「毎日同じ服しか着たがらない」
「道順が変わると泣き出してしまう」
「食べ物の形や順番に強いこだわりがあって困っている」
こうした子どもの「こだわりの強さ」に戸惑い、どう接すればいいのか悩んでいる保護者さんは多いのではないでしょうか。
こだわりは一見「困りごと」に見えますが、実は子どもにとって安心を得たり、世界を理解するための大切な手がかりでもあります。特にASD(自閉スペクトラム症)傾向のある子どもにはよく見られる特徴です。
本記事では、子どものこだわりが強いときの対応法について、療育的アプローチを取り入れながら具体的な関わり方をやさしく解説します。事例や体験談も交えて紹介しますので、保護者さんが今日から実践できるヒントを見つけていただければ幸いです。
子どもの「こだわりが強い」とは?
よくある「こだわり行動」の例
同じ服や靴しか身につけない
食べ物の種類や形に強い好みがある
道順や日課が少し変わるだけで混乱する
おもちゃや物を決まった順番や形で並べたがる
一度でも経験した保護者さんは「なぜそこまで?」と驚くかもしれません。しかし子どもにとっては安心を得る方法のひとつなのです。
なぜこだわりが強くなるのか
見通しが持てない不安を避けたい気持ち
感覚の過敏さ・鈍さが影響している場合(布の肌触りや食感など)
ASD傾向のある子どもに特徴的に見られる行動
こだわりは悪いこと?
こだわりは「安心のよりどころ」であり、子どもが世界を理解するための手段でもあります。大人が無理にやめさせるのではなく、まず「そうしたい気持ちがある」と理解して受け止めることが第一歩です。
こだわりが強い子どもにどう対応すればいい?
保護者さんができる心構え
無理にやめさせない:強引に止めると大きな不安やパニックにつながる
背景にある気持ちを理解する:「不安だから」「慣れた流れが安心だから」など理由を意識する
保護者さん自身の気持ちを整える:イライラしてしまう前に深呼吸して声かけを工夫する
療育的アプローチの基本
視覚支援:絵カードやスケジュール表を使って「次に何をするか」を見える化
スモールステップ:いきなり変えるのではなく、少しずつ新しいことを取り入れる
成功体験の積み重ね:「できた!」を繰り返すことで自己肯定感が高まる
具体的な関わり方の工夫
代替案を提示する:同じ服しか着ない→色違いの服を「同じシリーズだよ」と伝えて受け入れやすくする
切り替えの合図を決める:「タイマーが鳴ったらおしまい」と分かりやすくする
安心できる部分を残しつつ変化を加える:毎日の道順は基本は同じにし、少しだけ変化を加えて慣らす
家庭でできる実践例
声かけの工夫
「ダメ!」ではなく「次はこれをやってみようね」と前向きに提案する
子どもの気持ちを代弁してあげる:「○○したかったんだね」「変わると不安だったんだね」
絵本や遊びを活用した支援
絵本で「変化があるお話」を読むことで、新しいことを間接的に体験できる
ごっこ遊びで「順番が変わる」「役割を交代する」ことを楽しく練習する
日常生活での工夫
朝の準備を絵カードで「見える化」して子どもが自分で確認できるようにする
食事や買い物で「どちらにする?」と選択肢を与え、主体的に決める力を育てる
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先生や支援者との連携も大切
困った行動を共有するメリット
家庭と園・学校で同じ対応をすることで、子どもが混乱せず安心できる
保護者さんの工夫が先生の参考になり、先生の工夫が家庭に生かせる
専門機関に相談するタイミング
こだわりが強すぎて生活や集団活動に支障があるとき
療育センターや児童発達支援事業所に相談することで、専門家から具体的なアドバイスを受けられる
事例・体験談
5歳男の子のケース
毎朝、同じ靴しか履けず登園が大変でした。保護者さんが「今日はこの靴マークだよ」と絵カードを使うようにしたところ、少しずつ別の靴も履けるようになりました。「できたね!」とほめることで、次の挑戦にも意欲的になりました。
4歳女の子のケース
道順に強いこだわりがあり、違う道を通ると泣いてしまっていました。お母さんが「今日はちょっとだけ探検コースに行ってみよう」と遊び感覚で誘い、短い距離から挑戦。慣れると「今日はどの道にする?」と自分から提案するようになりました。
まとめ
子どものこだわりは「安心を求めるサイン」であり、ASD傾向のある子どもには特に見られる特徴。
療育的アプローチとして、視覚支援・スモールステップ・代替案の提示などが効果的。
保護者さんは「否定する」のではなく「理解して寄り添う」姿勢が大切。
困りごとが大きい場合は、園や学校と連携し、療育センターなどの専門機関に相談するのも有効。
今日から「こだわりを頭ごなしに否定せず、まず気持ちを代弁してあげる声かけ」を意識してみましょう。その一言が、子どもの安心と成長につながる大切な一歩になります。
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