
「ちゃんと言ったはずなのに、どうして分かってくれないの?」
家庭でも職場でも、こんなモヤモヤを感じる場面は少なくありません。
お父さん・お母さんであれば、
「何度言っても部屋を片付けないお子さん」
「家事や育児の大変さが伝わらないパートナー」
職場であれば、
「お願いしたことをやってくれない同僚」
「話を最後まで聞いてくれない上司」
そんな相手の姿を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
相手に悪気があるわけではなくても、
自分の気持ちが伝わらない状態が続くと、
「自分の伝え方が悪いのかな」
「どうせ言ってもムダだよね」
と、自分を責めてしまったり、あきらめの気持ちが強くなったりします。
幼児教育の知見をもとに考えると、
人はそれぞれ「ものの見方・感じ方・受け取り方」が違います。
子どもたちの育ちを支えるときも、
一人ひとりの特性やペースを見取ることが大切なように、
大人同士のコミュニケーションも、「伝え方」と「受け取り方」のずれを理解することで、
ぐっとラクになることが多いのです。
ここでは、日常の人間関係で感じやすい
「どうして分かってくれないの?」が生まれるパターンを整理しながら、
家庭と職場で今日から使える伝え方のヒントを一つずつ紹介していきます。
「どうして分かってくれないの?」が生まれる3つのパターン
「分かってくれない」と感じる場面には、
よく見てみるといくつかの共通パターンがあります。
まずはその“型”を知っておくことで、
「相手が悪い・自分が悪い」という二択ではなく、
「どこで食い違っているのかな?」と落ち着いて振り返りやすくなります。
気持ちと事実がごちゃまぜになって伝わってしまうとき
イライラしているときや、悲しさ・不安が強いときは、
どうしても感情の言葉が先に出てしまいます。
- 「いつもあなたはそう!」
- 「全然わかってくれない!」
- 「なんで協力してくれないの?」
言っている側は、「それくらい困っている」というサインのつもりでも、
受け取る側は「責められている」「否定されている」と感じやすくなります。
すると、内容よりも“トゲのある言い方”だけが印象に残り、
肝心のお願いや困りごとは、相手の心に届きにくくなってしまうのです。
ここで大切なのは、
「事実」と「気持ち」をいったん頭の中で分けてみることです。
- 事実:何が、いつ、どのように起こったのか
- 気持ち:そのことで、どんな感情になったのか
たとえば、
「22時を過ぎてもまだゲームをやめないお子さん」に対して、
「いい加減にしなさい!」とだけ伝えるよりも、
「もう22時を過ぎているから、明日の朝起きるのが心配なんだ。あと5分で終わりにしようね」
と、事実+気持ちをセットにして伝えるだけで、
お子さんの受け取り方は大きく変わります。
子どもたちの姿を見取るときも、
「何をしているか」と「どう感じているか」を分けて観ることが大切なように、
大人同士でもこの整理が「分かってもらいやすい」第一歩になります。
相手との前提・価値観がそもそもズレているとき
もう一つよくあるのが、「前提」がズレているパターンです。
- 「家事は気づいた人がやるもの」と思っている人
- 「家事は頼まれたらやるもの」と思っている人
この二人が同じ家で暮らしていると、
どちらかが必ず「どうして分かってくれないの?」と感じてしまいます。
職場でも同じです。
「報告は細かくしてほしい上司」と
「大事なことだけ伝えればいいと思っている部下」では、
報連相のリズムが合わず、お互いにストレスを感じやすくなります。
この場合、どちらが正しい・間違っているというよりも、
「何を当たり前と思っているのか」を言葉にしてみることが大切です。
- 「私はこういうやり方が普通だと思っていた」
- 「あなたはどう考えている?」
と、お互いの前提を確認するだけでも、
「そんなつもりじゃなかったのに…」というすれ違いを減らしやすくなります。
タイミングや場面がコミュニケーションに合っていないとき
内容は間違っていないのに、
「言うタイミング」「場所」のせいでこじれてしまうこともあります。
- 相手が明らかに疲れているときに、重い話を切り出してしまう
- 子どもたちの前でパートナーを責めてしまう
- 忙しい業務時間中に、長い相談を持ちかけてしまう
どれも、言いたくなる気持ちはよく分かりますが、
相手の心に余裕がないときは、
こちらの言葉をじっくり受け止めるエネルギーが残っていないかもしれません。
幼児教育の現場でも、
「今は遊びに集中しているから、声かけは少し待とう」など、
子どもたちの育ちを支えるために、タイミングを見取ることがあります。
大人相手でも同じように、
- 「今、少し時間いい?」と前置きをする
