい」と考えている保育士さんに向いています。
大きな改革をしなければならない、というよりも、子どもの姿を丁寧に見ながら、環境や支援方法を少しずつ変えていく視点を学べるからです。
また、子どもの権利や、一人ひとりを大切にする保育について考えるきっかけにもなります。
保育実践を変えるためには、技術だけでなく、「子どもをどう見るか」という考え方が大切です。
子どもが安心して過ごせる環境づくりや、一人ひとりを大切にする支援方法を学びたい保育士さんにおすすめの一冊です。
保育士が環境づくりで抱えやすい課題
部屋が落ち着かず、子どもが走り回ってしまう
保育室の中で子どもが走り回ると、「走らないよ」「危ないよ」と声をかける場面が増えます。
もちろん、安全のための声かけは必要です。
しかし、子どもが走り回る背景には、環境の影響がある場合もあります。
遊び込める場所が少ない。
動線が広く空きすぎている。
玩具が多すぎて選びにくい。
落ち着ける空間がない。
このような環境では、子どもは自分の居場所を見つけにくくなります。
保育実践を変えるためには、子どもを注意する前に、まず環境を見直すことが大切です。
一斉保育になりやすく、一人ひとりのペースを大切にしにくい
保育現場では、時間で区切って動く場面が多くあります。
みんなで片づける。
みんなでトイレに行く。
みんなで食事を始める。
みんなで午睡に入る。
集団生活の中では、ある程度の流れは必要です。
けれど、すべてを一斉に進めようとすると、子ども一人ひとりの気持ちや発達の違いが見えにくくなることがあります。
まだ遊びたい子。
少し休みたい子。
食事のペースがゆっくりな子。
トイレに誘われることを嫌がる子。
その姿には、それぞれ理由があります。
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』の考え方は、集団の中でも一人ひとりを大切にする保育を考える助けになります。
噛みつきやトラブルへの対応に迷う
乳児クラスや低年齢児クラスでは、噛みつきやひっかき、玩具の取り合いなどが起きることがあります。
そのたびに、「また起きてしまった」「どうして止められなかったのだろう」と悩む保育士さんも多いと思います。
子どものトラブルには、言葉で伝えられないもどかしさ、眠さ、空腹、遊びたい気持ち、近くに大人がいない不安など、さまざまな背景があります。
支援方法を考えるときには、「その場でどう止めるか」だけでなく、「なぜその行動が起きたのか」を見取ることが大切です。
子どもの主体性を大切にしたいが、現場で実践しにくい
子どもの主体性を大切にしたいと思っていても、保育現場では難しさがあります。
安全面が心配。
時間に追われる。
職員間で考え方に差がある。
保護者さんにどう説明すればよいか迷う。
このような理由から、結果的に大人が決め、大人が指示し、子どもが従う保育になってしまうことがあります。
しかし、子どもが自分で選び、試し、考え、安心して過ごせる環境を整えることは、保育の質を高めるうえでとても大切です。
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』から学ぶ環境づくり
子どもが自分で選べる環境をつくる
心地よい保育環境を考えるとき、大切なのは「子どもが自分で選べるかどうか」です。
どこで遊ぶか。
何で遊ぶか。
誰と過ごすか。
少し休むか。
もう一度やってみるか。
子どもが自分で選べる環境には、安心感があります。
もちろん、何でも自由にしてよいという意味ではありません。
安全を守りながら、子どもが自分で考え、動ける余白をつくることが大切です。
たとえば、玩具を子どもの手が届く場所に置く。
遊びのコーナーをわかりやすく分ける。
一人で落ち着ける場所を用意する。
片づけの場所を写真や表示でわかりやすくする。
このような小さな工夫が、子どもの主体性を支えます。
くつろげる空間を大切にする
保育室は、遊ぶ場所であると同時に、子どもが一日を過ごす生活の場です。
大人でも、ずっとにぎやかな場所にいると疲れます。
子どもも同じです。
心地よい暮らしをつくるためには、静かに過ごせる場所、絵本を見られる場所、少人数で遊べる場所、体を休められる場所が必要です。
保育室全体を大きな一つの空間として使うのではなく、子どもの生活に合わせて空間を分けることで、落ち着きやすくなります。
「ここではじっくり遊べる」
「ここでは休める」
「ここでは友だちと関われる」
子どもにとって場所の意味がわかると、生活が安定しやすくなります。
食事や排泄を生活の時間として見直す
食事や排泄は、毎日の保育の中で当たり前に行われる時間です。
しかし、子どもにとっては、とても大切な生活の時間です。
食事は、ただ栄養をとる時間ではありません。
安心して座り、味わい、自分のペースで食べる時間です。
