保育

【解説】承認欲求からの解放と保育実践 ― 『幸せになる勇気』をヒントにした子どもとの向き合い方

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保育園やこども園で働く保育士や職員にとって、「子どもたちに認められたい」「保護者さんから感謝されたい」という気持ちはごく自然なものです。人に評価されることでやる気が湧くこともあります。しかし、承認欲求にとらわれすぎると、園児の育ちを支える本来の保育実践からずれてしまうこともあります。

アドラー心理学をもとにした書籍『幸せになる勇気』では、「承認欲求からの解放」こそが人の幸福や自律につながると説かれています。この考え方は保育の現場でも大きなヒントとなります。

本記事では、『幸せになる勇気』のエッセンスをもとに、承認欲求に振り回されず、園児の育ちを支えるための具体的な保育実践の方法を紹介します。

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なぜ「承認欲求からの解放」が保育に必要なのか

保育士自身が評価に縛られるリスク

「保護者さんに褒められたい」「同僚から高く評価されたい」と思うあまり、子どもたちの行動を「どう見えるか」で判断してしまうことがあります。例えば「発表会で失敗しないように」と子どもを急かすのは、大人が評価されたい気持ちから出ていることもあります。

園児に「ほめられるために行動する」習慣がつく危うさ

子どもが「先生に褒められたいから」「親に怒られたくないから」と行動するようになると、本来の学びや挑戦の意味を見失ってしまいます。『幸せになる勇気』では「他者の承認を求める生き方」から解放されることの大切さが強調されています。

子どもの育ちを支える本来の目的とのズレ

承認欲求に支配されると、園児一人ひとりの姿を見取ることよりも「大人の期待通りにできたか」に焦点が当たりがちです。その結果、子どもの主体性や挑戦する心を育てる機会を失ってしまいます。

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保育現場で見られる課題

「いい子ね」と言われたくて行動する園児の姿

お片づけや挨拶を「褒められるためだけ」にする子もいます。行動の背景にある「みんなが気持ちよく過ごすため」という目的を理解しないまま習慣化すると、自律にはつながりません。

保護者さんからの期待に応えようとしすぎる職員

「〇〇ちゃんはもう字が書けるんです」といった声を聞くと、同じクラスの子に無理をさせてしまうことがあります。保護者さんの承認を得たい気持ちが、子どもの発達に合わない指導につながるケースもあります。

同僚との比較や評価で疲弊するケース

「隣のクラスの先生のほうが人気がある」「あの人のほうが保護者さんから信頼されている」など、同僚と比較することで保育士自身が疲弊してしまうこともあります。

『幸せになる勇気』に学ぶ保育実践の視点

他者の承認ではなく「共同体感覚」を重視する

『幸せになる勇気』では、アドラー心理学の根幹として「共同体感覚」が語られています。これは「自分は共同体の一員であり、他者に貢献できている」という感覚です。保育においては「園児一人ひとりがクラスに必要な存在である」と伝える関わり方につながります。

子どもたちの行動を結果ではなく過程で評価する

「できた/できない」ではなく「挑戦していた姿」を見取ることが大切です。例えば「最後までやろうとしていたね」と声をかけることで、結果ではなく過程を認める保育実践が可能になります。

ほめる・叱るではなく「勇気づけ」を基盤にした関わり

「勇気づけ」とは、「あなたにはできる力がある」と信じる姿勢を伝えることです。「また挑戦してみよう」と思える関わりを通じて、子どもたちは自分の力で前に進む意欲を持てます。

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保育実践に取り入れる工夫

園児の姿を見取る記録を日常的に積み重ねる

子どもたちの「挑戦する姿」「友達と協力する姿」を日々記録し、振り返ることで承認欲求に流されず、子どもの育ちを支える視点を持ち続けられます。

職員や同僚と「子どもの育ちを支える視点」を共有する

日々のエピソードを同僚と共有し合うことで、「誰が一番評価されているか」ではなく「子どもの育ちをどう支えたか」という共通理解が広がります。

保護者さんに「結果報告」ではなく「過程の学び」を伝える

「今日は文字を3つ書けました」ではなく、「今日は文字を間違えても何度も書き直していました」と伝える方が、お子さんの育ちを保護者さんと一緒に支える姿勢につながります。

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具体的な事例紹介

お片づけを「先生にほめられるため」から「みんなで使うから大事」に変えたケース

「先生にほめられるから片づける」子どもに、「次に遊ぶ友達も気持ちよく使えるようにしようね」と伝えました。その結果、片づけが「自分の役割」として身につきました。

発表会での失敗を「失敗したね」ではなく「最後までやりきったね」と支えた場面

本番でセリフを忘れてしまった園児に対し、「言えなかったね」ではなく「舞台に立ち続けたね」と声をかけました。その子は次の行事で自信を持って取り組めるようになりました。

保護者さんとの面談で「できたことの数」より「挑戦する姿」を共有した取り組み

「まだ数は数えられませんが、諦めずに数え直していました」と伝えると、保護者さんも安心し「その挑戦する姿がうれしいです」と言ってくれました。

まとめ

  • 『幸せになる勇気』は、承認欲求から解放されて「子どもの育ちを支える」本質に立ち返ることの大切さを教えてくれる。

  • 職員や同僚が園児の姿を丁寧に見取り、結果ではなく過程を支えることで、子どもたちは自分で考え行動できるようになる。

  • 保護者さんとの連携においても「できたかどうか」ではなく「育ちの過程」を共有することで、信頼関係が深まる。

明日からの保育実践で、園児の「認められたい」という気持ちをただ満たすのではなく、その奥にある挑戦や学びの姿を見取り、勇気づけの言葉をかけていきましょう。それが子どもたちの自律と幸せを支える力になるといいですね。

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  • この記事を書いた人

ポジティブ園長

田舎の自然の中で、のんびりと9歳の娘と6歳の息子と暮らすパパ。 保育 × 心理学 × 脳科学をヒントに、職員と子どもたちが共に成長できる園づくりをしています。 “答えのない時代”だからこそ、楽しみながら考え、失敗を恐れず挑戦する──そんな姿を大切に、みんなと歩んでいる園長です。

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