
社会福祉法人が運営する認定こども園や保育園では、日々の仕訳入力だけでなく、月ごとの確認作業がとても大切です。
会計担当としては、毎月きちんと処理しているつもりでも、「この仕訳で本当に合っているのかな」「補助金の入金確認が後回しになっているかも」「未払金や預り金の残高を、どこまで確認すればよいのだろう」と感じることはないでしょうか。
幼児教育の知見をもとに考えると、会計は単なる数字合わせではありません。保育環境を整え、職員が安心して働き、子どもたちの姿を見取る時間を守るための土台です。月次チェックを整えることで、決算前のあわただしさを減らせます。
この記事では、社会福祉法人の認定こども園・保育園で必要となる月次チェックについて、実務担当者が押さえておきたいポイントをやさしく整理します。毎月どこを確認すればよいのかを、一緒に確認していきましょう。
社会福祉法人の認定こども園・保育園で月次チェックが重要な理由
月次チェックは決算前の修正を減らすための土台
月次チェックは、毎月行う小さな決算のようなものです。
年度末になってから一年分をまとめて確認すると、原因をたどるだけでも大きな手間がかかります。通帳の入出金、請求書、給与台帳、補助金の通知書などをさかのぼって確認することになり、負担が増えます。
一方で、毎月の段階で確認しておけば、ズレが小さいうちに修正できます。口座引落しの入力漏れ、口座間振替の二重入力、未払金の消し忘れ、保護者さんからの入金処理の遅れなどは、月内または翌月に確認すれば見つけやすいものです。
社会福祉法人会計の月次チェックは、ただ数字を合わせる作業ではありません。決算書類を正しく作るための準備です。認定こども園や保育園の会計実務では、毎月の積み重ねが年度末の安心につながります。
監査対応は日々の積み上げで決まる
監査対応というと、監査前に資料をそろえるイメージがあるかもしれません。しかし、実際には日々の記録がどれだけ整っているかが大切です。
たとえば、備品を購入したときに、なぜ必要だったのか、どのクラスや園運営に関係するものなのか、請求書や納品書が残っているのか。こうした情報が月次で整理されていれば、後から説明しやすくなります。
補助金に関係する支出も同じです。対象期間、目的、金額、入金時期、支出との対応があいまいなままだと、監査前に確認が集中してしまいます。月次で、入金状況、未収計上の必要性、対象経費を整理しておくと安心です。
会計担当者だけに依存しない仕組みづくりにつながる
月次チェックの大きな役割は、会計を属人化させないことです。
「この処理はいつもの担当者なら分かる」「この科目はなんとなく毎年こうしている」という状態は、一見問題がないように見えます。けれども、担当者が休んだり、異動したりしたときに、処理の根拠が分からなくなることがあります。
月次チェック表を用意しておけば、誰が見ても確認の流れが分かります。園長先生や理事長先生、会計事務所とも情報を共有しやすくなります。数字の確認が担当者一人の負担にならず、法人全体で支える体制につながります。
月次チェックでまず確認したい基本項目
現金・預金残高が帳簿と一致しているか
月次チェックで最初に確認したいのは、現金と預金の残高です。
小口現金がある場合は、実際残高と帳簿残高が一致しているかを確認します。
預金については、月末時点の通帳残高や入出金明細と、会計上の残高を照合します。よくあるズレとしては、引落しの入力漏れ、振込手数料の処理漏れ、入金の未処理、口座間振替の二重入力があります。
特に園では、保護者さんからの引落し、行政からの入金、給与振込など、口座の動きが多くなります。現金・預金が合っていない状態では、他の科目を確認しても不安が残ります。まずは資金の入口と出口を確かめることが基本です。
請求書・領収書・証憑が仕訳と紐づいているか
次に大切なのが、仕訳と証憑の確認です。
証憑とは、取引の根拠となる書類のことです。請求書、領収書、納品書、契約書、補助金の通知書、給与資料、口座振替の明細などが該当します。
仕訳が入力されていても、根拠となる書類が見つからなければ、後から説明が難しくなります。逆に、書類があるのに仕訳が入力されていない場合もあります。月次チェックでは、仕訳と書類がきちんとつながっているかを確認することが重要です。
未収金・未払金・預り金の残高に違和感がないか
月次チェックでは、残高科目の確認も欠かせません。
未収金は、まだ入金されていない収入です。未払金は、まだ支払っていない費用です。預り金は、一時的に預かっているお金です。「あとで入るお金」「あとで払うお金」「あとで納めるお金」と考えると分かりやすいです。