排泄も、ただ済ませるものではありません。
自分の体の感覚に気づき、清潔にし、少しずつ自立へ向かう時間です。
大人の都合で急がせすぎると、子どもにとって生活の時間が緊張の時間になってしまうことがあります。
心地よい暮らしをつくるためには、食事や排泄を「こなす時間」ではなく、「子どもの育ちを支える時間」として見直すことが大切です。
子どもの権利を日々の保育に生かす
子どもの権利という言葉は、少し難しく感じるかもしれません。
しかし、日々の保育に置き換えると、とても身近なものです。
子どもの気持ちを聞く。
嫌がっている理由を考える。
一人ひとりのペースを尊重する。
安心して遊べる環境を整える。
大人の都合だけで子どもを動かさない。
こうした保育の積み重ねが、子どもを一人の人として大切にすることにつながります。
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は、子どもの権利を現場の具体的な保育と結びつけて考えるきっかけになります。
環境づくりを見直したいとき、日々の保育を子どもの目線から考え直したいときに、手元にあると読み返しやすい一冊です。
現場で役立つ支援方法の考え方
「困った子」ではなく「困っている子」として見る
保育中にトラブルが続くと、つい「困った行動」として見てしまうことがあります。
でも、子どもの行動には理由があります。
噛む。
押す。
泣き続ける。
集団に入らない。
片づけを嫌がる。
食事が進まない。
こうした姿を、「困った子」と見るのではなく、「何かに困っている子」として見ることが支援の出発点です。
子どもの行動を責める前に、眠かったのか、言葉で伝えられなかったのか、環境が合っていなかったのか、大人の関わりが多すぎたのかを考えてみます。
見方が変わると、支援方法も変わります。
大人の声かけを減らし、環境で伝える
保育室の中で、大人の声が多くなりすぎることがあります。
「片づけて」
「座って」
「順番だよ」
「走らないで」
「早くして」
声かけは必要ですが、ずっと指示が続くと、子どもも大人も疲れてしまいます。
支援方法として大切なのは、声で動かす前に、環境で伝えることです。
片づける場所がわかる表示。
順番を待つ場所。
座りたくなる落ち着いた空間。
遊びの区切りが見える配置。
次にすることがわかる流れ。
環境が整うと、大人の指示が少なくても、子どもが自分で動きやすくなります。
一人ひとりの発達や感覚に合わせる
同じ年齢の子どもでも、発達や感覚は一人ひとり違います。
にぎやかな音が苦手な子。
触られることが苦手な子。
見通しがないと不安になる子。
体をたくさん動かしたい子。
言葉よりも視覚的な手がかりがあると安心する子。
支援方法を考えるときには、年齢だけで判断せず、その子が何に安心し、何に困っているのかを見ることが大切です。
環境づくりも同じです。
すべての子どもに同じ環境が合うとは限りません。
一人ひとりの姿を見ながら、少しずつ調整していくことが、心地よい保育実践につながります。
保育士同士で子どもの見取りを共有する
環境づくりや支援方法を変えるためには、保育士一人の気づきだけでは限界があります。
「この子は、午前中の早い時間だと落ち着いて遊べている」
「この場所にいると、友だちとのトラブルが増えやすい」
「食事の席を変えたら、少し安心して食べられるようになった」
こうした小さな見取りを職員同士で共有することが大切です。
見取りを共有すると、支援が個人任せになりにくくなります。
園全体で同じ方向を向きやすくなり、子どもにとっても安心できる環境が整っていきます。
園内研修や保育の振り返りに活用する方法
保育室の写真を見ながら話し合う
環境づくりを見直すときは、保育室の写真を使うと話し合いやすくなります。
写真を見ることで、普段は気づきにくいことが見えてきます。
子どもの動線はどうなっているか。
遊びのコーナーはわかりやすいか。
落ち着ける場所はあるか。
玩具の量は適切か。
大人の都合で配置しているものはないか。
写真を見ながら話し合うと、感覚的な意見だけでなく、具体的な改善につながりやすくなります。
子どもの姿から環境を見直す
環境づくりは、大人の理想だけで考えるものではありません。
子どもの姿から考えることが大切です。
たとえば、同じ場所でトラブルが繰り返されるなら、その場所の広さや玩具の数、動線を見直します。
午睡前に落ち着かない子が多いなら、午睡前の流れや照明、音、職員の声の大きさを見直します。
食事中に立ち歩く子が多いなら、席の配置、食事の始め方、待ち時間の長さを見直します。
子どもの姿は、環境を見直すための大切なサインです。
書籍を職員会議の共通教材にする
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は、園内研修や職員会議の共通教材としても活用しやすい本です。