- 「今日じゃなくても大丈夫だけど、近いうちに相談したいことがある」と予告しておく
といった一言を添えることで、
「いきなり責められた」と感じさせずに、
落ち着いて話し合える場をつくりやすくなります。
まずは、この3つのパターンを知っておくだけでも、
次に「どうして分かってくれないの?」と思ったとき、
少しだけ俯瞰して状況を眺める余裕が生まれてきます。
次の章では、伝え方そのものを整える前に大切な、
「自分の心の状態の整え方」について、具体的なコツを見ていきます。
伝える前に、自分の心を整える小さなステップ
「伝え方を変えよう」と思っても、自分の心がいっぱいいっぱいのときは、どうしても言葉がとがりやすくなります。
まずは、伝え方のテクニックの前に「自分の心を整えるステップ」を用意しておくことが大切です。
いきなり伝えず「ひと呼吸おく」を習慣にする
イラッとした瞬間に、そのまま口に出してしまうと、あとで「言いすぎたかも」と自己嫌悪になりやすいものです。
そんなときに役立つのが、「ひと呼吸おく」という小さな習慣です。
深呼吸を3回する
心の中で10秒数える
その場をいったん離れてお茶を一口飲む
たったこれだけでも、感情の波が少し落ち着いてきて、言葉の選び方に余裕が生まれます。
幼児教育の現場でも、子どもたちが気持ちを切り替えやすいように「間」をつくることがありますが、大人自身も同じように、自分の心に小さなスペースをつくってあげることが大切です。
「自分は今、何に困っているのか?」を書き出してみる
頭の中だけでモヤモヤを整理しようとすると、
「結局、何をどうしたかったんだっけ?」と、自分でも分からなくなってしまうことがあります。
そんなときは、紙やスマホのメモに、
今いちばん困っていることは何か
相手にどうしてほしいのか
その理由は何か
を書き出してみるのがおすすめです。
たとえば、
「夫が休日もスマホばかり見ている」
というモヤモヤの裏側には、
「子どもたちと一緒に遊ぶ時間をもう少し増やしてほしい」
「自分だけが家事と育児をしているようで孤独に感じる」
といった本音が隠れていることもあります。
自分の気持ちを丁寧に言葉にしていくことは、
子どもたちの育ちを支える「自己理解」ともつながっています。
「自分は何に困っているのか?」を整理できると、
相手にも落ち着いて具体的にお願いしやすくなります。
「責め言葉」ではなく「願い言葉」に言い換えてみる
心が少し落ち着いてきたら、次は言葉の選び方です。
「なんでいつもそうなの?」
「ちゃんとしてよ!」
といった「責め言葉」は、
相手を動かすどころか、心のシャッターを閉じさせてしまうことがあります。
そこで、同じ内容でも、
「こうしてもらえると助かるな」
「次からは、こうしてくれたらうれしい」
といった「願い言葉」に言い換えてみるのがおすすめです。
これは、子どもたちへの声かけでも同じです。
「走らないで!」よりも、
「ここは歩こうね」の方が、子どもたちにとってイメージしやすく、行動につながりやすくなります。
相手の行動の変化だけでなく、「分かってもらえた」という安心感を育ちを支える視点で見ていくことが大切です。
家庭で使える「伝え方」の工夫
ここからは、家庭の中でよくある場面を取り上げながら、
具体的な伝え方の工夫を見ていきます。
子どもに注意したいときは「行動+理由+代わりの提案」
子どもたちに注意するとき、
つい「ダメ」「やめなさい」だけで終わってしまうことはありませんか。
ソファの上でジャンプしている
おもちゃを投げてしまう
ゲームをやめられない
こんなときは、
している行動を短く伝える
なぜ困るのか理由を添える
代わりの行動を提案する
という順番を意識してみると、子どもたちの反応が変わってきます。
例)ソファの上でジャンプしているとき
「ソファの上でジャンプしているね。(行動)
ソファが壊れたり、けがをしちゃうと悲しいな。(理由)
ジャンプしたいなら、マットの上でやろうか。(代わりの提案)」
このように、行動そのものを否定するのではなく、
「どうしたら安全にできるか」を一緒に考えることで、
子どもたちの「やりたい気持ち」を尊重しながら、育ちを支える関わりにつなげることができます。
パートナーには「気持ち+お願い」をセットで伝える
パートナーとの会話では、
つい「手伝ってくれない」「分かってくれない」といった不満が先に出てしまいがちです。
そんなときは、
自分の気持ち
具体的なお願い
をセットで伝えることを意識してみてください。
「最近、家事と育児で少しへとへとなんだ。(気持ち)
お風呂掃除だけお願いできるかな。(お願い)」
「子どもたちの寝かしつけが長引くと、夜ひとりの時間がほとんどなくてね。(気持ち)
週に1回だけでも、寝かしつけを代わってもらえたらうれしいな。(お願い)」
このように伝えると、