認定こども園や保育園では、保育料、延長保育料、給食費、一時預かり料、職員給与、社会保険料、源泉所得税、住民税などが関係します。これらの残高が何か月も残り続けている場合は、処理漏れや消し込み漏れがないか確認が必要です。
預り金は特に注意しましょう。給与から控除した社会保険料や税金は、あとで納付します。控除した金額と納付した金額がずれていないか、残高が不自然に残っていないかを毎月確認しましょう。
勘定科目の使い方が月ごとにブレていないか
たとえば、同じような保育用品を、ある月は消耗器具備品費、別の月は保育材料費として処理している場合です。金額が大きくなくても、年間で見ると科目ごとの比較がしにくくなります。
修繕費、消耗器具備品費、保育材料費、研修費、業務委託費、雑費などは、園の会計で迷いやすい科目です。迷ったときは、その場で終わりにせず、判断理由を残しておくことが大切です。
月次チェックでは、前月と比べて急に増えている科目や、毎月発生するはずの費用が抜けていないかを確認します。「なぜこの金額なのか」を説明できる状態にしておきましょう。
認定こども園・保育園で特に注意したい月次チェック項目
補助金・委託費・施設型給付費の入金確認
認定こども園や保育園の会計では、補助金や委託費、施設型給付費の確認が重要です。
入金額だけを見て終わるのではなく、対象期間、入金予定額、実際の入金額、未収計上の必要性を確認します。行政からの通知や内訳資料と照らし合わせ、どの月の収入として扱うべきかを整理しておくことが大切です。
補助金は、入金時期が後になることもあります。そのため、入金がないから収入がないと考えるのではなく、対象期間に応じて確認する必要があります。月次で管理しておけば、年度末に「どの補助金が未収だったのか」と慌てることを防ぎやすくなります。
補助金に対応する支出がある場合は、請求書、領収書、支出の目的が分かる資料もそろえておきましょう。
人件費・社会保険料・給与関連の確認
園の支出の中で大きな割合を占めるのが人件費です。
給与、賞与、法定福利費、退職共済、住民税、源泉所得税、社会保険料などは、毎月の確認が必要です。給与データと会計仕訳が一致しているか、預り金の残高が正しく処理されているか、納付漏れがないかを見ていきます。
特に、職員の入退職、育休復帰、時短勤務、異動、手当の変更がある月は注意が必要です。社会保険料や住民税の控除、法人負担分の処理にも影響することがあります。
人件費の確認は、職員の生活にも関わる大切な業務です。正確な処理は、職員が安心して働く環境づくりにつながります。
給食費・延長保育料・一時預かり料などの収入確認
認定こども園や保育園では、保護者さんからの徴収金も丁寧に管理する必要があります。
給食費、延長保育料、一時預かり料、教材費、行事費など、園によって収入項目はさまざまです。口座振替の場合は、請求データ、引落結果、未納分、再請求の状況を確認します。現金で受け取る場合は、領収書や入金記録との照合が必要です。
月次で確認しておかないと、未納や返金の状況が分かりにくくなります。早めに確認し、丁寧に案内することが大切です。
会計の数字は、保護者さんとの信頼にもつながります。毎月の確認によって、安心して園を利用していただける環境を整えたいですね。
園舎修繕・備品購入・固定資産の処理確認
園では、遊具、エアコン、厨房設備、ICT機器、家具、園舎修繕など、大きな支出が発生することがあります。
このような支出は、すべてを通常の経費として処理してよいとは限りません。内容や金額によっては、固定資産として管理する必要があります。補助金を使って取得した場合は、補助金との関係も確認します。
月次チェックでは、大きな支出があった月に、その処理が妥当かどうかを確認します。請求書の内容、購入目的、使用場所、補助金の有無などを整理しておきましょう。
月次チェックでよくある課題と注意点
チェック表がなく、担当者の感覚に頼っている
月次チェックでよくある課題は、確認項目が明文化されていないことです。
担当者が慣れていると、頭の中では確認できているように感じます。けれども、チェック表がないと、忙しい月に抜けが出やすくなります。また、担当者が変わったときに、何をどこまで確認していたのかが分からなくなります。
チェック表は難しいものでなくて構いません。まずは、現金・預金、未収金、未払金、預り金、補助金、人件費、証憑、固定資産の確認欄を作るだけでも十分です。毎月同じ流れで確認できることが、安定した会計実務につながります。
入力は終わっていても、確認が終わっていない
「入力は終わりました」と聞くと、月次処理が完了したように感じるかもしれません。けれども、入力と確認は別の作業です。