全員で一度に全部読む必要はありません。
気になる章を選び、実際の保育に置き換えて話し合うだけでも十分です。
たとえば、次のような問いを使うと話し合いやすくなります。
・子どもが心地よく過ごせている場面はどこか
・大人の都合で急がせている場面はないか
・一斉にしていることの中で、見直せるものはあるか
・子どもが自分で選べる環境になっているか
・支援が必要な子にとって、今の環境はわかりやすいか
本をきっかけに話し合うことで、保育士同士の考えが整理され、実践に移しやすくなります。
具体例は 『保育の中に心地よい暮らしをつくる』 でも詳しく紹介されています。
注意点やデメリットも知っておきたい
すぐにすべてを変えようとすると負担になる
本を読むと、「うちの園も変えたい」と感じるかもしれません。
その気持ちはとても大切です。
ただし、すぐにすべてを変えようとすると、職員にも子どもにも負担がかかることがあります。
環境づくりは、一度変えたら終わりではありません。
子どもの姿を見ながら、少しずつ調整していくものです。
まずは、保育室の一角を変える。
食事の流れを少し見直す。
大人の声かけを一つ減らしてみる。
小さな変化から始めることが大切です。
園全体の理解がないと続きにくい
環境づくりや支援方法を見直すには、職員同士の共通理解が必要です。
一人の保育士だけが頑張っても、クラスや園全体の流れが変わらないと、実践は続きにくくなります。
「なぜ変えるのか」
「子どもにとってどんな意味があるのか」
「保育士の負担はどう変わるのか」
こうしたことを職員同士で話し合うことが大切です。
本書を共有することで、同じ言葉で保育を考えるきっかけになります。
施設環境や人員体制によって工夫が必要
本に書かれている実践を、そのまますべての園で同じようにできるとは限りません。
保育室の広さ、園児数、職員配置、園の方針、建物の構造などは園によって違います。
そのため、大切なのは「同じ形を真似すること」ではありません。
本の考え方を参考にしながら、自分の園の環境に合わせて工夫することです。
できない理由を探すより、今の環境で少し変えられることを見つける視点が大切です。
よくある質問
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は若手保育士にも読めますか?
はい、若手保育士にもおすすめできます。
難しい理論だけではなく、日々の保育を見直す視点が得られるため、保育実践に結びつけやすい一冊です。
特に、環境づくりや子どもへの支援方法に迷っている方にとって、子どもの姿をどう見るかを考えるきっかけになります。
乳児保育にも役立ちますか?
役立ちます。
乳児保育では、食事、排泄、睡眠、遊びなど、生活そのものが保育の中心です。
だからこそ、心地よい暮らしをつくる視点はとても大切です。
一人ひとりの生活リズムや安心できる環境を考えるうえで、参考になる内容です。
園内研修で使えますか?
使えます。
環境づくり、一人ひとりを大切にする保育、子どもの権利、支援方法の見直しなど、職員同士で話し合いやすいテーマが多くあります。
本を読んで終わりにするのではなく、自園の保育室や子どもの姿に置き換えて話し合うと、より実践につながりやすくなります。
今の園では大きな変更が難しい場合でも参考になりますか?
参考になります。
大きな変更ができなくても、玩具の置き方、声かけの仕方、待ち時間の減らし方、落ち着ける場所のつくり方など、小さく始められる工夫はあります。
大切なのは、子どもの姿を見ながら、できるところから少しずつ変えていくことです。
まとめ:これから試してみたい工夫
『保育の中に心地よい暮らしをつくる』は、保育実践を変えたい保育士さんにとって、環境づくりと支援方法を見直すきっかけになる一冊です。
これから試してみたい工夫は、次の4つです。
・子どもが落ち着かない場面を、子どもの問題ではなく環境から見直す
・一斉にしている生活の流れの中で、一人ひとりのペースを大切にできる部分を探す
・大人の声かけを増やす前に、子どもが自分でわかる環境を整える
・職員同士で子どもの姿を共有し、園全体で支援方法を考える
保育は、毎日の小さな積み重ねです。
子どもたちが安心して過ごし、自分らしく遊び、心地よく暮らせる環境をつくることは、保育の質を高める大切な一歩になります。
「今の保育を少し変えたい」
「子どもにとって本当に心地よい環境を考えたい」
「一人ひとりを大切にする保育を学び直したい」
そう感じている保育士さんは、書籍『保育の中に心地よい暮らしをつくる』を手に取ってみてください。
日々の保育を見直す視点が増え、明日の環境づくりや支援方法に生かせるヒントが見つかるはずです。
実践に役立つ視点をさらに深めたい方は、『保育の中に心地よい暮らしをつくる』 を手元に置いて気になったときに何度も読み返してみてくださいね。