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【解説】「10の姿」を日常保育にどう落とし込む? ― 遊びや生活から育ちを見取る実践ヒント

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教育・保育要領に示される「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」は、園児の育ちを見取る大切な視点です。ただ、知識として知っていても「実際の保育にどう落とし込むのか」「遊びや生活の中でどう結びつけるのか」と悩む職員も多いのではないでしょうか。

10の姿は特別なカリキュラムを設けなければならないものではなく、子どもたちが日常で見せる自然な行動の中に表れます。この記事では、10の姿を一覧で整理し、具体的な場面や実践ヒントを紹介しながら、現場での活かし方を解説します。

「10の姿」とは?保育実践に必要な基盤

教育・保育要領における位置づけ

10の姿は「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」として示されており、小学校以降の学びや生活につながる基盤とされています。これは特別な評価項目ではなく、子どもたちの育ちを支えるための大切な目安です。

園児の育ちを支える10の視点

10の姿を意識することで、保育士は「今この行動はどんな力の芽生えなのか」を整理しやすくなります。例えば「片付けを自分でできる」は自立心の表れ、「転んだ友達を助ける」は思いやりの表れです。

指導計画に広がる見通し

10の姿をねらいと結びつけて計画に取り入れると、日常の活動に一貫性が生まれます。週案や日案に「今日はどんな姿を見取りたいか」を一言添えるだけでも、保育の質が高まります。

10の姿一覧と保育で見取れる具体的な場面

健康な心と体

戸外遊びで思い切り走ったり、転んでも立ち上がったりする姿。健康な体をつくるだけでなく、挑戦する意欲も見えてきます。

自立心

食事の準備や着替えを自分でやり遂げようとする行動。小さな「自分でできた」が積み重なると自信につながります。

協同性

ブロックで一緒に大きな作品を作ったり、鬼ごっこで役割を分担したりする姿。協力して取り組む中で友達との関係も深まります。

道徳性・規範意識の芽生え

順番を待つ、決めたルールを守るといった行動。遊びの中で自然に「約束の大切さ」を学んでいきます。

社会生活との関わり

ごっこ遊びの買い物や郵便ごっこなど、社会を模した遊びを通してルールや役割を理解していきます。

思考力の芽生え

「なんで?」「どうして?」という問いから始まり、試行錯誤を楽しむ姿。自然観察や実験遊びの中でよく見られます。

自然との関わり・生命尊重

花に水をやる、虫をそっと観察するなどの行動。小さな命に触れる経験が、生命を大切にする心を育てます。

言葉による伝え合い

友達と気持ちを伝え合う、保育士に相談するなどの姿。言葉を通じて考えを整理し、相手に伝える力が育ちます。

豊かな感性と表現

絵や音楽、ダンスなどで自分の気持ちを表現する姿。自由に表現する中で感性が磨かれていきます。

思いやりのある子

転んだ友達に「大丈夫?」と声をかける、玩具を譲るなど。他者の気持ちを感じ取り、行動に移すことができる姿です。

遊びや生活から「10の姿」を見取る工夫

日常の中で自然に育つ姿を記録する

特別な行事だけでなく、普段の遊びや生活の中にこそ10の姿は表れます。「給食でおかずを友達に分けた」「散歩で花の変化に気づいた」など、小さな出来事を短いメモに残すだけでも十分です。

活動を複数の姿に結びつけて考える

一つの行動は、複数の姿に関連していることが多いです。積み木を一緒に積む姿は「協同性」だけでなく「思考力の芽生え」や「言葉による伝え合い」にもつながります。

小さな行動を見逃さず言葉にして伝える

「順番を待てたね」「ありがとうって言えたね」とその場で伝えることで、子ども自身も「自分の行動が認められた」と感じられます。

事例紹介

園で給食のとき、ある子が隣の友達に「スプーンどうぞ」と渡した場面がありました。保育士が「協力してくれてありがとう」と声をかけると、その子は誇らしそうな顔をしました。これは「協同性」と「思いやり」の両方の姿を見取れる瞬間でした。

