「この服じゃないと嫌だ!」「いつもの道じゃないと歩かない!」「ブロック遊びを終わらせたくない!」――そんなお子さんの「こだわりの強さ」に戸惑うパパやママは多いのではないでしょうか。
こだわりは一見「困った行動」に見えることがありますが、その背景には安心感を求める気持ちや発達特性が関係している場合があります。無理にやめさせようとするよりも、家庭でできる工夫を取り入れることで、お子さんの安心感や柔軟さを少しずつ育てていくことができます。
この記事では、「こだわりが強い」ときにパパやママができる具体的な関わり方や発達支援の工夫を、事例や体験談を交えてわかりやすく紹介します。お子さんの気持ちに寄り添いながら、家庭で取り入れられる方法を一緒に見ていきましょう。
「こだわりが強い」とはどういうこと?
行動の例と日常でのよくある場面
「こだわりが強い」とは、お子さんが特定のやり方や物事に強く執着して、柔軟に対応できない状態を指します。例えば次のような場面が見られます。
いつも同じ服や靴でないと登園したがらない
ブロックやパズルを途中で片づけられない
食事で同じ食材ばかり食べる
買い物や散歩で道順を変えると泣き出す
こうした行動は「わがまま」ではなく、安心感を保つための行動であることが多いのです。
こだわりの背景にある発達特性
お子さんは「予測できること」に安心します。予定や順番が変わると「次に何が起きるかわからない」と不安になり、強いこだわりとして表れることがあります。
また、感覚が敏感で「肌触りが気になる」「音が苦手」という場合や、逆に感覚が鈍感で「強い刺激を求める」という場合にも、こだわりが強く出ることがあります。
パパやママが感じやすい困りごと
怒ってしまう・イライラしてしまう
「どうしてそんなにこだわるの?」「いい加減にして!」と、つい怒ってしまうこともあるでしょう。でも、怒ってもこだわりはすぐには変わりません。親子で疲れてしまう前に、工夫して対応することが大切です。
集団生活で困るのではと不安
「幼稚園や小学校で困らないかな?」と先のことを心配するパパやママも少なくありません。家庭でできる練習や支援の工夫は、集団生活へのスムーズな適応にもつながります。
兄弟姉妹とのバランス
こだわりが強いお子さんに合わせるあまり、兄弟姉妹が我慢する場面も出てきます。「どうバランスをとればいいのだろう」と悩むケースもよくあります。
家庭でできる発達支援の工夫
「見える化」で安心をつくる
予定や手順を「見える化」することで、お子さんが先の見通しを持ちやすくなります。例えば、ホワイトボードやカードに「朝ごはん→着替え→登園」と書いて貼ると、「次は何をするのか」がわかりやすくなり、混乱が減ります。予定が変わる場合は「今日は雨だから、公園→おうち遊び」にカードを差し替えて見せると納得しやすいです。
代わりの選択肢を用意する
こだわりを無理に取り上げるのではなく、「選べる形」にすることが効果的です。例えば「今日は青い服はないけど、緑と黄色どっちにする?」と聞くと、自分で選んだ満足感が安心につながります。
区切りをわかりやすくする
遊びや活動をやめるのが苦手なときは「おしまいの合図」を用意しましょう。タイマーを使って「あと3分で終わり」と伝えたり、お片づけの歌を流したりすると切り替えがスムーズになります。
成功体験を増やす
「今日は違う道でも泣かずに行けた」「苦手な野菜をひと口食べられた」など、小さな成功を認めて褒めることで、自信と柔軟さが育ちます。
実際の家庭での取り組み事例
道順へのこだわりが和らいだ例
ある家庭では、お子さんが「いつもの道しか歩けない」と強くこだわっていました。そこで事前に地図カードを使い、「今日はこの道を歩くよ」と見せる工夫をしたところ、少しずつ違うルートにも挑戦できるようになりました。
食べ物の偏りが減った例
別の家庭では、お子さんが白ご飯以外を食べないことに困っていました。そこで、まずは白ご飯の横に小さく野菜を置いて「一緒にお皿にのっているだけ」を繰り返し、慣れてきたらひと口だけ挑戦するようにしました。時間はかかりましたが、少しずつ食べられるものが増えています。
無理せず取り組むための考え方
「こだわりをなくす」ことをゴールにすると、パパやママもお子さんもつらくなります。目指すのは「こだわりと付き合いながら、少しずつ柔軟になること」です。
大人でも「このやり方が落ち着く」という習慣はありますよね。お子さんのこだわりも同じで、受け入れつつ、少しずつ幅を広げる関わり方が大切です。パパやママ自身が気持ちを楽にして取り組むことも忘れないでください。
家庭療育をサポートするプログラムを取り入れる
「どう関わればいいかわからない」「家庭でできる工夫の幅を広げたい」と感じたら、専門的に作られた教育プログラムを取り入れるのもひとつの方法です。
こちらの記事では、ABA・TEACCH・感覚統合などを組み合わせた家庭療育プログラムが紹介されています。遊び感覚で取り組める内容が多く、こだわりが強いお子さんへの対応にも役立ちます。「今日はこれを試してみよう」とすぐに実践できるのが魅力です。
まとめ
「こだわりが強い」行動の背景には、不安や安心感を求める気持ち、発達特性があります。家庭でできる工夫としては「見える化」「選択肢を与える」「区切りをわかりやすくする」「成功体験を増やす」ことが効果的です。
無理に直そうとする必要はなく、「こだわりと付き合いながら少しずつ柔軟さを育てる」ことを目指していただけたらと思います。小さな工夫の積み重ねが、お子さんの安心感や自信につながるとなるといいですね。