
「何度伝えても、同じことを繰り返してしまう」
「かんしゃくが始まると、どう声をかければよいのかわからない」
「褒める、注意する、見守るのうち、どれが正解なの?」
お子さんの発達が気になると、毎日の小さな関わりにも迷いますよね。SNSや育児書を読むほど、何がわが子に合うのかわからなくなる親御さんも少なくありません。
最新の発達心理学に基づく子育て法とは、特別な手順を守ることではありません。現在は、大人が一方的に教えるよりも、お子さんの反応を受け止め、安心できる関係の中でやりとりを重ねることが大切にされています。
この記事では、親子のやりとり、かんしゃくへの対応、遊びや絵本の取り入れ方を、家庭で試しやすい形で解説します。最後には、悩みに合わせて選べる発達心理学・子育ての関連書籍も紹介します。
最新の発達心理学で大切にされている考え方
子どもは大人との「やりとり」の中で育つ
幼いお子さんは、大人との双方向のやりとりを通して、ことばや人との関わり方を学びます。
お子さんが指をさす、声を出す、おもちゃを見せる。大人がそれに気づき、視線や表情、ことばで応じます。
このやりとりは「サーブ・アンド・リターン」と呼ばれます。テニスのように、お子さんから届いた働きかけを大人が返すイメージです。応答的なやりとりは、初期のことばや社会性、考える力の土台を支えるとされています。
お子さんが窓の外のバスを見ていたら、「大きなバスだね」と短く伝えます。その後は質問を続けず、次の反応を少し待ちます。
返事がなくても、もう一度見た、指をさしたという姿を大切にします。
気持ちは大人と一緒に整えていく
幼いお子さんは、怒りや悲しみを最初から一人で整理できるわけではありません。安心できる大人に支えられながら、少しずつ落ち着く方法を身につけます。
この関わりを「共調整」といいます。難しい言葉ですが、大人がそばで安心をつくり、落ち着くまで支えることです。
かんしゃくが起きたときは、まず安全を確保します。次に、大人の声を小さくし、「まだ遊びたかったね」と気持ちを言葉にします。
「怒っているんだね。でも、たたくことはできないよ」
気持ちを認めることと、好ましくない行動を許すことを分けて伝えましょう。
子どもの主体性を支える
主体性を支えるとは、何でも好きにさせることではありません。
大人が安全な範囲や選択肢を用意し、その中でお子さんが選び、試せるようにすることです。
赤い服と青い服を用意して、「今日はどちらにする?」と尋ねます。ことばで答えなくても、見る、触る、指をさすことを意思表示として受け止めます。
選んだ後は、「青い服を選んだね」と具体的に伝えましょう。
遊びは子どもの大切な学びである
積み木、ごっこ遊び、絵本などを通して、お子さんは考える、試す、伝える、順番を待つといった力を使っています。
大人が小さな目的を用意し、遊び方はお子さんに委ねる方法を「ガイド付き遊び」といいます。
39件の研究をまとめたレビューでは、初期の算数や形の理解など、一部の領域で肯定的な結果が示されました。一方、すべての領域で自由遊びや直接指導より優れていたわけではありません。
「この遊びをすれば必ず伸びる」と考えず、楽しく参加できることを優先しましょう。
親子のやりとりを増やす家庭での実践例
声をかける前に、お子さんの興味を見る
「一緒に遊ぼう」と誘っても、お子さんが乗ってこないことはありませんか。
そのようなときは、まず何を見ているかを観察します。ミニカーの車輪を見ている。積み木を一列に並べている。絵本の同じページを何度も開いている。
電車を並べているなら、「長くつながったね」と伝えます。もう一台置いたら、「もっと長くなったね」と返します。
正しい遊び方を教えるより、同じものを見て、やりとりが一往復続いたことを大切にしましょう。
質問より「実況」を増やす
ことばを増やしたいと思うと、「これは何?」「何色?」と質問が多くなります。
そこで、質問を少し減らし、「車を並べているね」「大きな音がしたね」「もう一回やりたいんだね」と、目の前の姿を実況してみましょう。
答えを求めず、経験を一緒に言葉にします。
お子さんのことばに一言だけ加える
お子さんが発したことばを、少しだけ広げて返します。
「車」なら「赤い車」。「ワンワン」なら「ワンワン、走った」。おやつを指さしたら「バナナを選んだね」。
無理に復唱させる必要はありません。自然なやりとりの中で、少し長いことばを聞く機会をつくります。
かんしゃくや気持ちの切り替えを支える方法
注意する前に気持ちを受け止める
遊びを終えると泣く。思い通りにならないと物を投げる。
その姿を見ると、「泣かないで」「怒らないで」と言いたくなりますよね。
けれど、気持ちが大きく動いているときは、長い説明が届きにくくなります。
まずは、「まだ遊びたかったね」「順番を待つのが嫌だったね」と、気持ちを短く言葉にします。
