日々の保育実践の中で、「どう関わればいいのか迷う」場面は多いものです。園児が片づけをしない、保護者さんから高い期待を寄せられる、同僚との意見が食い違う…。こうした出来事は、保育士や職員にとって大きなストレスになることがあります。
アドラー心理学をもとにした書籍『嫌われる勇気』では、人間関係をシンプルに整理する考え方として「課題の分離」が紹介されています。この視点を持つことで、保育現場での悩みを軽くし、子どもたちの育ちを支える本質的な関わりに集中できるようになります。
この記事では、『嫌われる勇気』のエッセンスを取り入れながら、保育実践に役立つ「課題の分離」の考え方を解説し、日常の具体的な事例を紹介します。
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なぜ保育に「課題の分離」の視点が必要なのか
園児の行動を「自分の課題」と思いすぎるリスク
「子どもが片づけをしないのは自分の指導が悪いのかもしれない」と抱え込んでしまうことはありませんか。しかし片づけをするかどうかは最終的に園児自身の課題です。保育士にできるのは「片づけの意味を伝え、環境を整えること」。行動するかは子どもの選択に委ねる必要があります。
保護者さんへの対応で振り回されないために
「もっと字が書けるようにしてほしい」「他の子と同じレベルにしてほしい」といった保護者さんの声に対して、すべてを自分の課題と捉えてしまうと疲弊してしまいます。「子どもの発達をどう支えるか」は保育士の課題ですが、「保護者さんがどう受け止めるか」は相手の課題です。この切り分けが必要です。
職員や同僚との関係をシンプルに考えるメリット
同僚との意見の違いは避けられません。「相手を変えたい」と思うと対立が深まりますが、「自分はどう関わるか」に集中すると無駄な衝突を減らすことができます。
保育現場で直面する課題
子どもたちが片づけをしないときのイライラ
「先生に言われたから片づける」という状態では、子どもたちは主体的に行動できません。大人が「片づけなさい」と繰り返しても、自発性は育ちません。
保護者さんからの「もっとできるはず」というプレッシャー
「○○くんはもうできるのに…」と比較されたとき、焦ってしまう経験は多いものです。しかし「比較」は保護者さんの視点であり、子どもの育ちを支える軸をぶらさないことが大切です。
同僚との意見の違いで衝突する場面
「行事の準備はこうしたほうがいい」「子どもへの声かけはこうすべきだ」など、同僚と意見が食い違うことはよくあります。課題の分離を意識すれば、相手の価値観を変えようとせず、対話がスムーズになります。
『嫌われる勇気』に学ぶ「課題の分離」とは
どこまでが園児の課題で、どこからが保育士の課題か
「園児がどう行動するか」はその子自身の課題であり、保育士がコントロールできるものではありません。保育士の課題は「どう環境を整えるか」「どう声をかけるか」です。
保護者さんとの関わりで境界を意識する
保護者さんの期待にすべて応えようとする必要はありません。「園としてどう支えるか」は自分の課題ですが、「保護者さんがどう受け止めるか」は相手の課題です。この線引きができれば余計なストレスを減らせます。
「相手を変える」ではなく「自分の関わり方を選ぶ」視点
アドラー心理学では「他人は変えられない」と考えます。子どもや同僚を思い通りに変えようとするのではなく、自分の関わり方を変えることで人間関係が変化していきます。
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保育実践に活かす方法
園児の姿を見取ることに集中する
「言うことを聞かせる」ことに囚われず、園児の挑戦や迷いの姿を見取ることが大切です。「まだ片づけられなかったね。でも最後に一つだけ片づけていたよね」と伝えることで、育ちを支える関わりになります。
職員同士で「育ちを支える」ための視点を共有する
課題の分離を共通理解として持つと、「どこまでが子どもの課題か」を一緒に考えられるようになります。チーム全体で保育実践の質を高めることにつながります。
保護者さんには「結果」より「育ちの過程」を伝える
「まだ数字は書けませんが、何度も挑戦していました」という伝え方は、子どもの育ちを共有する姿勢です。これによって保護者さんも安心し、信頼関係が築かれます。
具体的な事例紹介
片づけを「させる」のではなく「選ぶ」機会に変えたケース
園で「片づけなさい」と指示するのではなく、「次に遊ぶ人が気持ちよく使えるようにしよう」と伝えました。その結果、子どもたちは「自分で片づける意味」を理解し、行動が変わっていきました。
発表会で泣いた園児に「泣かないで」ではなく「最後まで舞台に立てたね」と伝えた事例
発表会でセリフを忘れて泣いてしまった園児に、「泣かないで」とは言わず「最後まで舞台に立っていたね」と声をかけました。その子は「またやってみたい」と言い、自信を取り戻しました。
保護者さんとの面談で「比べる」視点から「一人ひとりの育ちを支える」視点に切り替えた実践
「同じ年齢の子はできているのに」という保護者さんに対して、「○○くんは繰り返し挑戦しています」と伝えたことで、保護者さんも少し安心し、園と家庭で一緒に支える姿勢を共有できました。
まとめ
『嫌われる勇気』の「課題の分離」は、保育実践において園児・保護者さん・同僚との関わりを整理するヒントになる。
園児の行動を無理に変えようとせず、その姿を見取り、育ちを支える関わりに集中することが大切。
保護者さんや職員同士との関わりも、課題を切り分けることで余計なストレスを減らし、信頼関係を築ける。
明日からの保育実践で、園児や保護者さんとの関わりに迷ったとき、「これは誰の課題だろう?」と一度立ち止まって考えてみましょう。その小さな意識の変化が、子どもたちの育ちを支える大きな力になるといいですね。
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