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【解説】「規範意識の芽生え」を支える保育実践 ― 約束やルールを子どもたちとつくる

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園児が安心して生活し、友達と一緒に遊びや学びを深めていくためには、「規範意識の芽生え」が欠かせません。これは教育・保育要領で示される「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿(10の姿)」の一つであり、社会生活の基盤を形づくる力です。

「順番を待つ」「片付けをする」「約束を守る」といった行動は、大人にとっては当たり前に思えますが、子どもたちにとっては経験を積み重ねながら少しずつ身につけていく大切な学びです。この記事では、規範意識の芽生えをどう見取り、どのように保育実践に結びつけていくかを、事例や具体的な方法を交えながら紹介します。

「規範意識の芽生え」とは何か

10の姿における規範意識の位置づけ

「規範意識の芽生え」は、集団の中で安心して過ごすための基本的なルールや社会的な決まりごとを理解し、守ろうとする姿を指します。単に「言われた通りに従う」ことではなく、「なぜそうするのか」を考え、相手のことを思いやりながら行動する力でもあります。

人との関わりと社会性の基盤

人間関係を築く上で「自分だけの思い」ではなく「みんなで過ごす約束」を理解することは不可欠です。友達と一緒に遊ぶ中で順番を待ったり、片付けを協力して行ったりする行動は、規範意識が芽生えた大切なサインです。

発達段階に応じた育ち

3歳頃はまだ自分の思いが中心で「貸して」と言われても素直に応じられないことも多いですが、4〜5歳になると「順番を待とう」「次に遊ぼう」といったやりとりができるようになります。こうした姿を丁寧に見取ることが、育ちを支える基盤となります。

子どもたちに見られる「規範意識」の具体的な姿

遊びの中で現れるルールを守る行動

  • 鬼ごっこで「交代しよう」と決めた順番を守る

  • ボードゲームでルールを理解して楽しむ

  • ごっこ遊びで役割を交代する

遊びの中で自然にルールを共有しようとする姿は、規範意識の芽生えを見取る大切なポイントです。

生活習慣における基本的な約束

  • 靴をそろえる

  • 食後に自分の食器を片付ける

  • 廊下を走らない

これらの行動も、繰り返し経験することで「みんなで気持ちよく生活するために必要なんだ」と理解できるようになります。

保護者さんや大人とのやりとりの中で育つ意識

  • 家で「ただいま」「おかえり」と挨拶する

  • 保育士に「ありがとう」と伝える

  • 保護者さんの手伝いをする

こうした小さな行動の積み重ねが、園でも規範意識として表れてきます。

規範意識を育てる保育実践の工夫

子どもたちと一緒にルールをつくる

一方的に「これを守りなさい」と伝えるのではなく、「どうしたらみんなで楽しく遊べるかな?」と問いかけ、子どもたちと一緒にルールを考えることが大切です。自分たちで決めた約束は守りやすく、主体性も育ちます。

ルールを守れなかったときの支え方

ルールを破った子を叱るだけではなく、「どうしたら次はできるかな?」と振り返る時間をつくることが大切です。保育士が安心できる関わりをすることで、失敗も学びに変わります。

小さな成功体験を積み重ねる

「今日は順番を待てたね」「お片付けができたね」と具体的に声をかけることで、子どもは「できた」という達成感を感じ、次の行動につながります。

事例
園でおもちゃの取り合いが起きたとき、保育士が「どうすればみんなで仲良く使えるかな?」と問いかけました。子どもたちは「順番にしよう」と話し合い、絵にしてルールを掲示しました。その後、子どもたちから「次は私ね」と自然に声がけする姿が見られるようになりました。

職員間で共有すべき視点

ルールの一貫性を持たせる

保育士ごとに対応が違うと子どもたちは混乱します。職員全体でルールや声かけをそろえることが大切です。

指導計画に「規範意識」を位置づける

日案や週案に「規範意識の芽生えを支える」ねらいを盛り込むと、意識的に取り組みを計画できます。

園内研修で「規範意識の姿を見取る」

園内研修で具体的な子どもの行動を共有し合うことで、職員の見取りの視点が揃います。

保護者さんとの連携で広げる取り組み

園でのルールづくりを家庭に伝える

「園でこんな約束を決めました」と保護者さんに伝えることで、家庭でも一貫した声かけができます。

保護者さんからの家庭での様子を共有してもらう

「家庭でも順番を待てるようになりました」といった声を園に届けてもらうことで、子どもの育ちをより立体的に見取れます。

園と家庭で一体的に育ちを支える

園と家庭が協力して同じ方向を向くことで、規範意識はさらに安定して育ちます。

よくある悩みと対応のヒント

  • ルールを守れない子がいる
    → 発達段階によって理解の仕方が異なるので、一人ひとりの姿を丁寧に見取ってほしいなと思います。

  • ルールが多すぎて混乱する
    → シンプルでわかりやすいルールに絞って伝えてほしいなと思います。

  • 保護者さんにどう伝えたらいいか迷う
    → 専門用語ではなく「こんな行動が見られました」と具体的に伝えてほしいなと思います。

今日からできる小さな取り組み

  • 保育室に「子どもたちと決めた約束」を絵にして掲示してほしいなと思います

  • 園児がルールを守れたときに、必ず言葉で具体的に褒めてほしいなと思います

明日から役立つおすすめの本

現場で実践できる具体的な活動例を、まずは取り入れてみて実際に感じてみることをおすすめします。

  • 10の姿で保育の質を高める本 (これからの保育シリーズ)

保育実践の質を高めたい先生におすすめな本です。教育・保育要領に示される「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」をわかりやすく解説し、日々の保育にどう結びつけるか具体的に示しています。園児の育ちを支える視点を整理したい新人から、中堅・ベテランの先生まで活用できる一冊です。

  • 10の姿プラス5・実践解説書 「幼児期の終わりまでに育ってほしい 10の姿 」をカラー写真いっぱいの実践事例で 見える化 !!

子どもたちの「10の姿」をどう保育実践に活かすかを具体的に知りたい先生におすすめな本です。教育・保育要領に示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を、豊富なカラー写真と実践事例でわかりやすく解説。園児の育ちを支える日々の保育に直結するヒントが満載です。新人からベテランまで現場で役立つ一冊です。

  • 遊びや生活のなかで“10の姿"を育む保育 (事例で見る「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿)

教育・保育要領に示された「10の姿」を実際の保育場面と結びつけて学べる実践書です。日常の遊びや生活の中でどのように子どもたちの育ちを支えるかを、豊富な事例と写真で具体的に解説。新人保育士から経験豊富な先生まで、保育の質を高めたい方に役立つ一冊です。

  • 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

園児の「思いやり」「協同性」「学びに向かう力」など、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」をわかりやすく解説した一冊です。日々の保育の中でどんな場面を見取り、どう育ちを支えるのかを丁寧に示してくれるので、現場の実践にすぐ役立ちます。日々読み返したくなるので保育士の学び直しにもおすすめです。

どれも専門的な内容をやさしく解説しており、新しい視点で明日からの保育の質を高めたい方にぜひ読んでほしい本となっています。

まとめ

「規範意識の芽生え」は、子どもたちが安心して生活し、友達と協力して過ごすために欠かせない力です。遊びや日常生活を通じて園児の姿を見取り、育ちを支えるためには、保育士が子どもと一緒にルールを考え、小さな成功体験を積み重ねることが大切です。園と家庭が連携しながら子どもたちの社会性を育てていけるといいですね。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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