少し落ち着いてから、「おもちゃは投げないよ」「困ったら呼んでね」と、してほしい行動を一つ伝えます。
終わりを事前に知らせる
突然「もう終わり」と言われると、切り替えにくいお子さんがいます。
「あと1回で終わり」「時計の針がここに来たら片づけよう」「動画が終わったらお風呂だよ」と、少し前に知らせます。
ことばだけで伝わりにくければ、写真やイラストを見せます。
予告を重ねる中で、少しずつ見通しを持ちやすくなります。
うまく対応できなかった後も修復できる
親御さんも疲れます。大きな声を出してしまう日もあるでしょう。
いつも完璧に穏やかでいる必要はありません。
落ち着いた後に、「大きな声を出してごめんね。お母さんも困っていたんだ」と伝えられます。
話し直し、関係を修復する姿も、お子さんの大切な学びです。
遊びや生活の中で考える力を育てる方法
すぐに答えを教えず、少し待つ
お子さんが箱を開けられないと、すぐに開けてあげたくなりますよね。
危険がない場面では、まず様子を見ます。次に「開けたいね」と伝えます。それでも難しければ、ふたを指さします。最後に少しだけふたを浮かせ、お子さんに開けてもらいます。
できる部分は任せ、難しい部分だけを支えることが、「自分でできた」という気持ちにつながります。
二つの選択肢を生活に取り入れる
絵本とパズル。赤い服と青い服。りんごとバナナ。選ぶ機会は、特別な教材がなくてもつくれます。
選択肢が多いと迷いやすいため、最初は二つにします。
選べないときは、「今は決めるのが難しいかな。今日はお父さんが選ぶね」と終えても構いません。
選ばせることが負担にならないよう、姿を見取りながら調整しましょう。
絵本を会話のきっかけにする
絵本は最後まで読むことや、物の名前を答えることだけが目的ではありません。
「びっくりした顔だね」「どこへ行くのかな」「この子はどうしたいのかな」と、絵を一緒に見ながら言葉にします。
同じページばかり見ても大丈夫です。好きな場面を繰り返す中で、親子の会話が広がることがあります。
発達心理学を子育てに取り入れるときの注意点
同じ方法がすべてのお子さんに合うわけではない
発達心理学の研究は、多くの子どもを調べたときの平均的な傾向を示します。
選択肢があると安心するお子さんもいれば、選ぶことに負担を感じるお子さんもいます。予告で切り替えやすい日もあれば、疲れていて難しい日もあります。
方法どおりにできたかではなく、表情や声の変化を見取りましょう。嫌がる場合は、時間を短くしたり、別の方法へ変えたりします。
親御さんが完璧に実践する必要はない
子育ての知識を学ぶほど、「正しく関わらなければ」と苦しくなることがあります。
いつも気持ちを受け止める。怒らない。毎日遊ぶ。すべてを完璧に行う必要はありません。
育児書は親御さんを評価するものではなく、困ったときの選択肢を増やすための道具です。
ご両親だけで抱えず、園や専門機関へ相談することも大切です。
本だけで発達の状態を判断しない
子育て本には一般的な考え方が書かれています。一人ひとりのお子さんを直接見て書かれたものではありません。
食事や睡眠へ大きな影響がある。家庭や園で強い困りごとが続いている。親御さんの負担が非常に大きい。
このような場合は、本だけで解決しようとせず、専門機関へ相談しましょう。
発達心理学の考え方を知ると、お子さんの行動の背景を考えやすくなります。
それでも、声かけやかんしゃくへの対応を具体的に確認したい日はありますよね。そのようなときは、今の悩みに合う一冊を手元に置いておくと、必要な場面で関わり方を振り返れます。
子どもの気持ちを理解するために読みたい発達心理学の本
ここまで紹介した関わり方を読んで、「子どもの行動の理由を、もう少し深く知りたい」と感じた方もいるのではないでしょうか。
日々の子育てでは、同じように声をかけても、うまく伝わる日と伝わらない日があります。
そのようなとき、発達心理学の本を手元に置いておくと、お子さんの行動を別の角度から考えるきっかけになります。
子育て本は、書かれている方法をすべて実践するためのものではありません。
今困っている場面に近いところから読み、家庭で試せそうな工夫を一つ見つけるために活用しましょう。
子どもの気持ちを理解して親子で笑顔になりたい方へ
『子どもの気持ちがわかる本 子どももママもハッピーになる子育て』は、お子さんの心の動きを理解し、親子の関わりを見直したい方におすすめの一冊です。
「どうして言うことを聞いてくれないの?」
「なぜ急に泣いたり怒ったりするの?」
このような日常の疑問を、発達心理学の視点からやさしく解説しています。
お子さんの行動を、困った行動として止めるだけではなく、その背景にある気持ちを考えるヒントが得られます。
お父さん、お母さんが「自分の関わり方が悪いのでは」と悩んでいるときにも、心を少し軽くしてくれるでしょう。