会計ソフトに仕訳を入力しただけでは、残高が正しいか、証憑とつながっているか、科目が適切か、未収・未払が残っていないかまでは分かりません。入力後に試算表や残高一覧を見て、違和感がないかを確認する必要があります。
たとえば、預り金が毎月少しずつ増え続けている場合、納付処理が漏れている可能性があります。未払金が残ったままになっている場合、支払い後の消し込みができていないかもしれません。入力して終わりにしないことが大切です。
月次試算表を出しても活用できていない
月次試算表を出しているのに、十分に活用できていない園もあります。
試算表は、印刷して保管するためだけの資料ではありません。前月と比べて増減が大きい科目はないか、前年同月と比べて大きく変わっている支出はないか、予算と比べて進みすぎている費用はないかを確認するための資料です。
会計責任者として大切なのは、数字を作ることだけではありません。数字から園の状態を読むことです。保育材料費が増えている場合、子どもたちの活動が広がっている可能性もあります。修繕費が増えている場合、施設の安全管理に必要な支出かもしれません。
一方で、理由が説明できない増減は注意が必要です。毎月発生するはずの費用が抜けている、同じ支出が二重に入っている、科目が変わっているなどの可能性があります。
完璧を求めすぎると月次処理が止まる
月次チェックは大切ですが、細かくしすぎると続かなくなることがあります。
確認項目を増やしすぎると、毎月の作業時間が長くなります。忙しい時期には後回しになり、結局チェック表が使われなくなることもあります。これは月次チェックの注意点として、正直に考えておきたい点です。
最初からすべてを完璧にしようとしなくて大丈夫です。まずは、金額が大きい項目、監査で確認されやすい項目、間違えると影響が大きい項目から始めましょう。
子どもたちの育ちを支える保育でも、一度にすべてを完成させるのではなく、日々の小さな積み重ねを大切にします。会計の仕組みづくりも同じです。続けられる形にすることが、いちばんの近道です。
月次チェックを安定させるために用意しておきたいもの
月次チェック表
月次チェックを安定させるには、チェック表を用意することが効果的です。
チェック表があると、毎月同じ視点で確認できます。担当者が忙しい月でも、確認漏れを防ぎやすくなります。園長先生や理事長先生に報告するときにも、「今月はここまで確認済みです」と説明しやすくなります。
項目としては、現金残高、預金残高、未収金、未払金、預り金、補助金、給与、社会保険料、証憑、固定資産、月次試算表の確認などを入れておくとよいでしょう。確認日、確認者、気づいた点を書く欄もあると便利です。
勘定科目の判断ルール
月次チェックをしていると、「この支出はどの科目にするべきか」と迷う場面が出てきます。
そのたびに担当者の感覚で判断していると、月によって処理がブレやすくなります。よく出る支出については、勘定科目の判断ルールを残しておくと安心です。
たとえば、保育用品、園児用備品、職員研修、修繕、ICT機器、消耗品、業務委託などは、園で判断に迷いやすい項目です。判断した理由をメモしておけば、翌月以降も同じ考え方で処理できます。
園長・理事長へ報告する月次資料
月次チェックの結果は、会計担当者だけで持っておくのではなく、園長先生や理事長先生にも共有できる形にしておくとよいでしょう。
報告資料は、細かすぎる必要はありません。資金残高、主な収入、主な支出、未収金・未払金の状況、補助金の入金状況、人件費の変化、前月からの大きな増減などを整理します。
数字を報告するときは、単に金額を並べるだけでなく、「なぜ増えたのか」「今後注意が必要か」を一言添えると伝わりやすくなります。会計は、保育と切り離されたものではありません。子どもたちの育ちを支える環境づくりのために、数字を共有することが大切です。
会計業務を効率化したい場合は、仕組みの見直しも必要
月次チェックを安定させるには、確認項目を整えるだけでなく、日々の入力や証憑管理の負担を減らすことも大切です。
毎月の入力に時間がかかりすぎていると、確認作業に十分な時間を取れません。請求書や領収書の整理に追われていると、月次試算表を見直す余裕もなくなります。つまり、月次チェックを強くするには、月次処理の前段階にある日々の業務を整える必要があります。
会計業務の負担を減らす方法や、認定こども園・保育園で会計処理を効率化する考え方については、次の記事で詳しく解説しています。
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月次チェックで「確認する時間が足りない」と感じている方は、確認項目を増やす前に、入力や書類整理の流れを見直してみるとよいでしょう。