職員間での共有と振り返りの方法

週案や日案に「10の姿」を組み込む

活動のねらいに「今日は思考力の芽生えを見取りたい」など具体的に記載すると、実践がぶれにくくなります。

同僚と一緒に「姿を見取る」練習をする

同じ場面を見ても、職員によって解釈が異なることがあります。研修や会議で写真や動画を見ながら「どの姿に当てはまるか」を話し合うことで、共通理解が深まります。

園内研修で事例を持ち寄る

日々の小さな事例を持ち寄ると、「こんなところに姿があったんだ」と新しい気づきが生まれます。

保護者さんに伝えるときの工夫

「10の姿」を根拠にしたわかりやすい説明

「片付けができるようになりました」と伝えるだけでなく、「これは自立心の芽生えなんです」と説明すると、保護者さんも納得しやすくなります。

専門用語を噛み砕いて伝える方法

「規範意識」と言うより「順番を待てるようになった」と具体的に伝えた方が伝わりやすいです。

園での姿を家庭に広げる提案

「園でありがとうを伝えられるようになったので、ご家庭でも声をかけてみてください」とつなげると、育ちが一貫して支えられます。

事例紹介

園で、子どもが初めて自分から靴を揃えた姿を記録し、保護者さんに「自立心が育っていますね」と伝えたところ、とても喜ばれ「家庭でもやってみます」と協力につながったケースがありました。

よくある悩みと解決のヒント

  • どう記録すればいいかわからない → 写真や短いメモで十分

  • 姿が見えにくい子がいる → 小さな行動に注目してみる

  • 保護者さんに説明が難しい → 専門用語を避け、日常の言葉で伝える

今日からできる実践ヒント

  • 活動記録に「対応する10の姿」を一言添えてみませんか

  • 子どもたちの行動を褒めるときに「対応する10の姿」として伝えてほしいなと思います

明日から役立つおすすめの本

現場で実践できる具体的な活動例を、まずは取り入れてみて実際に感じてみることをおすすめします。

  • 10の姿で保育の質を高める本 (これからの保育シリーズ)

保育実践の質を高めたい先生におすすめな本です。教育・保育要領に示される「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」をわかりやすく解説し、日々の保育にどう結びつけるか具体的に示しています。園児の育ちを支える視点を整理したい新人から、中堅・ベテランの先生まで活用できる一冊です。

  • 10の姿プラス5・実践解説書 「幼児期の終わりまでに育ってほしい 10の姿 」をカラー写真いっぱいの実践事例で 見える化 !!

子どもたちの「10の姿」をどう保育実践に活かすかを具体的に知りたい先生におすすめな本です。教育・保育要領に示された「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿」を、豊富なカラー写真と実践事例でわかりやすく解説。園児の育ちを支える日々の保育に直結するヒントが満載です。新人からベテランまで現場で役立つ一冊です。

  • 遊びや生活のなかで“10の姿"を育む保育 (事例で見る「幼児期の終わりまでに育ってほしい姿)

教育・保育要領に示された「10の姿」を実際の保育場面と結びつけて学べる実践書です。日常の遊びや生活の中でどのように子どもたちの育ちを支えるかを、豊富な事例と写真で具体的に解説。新人保育士から経験豊富な先生まで、保育の質を高めたい方に役立つ一冊です。

  • 幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿

園児の「思いやり」「協同性」「学びに向かう力」など、「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」をわかりやすく解説した一冊です。日々の保育の中でどんな場面を見取り、どう育ちを支えるのかを丁寧に示してくれるので、現場の実践にすぐ役立ちます。日々読み返したくなるので保育士の学び直しにもおすすめです。

どれも専門的な内容をやさしく解説しており、新しい視点で明日からの保育の質を高めたい方にぜひ読んでほしい本となっています。

まとめ

「10の姿」は、子どもたちの育ちを見取るための大切な視点であり、特別なものではなく日常の中に自然に表れています。職員が小さな姿を見逃さずに記録し、同僚や保護者さんと共有することで、子どもたちの育ちを支える力が園全体に広がります。まずは一つでも「今日はこの姿を見てみよう」と意識して取り組んでほしいなと思います。そうした積み重ねが、保育の質を高め、園児の未来を豊かに育む力となるといいですね。

  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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