パートナーも「何をどう手伝えばいいのか」が具体的にイメージしやすくなり、
結果的に協力してもらえる場面が増えていきます。
イライラをため込まない「感情のガス抜きタイム」をつくる
どれだけ伝え方を工夫しても、
日々の忙しさの中で、イライラや不安がゼロになることはありません。
大切なのは、「感情をため込みすぎないこと」です。
1日の終わりに、今日うれしかったこと・しんどかったことを3つ書き出す
信頼できる友人や同僚に「聞いてもらうだけ」の時間をもらう
1人になれる短い時間を意識的に確保する
など、自分なりの「ガス抜きタイム」をつくっておくと、
心の余裕が少し戻ってきます。
その余裕が、子どもたちの小さな変化の姿を見取ったり、
パートナーの頑張りに気づいたりする力につながっていきます。
次の章では、職場でのコミュニケーションに目を向けながら、
家庭とは少し違う「伝え方の工夫」について考えていきます。
職場で使える「伝え方」の工夫
家庭とは少しちがう顔をしているのが、職場でのコミュニケーションです。
上司・同僚・後輩、それぞれ立場も役割も違う中で、「どうして分かってくれないの?」と感じる場面は少なくありません。
ここでは、明日から試しやすい職場での伝え方の工夫をいくつか見ていきます。
立場の違いを前提にしてから話し始める
同じ出来事でも、「上司の立場」と「部下の立場」では見えている景色が違います。
その違いを無視してストレートに言葉をぶつけてしまうと、どうしてもギクシャクしやすくなります。
たとえば、職員会議の準備がなかなか進まない同僚に対して、
「まだできてないの?ちゃんとしてよ」
とだけ伝えると、相手は責められた気持ちになりがちです。
ここで意識したいのは、
自分はどんな立場から話しているのか
相手はどんな状況・役割なのか
を、ひとこと添えてから本題に入ることです。
「来週の会議で園長先生にきちんと共有したいから、資料づくりを一緒に進めたいんだ」
「現場が忙しいのは分かっているんだけど、この部分だけ今日中に進められるかな?」
このように、「背景+お願い」をセットで伝えると、
同僚も「責められている」より「一緒にやる仲間」として受け取りやすくなります。
「事実・意図・感謝」をセットで伝える
職場でのやり取りでは、つい「結果」だけを指摘してしまいがちです。
「書類、締め切りに間に合っていません」
「この記録、抜けています」
もちろん事実を伝えることは大切ですが、そのままだと冷たく感じられることもあります。
そこで役立つのが、「事実・意図・感謝」をひとまとめにして伝える方法です。
たとえば、連絡帳の内容に抜けがあったときには、
「今日の連絡帳に、アレルギーの記載が抜けていたところがあったよ。(事実)
ご両親さんが安心して預けられるように、そこだけ今後もう一度チェックできると助かるな。(意図)
忙しい中で丁寧に書いてくれているから、いつも本当にありがとう。(感謝)」
と伝えてみます。
子どもたちの姿を見取るときも、
「できていないところ」だけでなく「がんばっているところ」に目を向けることが大切です。
同じように、同僚にも「気になる点」と「よさ」を両方伝えていくことで、関係性を傷つけずに改善のお願いがしやすくなります。
フィードバックは「人」ではなく「行動」に向ける
注意やフィードバックが必要な場面で、
言葉が「人」に向いてしまうと、相手は自己否定されたように感じてしまいます。
「あなたは段取りが悪い」
「もっとちゃんとしなきゃダメでしょ」
こうした言い方は、誰でも心がキュッとしてしまうものです。
そこで意識したいのが、「人」ではなく「行動」に矢印を向けることです。
「今日の保育記録のここだけ、時間の流れが分かりにくかったから、次はこの順番で書いてみない?」
「朝の準備が重なってバタバタしていたね。明日は、この子どもたちの導線を変えてみるのはどうかな」
このように、具体的な場面や行動に目を向けて提案することで、
相手の育ちを支えるフィードバックになっていきます。
職員一人ひとりの良さや成長の過程を見取る視点を大切にすると、
「注意」も「攻撃」ではなく「サポート」として伝わりやすくなります。
「自分も相手も大切にする」伝え方の土台
ここまで、家庭と職場それぞれの場面での伝え方を見てきました。
最後に、どんな場面にも共通する「土台」となる考え方を整理していきます。
相手のタイプを想像してみる
人はそれぞれ、受け取りやすい言葉のパターンが違います。
まず結果を知りたい人
まず気持ちを分かち合いたい人
具体的な手順があると安心する人
全体像や目的から聞きたい人
こうした「タイプの違い」を少し意識するだけでも、伝わり方は変わってきます。
たとえば、仕事の依頼をするときに、
「これお願い」とだけ言うのではなく、