社会福祉法人会計をより深く理解したい方におすすめの本
会計基準に沿って確認したい方におすすめの本
社会福祉法人会計を会計基準に沿ってしっかり確認したい方には、『社会福祉法人会計基準の実務 会計処理改訂 社会福祉法人制度改革対応版』が向いています。
この本は、全国社会福祉協議会福祉会計講座運営委員会による書籍で、社会福祉法人会計の実務を体系的に確認したい方に役立ちます。ページ数も568ページあり、月次処理だけでなく、決算や監査対応を見据えて理解を深めたい担当者にとって、手元に置いておきたい一冊です。
月次チェックで迷うのは、単に仕訳の形だけではありません。なぜその処理をするのか、どのような考え方で整理するのかという根拠が大切です。根拠を確認できる本があると、会計担当者だけでなく、園長先生や理事長先生にも説明しやすくなります。
基礎から整理したい方におすすめの本
社会福祉法人会計の基本をもう一度整理したい方には、『初めての社会福祉法人会計』が読みやすい一冊です。
この本は、社会福祉法人会計の基本を学ぶ入門書です。日常の取引や社会福祉法人に特有の取引について、Q&A形式を中心に解説されています。会計とは何か、具体的な仕訳処理、経理担当者の日常業務、決算業務まで扱われているため、月次チェックの全体像をつかみたい方に向いています。
すでに会計を担当している方でも、基本に戻ることは大切です。月次処理で迷いが出るときは、基礎の理解があいまいになっている場合があります。入門書で考え方を整理すると、日々の判断が落ち着きやすくなります。
イラストで理解したい方におすすめの本
文字だけの専門書が苦手な方や、新任担当者に基礎を共有したい方には、『イラストでわかる はじめての社会福祉法人会計』が向いています。
この本は、社会福祉法人会計について多様なイラストで解説しており、設例や演習問題も掲載されています。内容は、社会福祉法人会計の基本、貸借対照表、事業活動計算書、資金収支計算書、現金預金、事業収益、事業費・事務費、給料手当、法定福利費、固定資産、補助金など、幅広く扱われています。
会計に苦手意識がある場合、最初から難しい言葉だけで学ぶと、理解が止まってしまうことがあります。図やイラストで全体像をつかむことで、月次チェックで見ている数字の意味も理解しやすくなります。
よくある質問
月次チェックは毎月どこまで細かく行うべきですか?
最初からすべてを細かく確認しようとすると続きにくくなります。まずは、現金・預金、未収金、未払金、預り金、補助金、人件費、証憑の有無を優先しましょう。慣れてきたら、前月比較や予算との比較まで広げるとよいです。
月次チェック表は紙とデータのどちらがよいですか?
どちらでも構いません。大切なのは、毎月続けられること、確認した日付と担当者が分かること、園長先生や理事長先生と共有しやすいことです。
月次試算表では何を見ればよいですか?
残高が大きく動いている科目、前月と比べて急に増減した科目、未収金・未払金・預り金の残高、補助金収入、人件費の推移を中心に確認します。数字を見るだけでなく、「なぜ増えたのか」「説明できるか」を確認することが大切です。
会計担当者が一人しかいない場合はどうすればよいですか?
一人で処理している場合ほど、チェック表と資料の保管ルールが重要です。担当者だけが分かる状態にせず、月次で園長先生や理事長先生に報告する機会をつくることで、会計の属人化を防ぎやすくなります。
まとめ
社会福祉法人の認定こども園・保育園では、月次チェックを整えることで、決算前の修正や監査前の慌ただしさを減らしやすくなります。
まずは、現金・預金、未収金、未払金、預り金、補助金、人件費、証憑の確認から始めてみましょう。すべてを一度に完璧にしようとしなくても大丈夫です。
これから試してみたい工夫としては、毎月確認する項目をチェック表にすること、迷いやすい勘定科目の判断ルールを残すこと、月次試算表を園長先生や理事長先生への報告資料として活用することが挙げられます。
また、月次チェックの時間を確保するには、日々の入力や書類整理の流れを整えることも大切です。確認作業に追われていると感じる方は、会計業務そのものを効率化する方法もあわせて確認してみてください。
社会福祉法人会計の理解を深めたい方は、実務書を手元に置いておくと安心です。迷ったときにすぐ確認できる本があるだけで、毎月の処理に落ち着いて向き合いやすくなります。
会計は、園の運営を支える大切な土台です。数字を整えることは、保育環境を整え、職員の安心を守り、子どもたちの育ちを支えることにもつながります。毎月の小さな確認を積み重ねながら、無理なく続く月次チェックの仕組みを整えていきましょう。