親御さんが安心すると、お子さんの姿をゆっくり見取る余裕も生まれます。
親子で穏やかに過ごせる関わり方を探したい方に向いています。
発達心理学の基礎を図解で学びたい方へ
『完全カラー図解 よくわかる発達心理学』は、子どもの発達を基礎から幅広く理解したい方におすすめです。
発達心理学という言葉に難しい印象を持つ方もいるかもしれません。
本書は、図やイラストを使いながら、心や体、人間関係の発達をわかりやすく説明しています。
「同じ年齢なのに、できることが違うのはなぜ?」
「子どもの考え方は、年齢とともにどう変わるの?」
このような疑問を、発達の流れに沿って理解できます。
具体的な声かけだけでなく、その関わりがなぜ大切なのかを知りたい方に向いています。
発達の全体像がわかると、周囲のお子さんと比べるのではなく、目の前のお子さんが今どのような段階にいるのかを考えやすくなります。
困ったときに必要なページを読み返せる、家庭の参考書としても活用しやすい一冊です。
子どもの行動の理由を年齢ごとに理解したい方へ
『子どものこころの発達がよくわかる本』は、乳幼児期から学童期までの心の育ちを知りたい方におすすめです。
子どもの行動には、その時期の発達が関係していることがあります。
大人を困らせるために行動しているように見えても、実際には気持ちをうまく言葉にできなかったり、相手の立場を想像する力が育っている途中だったりします。
本書では、発達心理学の視点から、「なぜそのような行動をするのか」をやさしく解説しています。
日常生活に近い実例が多いため、自分の家庭で起きていることと重ねながら読みやすいでしょう。
今のお子さんの姿だけでなく、これからどのように心が育っていくのかを見通したい方にも向いています。
乳幼児期から学童期まで長く活用できるため、成長に合わせて繰り返し読み返せる一冊です。
どの本を選ぶか迷ったときは
どの本も、専門的な内容をやさしく解説しています。忙しいお父さん、お母さんでも、気になる項目から少しずつ読み進められます。
選ぶときは、今最も知りたいことを基準にしましょう。
お子さんの気持ちを理解し、親子の関係を見直したい方には、『子どもの気持ちがわかる本 子どももママもハッピーになる子育て』が向いています。
発達心理学の全体像を図やイラストで学びたい方には、『完全カラー図解 よくわかる発達心理学』がおすすめです。
年齢に伴う心の変化や、行動の理由を詳しく知りたい方には、『子どものこころの発達がよくわかる本』が適しています。
最初から3冊すべてを読む必要はありません。
今の悩みに答えてくれそうな一冊を選び、目次の中から気になるところを開いてみましょう。
読んだ内容をすべて実践するのではなく、「これなら今日から試せそう」と思える関わりを一つ取り入れることが大切です。
発達心理学に基づく子育てのよくある質問
「最新の発達心理学」とは新しい育児法ですか?
新しい一つの育児法が生まれたという意味ではありません。
現在の発達心理学では、応答的な親子のやりとり、安心できる関係、感情を大人と一緒に整える経験、子どもの主体性、遊びを通した学びなどが重視されています。
一つの方法だけが正しいと考えず、お子さんの発達段階や生活環境に合わせて取り入れます。
何歳から取り入れられますか?
乳児期から取り入れられます。
乳児期は、声や表情に応じることから始めます。幼児期には、二つから選ぶ、気持ちを言葉にする、遊びの中で考えるなどへ広げます。
実年齢だけでなく、今のお子さんに伝わる方法を選びましょう。
子育て本は一冊読めば十分ですか?
一冊ですべての悩みを解決する必要はありません。
まずは現在の悩みに近い一冊を選び、使えそうな方法を一つ試します。
方法が合わない場合は、親御さんの努力不足ではありません。お子さんの反応を見ながら方法を変えたり、園や専門機関へ相談したりしましょう。
まとめ|これから試してみたい工夫
最新の発達心理学に基づく子育て法で大切なのは、特別な方法を完璧に実践することではありません。
お子さんが何を感じ、何に興味を持ち、どのような支えがあれば取り組めるのか。その姿を丁寧に見取ることが、育ちを支える関わりにつながります。
これから試してみたい工夫は、次のとおりです。
- 声をかける前に、お子さんが見ているものを観察する
- 質問を減らし、お子さんの行動を短く言葉にする
- 気持ちを受け止めてから、必要な行動を一つ伝える
- 生活や遊びの中で、二つから選ぶ機会をつくる
- 今の悩みに合う子育て本を一冊選ぶ
全部を一度に始めなくても大丈夫です。
まずは今日、お子さんが見ているものを一緒に見ることから始めてみませんか。
もう少し詳しく学びたいと感じたら、現在の悩みに合った本を一冊手元に置き、必要なときに読み返してみましょう。