結果重視の人には…「今日中にここまで仕上がっていると助かる。そのために、この部分をお願いしたい」
気持ち重視の人には…「今ちょっと人手が足りなくて困っていてね。ここを手伝ってもらえると本当に心強いな」
というように、同じ内容でも入口の言葉を変えてみると、相手の反応が変わってくることがあります。
子どもたちに対しても、
「まず話をじっくり聞いてほしい子」「見通しがあると安心する子」など、タイプの違いがあります。
その違いを尊重しながら育ちを支えるように、大人同士でも「相手の受け取りやすさ」を想像してみることが、コミュニケーションの質を高める土台になっていきます。
「言い方」を変えると関係の温度が変わることを体験してみる
コミュニケーションの本や講座では、さまざまな理論や方法が紹介されていますが、
一番の学びは「自分で試してみて、雰囲気がどう変わったかを感じること」です。
たとえば、次の1週間だけでも、
否定形ではなく肯定形で伝えてみる
「遅れないで」→「5分前に来てくれると助かる」
「なんで?」ではなく「どうしたらいいと思う?」と聞いてみる
「なんでやってないの?」→「どうしたら進めやすくなりそう?」
といった、小さな言い換えからスタートしてみるのもおすすめです。
言葉の選び方が変わると、
相手の表情、返ってくる言葉、場の空気が少しずつ変わっていきます。
その変化をていねいに見取っていくことは、子どもたちの成長を見取る視点とよく似ています。
家庭と職場に共通する3つのポイントを整理しておく
ここまでの内容を、家庭と職場に共通するポイントとしてまとめると、
事実と気持ちを分けて伝える
「責め言葉」ではなく「願い言葉」を選ぶ
相手のタイプや状況を想像して、言い方やタイミングを調整する
という3つに整理できます。
どれも特別なテクニックというより、
「相手も自分も大事にしたい」という姿勢から生まれる工夫です。
ただ、頭では分かっていても、
忙しさやストレスが重なると、なかなか実践し続けるのは難しいものです。
だからこそ、伝え方を「感覚」だけに任せず、
もう一歩踏み込んで、性格の違いや心理的なパターンを学びながらトレーニングしていくことが、
人間関係の悩みを長い目で減らしていく近道と言えます。
次の章では、こうした日常のモヤモヤを整理しながら、
家庭でも職場でも使える「伝え方の型」を体系的に学べる講座について紹介していきます。
子どもたちの育ちを支える視点とつながる学びとして、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
「伝え方コミュニケーション検定講座」で学べること
ここまで、家庭や職場で使える伝え方の工夫をお伝えしてきました。
「分かってほしいのに、うまく伝えられない」というモヤモヤを減らしていくためには、日々の小さな工夫に加えて、「人のタイプの違い」を体系的に学べる機会があると心強いですね。
そこで最後に、そうした学びをぎゅっとまとめて身につけられる「伝え方コミュニケーション検定講座」についてご紹介します。幼児教育の知見をもとにしても、子育てや仕事にとても活かしやすい内容になっています。
どんな人におすすめか
この講座は、次のような方に特に向いています。
お子さんとの関係をもっとあたたかくしたい
思春期の子どもとの会話で、どう声をかけたらいいか悩んでいる
ご両親さんやパートナーとのすれ違いを減らしたい
職場の人間関係のストレスを軽くしたい
教育や保育の現場で、子どもたちや保護者さんとの関わりに活かしたい
「自分が悪い」「相手が悪い」とジャッジするのではなく、
お互いの違いを理解しながら、その人の育ちを支えるコミュニケーションを身につけたい方に、とても心強い学びになるはずです。
これから試してみたい工夫
ここまで、「どうして分かってくれないの?」を少しずつ減らしていくための考え方や、家庭・職場での具体的な伝え方の工夫、そして講座で学べる内容をご紹介してきました。
最後に、これから試してみたい工夫として、3つだけ挙げておきます。
イラッとしたときに、まず「ひと呼吸おく」習慣をつくること
否定形ではなく、「こうしてもらえると助かる」という願い言葉に言い換えてみること
性格タイプの違いを意識しながら、家族や職場の人への声かけを少しずつ変えてみること
そしてもし、日々のコミュニケーションのモヤモヤをもう一歩ていねいにほどいていきたいと感じたら、「伝え方コミュニケーション検定講座」のような学びの機会を活用してみるのも一つの方法です。
ご家庭でも職場でも、「分かってもらえない」と感じる瞬間が少しずつ減っていき、お子さんや周りの方の新しい一面をやさしく見取れる時間が増えていくといいですね。
そのための小さな一歩として、今日お話しした工夫のうち、できそうなところから一つだけでも試していただけたらと思います。
