「お子さんがなかなか落ち着いて行動できない」「予定が変わると混乱してしまう」「どう声をかけたらいいのかわからない」――そんな悩みを抱えるパパやママは多いのではないでしょうか。
発達支援の一つであるTEACCH(ティーチ)プログラムは、視覚的な支援や安心できる環境づくりを通して、お子さんが生活しやすくなるようサポートする方法です。特別な場所でしかできない支援のように思われがちですが、実は家庭の中でも工夫しながら取り入れることができます。
この記事では、TEACCHプログラムの基本から家庭での取り入れ方、日常で使える工夫、そして実際の事例までを紹介します。パパやママが無理なく取り組めるポイントを知り、お子さんの安心感や自信につなげていきましょう。
TEACCHプログラムとは?
TEACCHの基本的な考え方
TEACCHプログラムは「見てわかる」工夫を大切にした支援方法です。人は誰しも目で見て理解することで安心感を得やすいですが、特に発達が気になるお子さんにとって「視覚的に理解できること」は行動を安定させるための大きな助けになります。
例えば、口頭で「先に宿題をしてから遊ぼうね」と言われるよりも、イラストやカードで「宿題→遊び」と順番を示された方が理解しやすいのです。こうした工夫が、お子さんが安心して取り組む姿勢につながります。
専門機関と家庭での違い
専門機関ではTEACCHを体系的に行いますが、家庭でも簡単な工夫を取り入れることが可能です。日常の中で「今なにをするのか」「次はなにをするのか」が見えるようにするだけでも、お子さんは落ち着きやすくなります。特別な教材がなくても、紙やホワイトボード、写真やイラストなど身近な道具で始められるのが家庭での強みです。
パパ・ママが感じやすい困りごととTEACCHでできる工夫
予定が変わると混乱してしまう
「今日は公園に行く予定だったのに雨が降ってしまった」そんなとき、お子さんが泣き続けてしまうことはありませんか。予定が見通せないと混乱につながりやすいのです。そこで役立つのが「今日の予定カード」です。朝のうちに一日の流れをカードやイラストで示し、変更があれば「雨→おうち遊び」と差し替えることで、気持ちの切り替えがしやすくなります。
支度や片づけが苦手
「靴下を履いてから靴を履く」といった順序が分かりにくいと、支度に時間がかかってしまうこともあります。そんなときは写真やイラストを並べて手順を「見える化」するのがおすすめです。片づけも同じで、おもちゃ箱に写真やラベルを貼ることで「ここに入れる」と一目で理解できます。
集中が続かない
家庭内でも学習や遊びに集中できるように「安心できるスペース」を用意してみましょう。リビングの一角にパーテーションを置いたり、静かに過ごせるコーナーを決めたりするだけでも効果があります。
家庭でできるTEACCHの具体的な取り入れ方
視覚的スケジュールを作る
ホワイトボードやカレンダーを使い、イラストやカードで「今なにをするか」を示すと安心につながります。例えば「朝ごはん→着替え→登園」の流れをカードで貼り、終わったらはがすことで達成感も得られます。
生活動線を整える
勉強の場所、遊ぶ場所、休む場所を分けると「今は何をする時間か」がわかりやすくなります。区切りをつけることで集中しやすくなり、行動の切り替えもスムーズになります。
道具やおもちゃの収納を工夫する
おもちゃ箱や引き出しにラベルや写真を貼って「どこに戻すか」を明示すると、お子さんが自分で片づけやすくなります。習慣づけに役立ち、自己肯定感にもつながります。
パパ・ママが気をつけたいポイント
完璧を目指さない
家庭での支援は、すべてを一度に整える必要はありません。「まずは予定カードだけ」「まずは収納ラベルだけ」と小さな一歩から始めることで、無理なく続けられます。
お子さんの特性に合わせる
同じ方法でも、合う子と合わない子がいます。兄弟姉妹でも全く違う反応をすることもあります。他の子と比べず、その子に合う工夫を大切にしてください。
褒めて安心感を育てる
「できた」瞬間を逃さず認めることが大切です。「やったね」「片づけられたね」と一言かけるだけでも安心感や自信につながります。
実際の家庭での工夫事例
朝の支度がスムーズになった家庭
支度の手順をイラストで貼り出したところ、毎朝「次は何をするか」がわかりやすくなり、泣いて動けなくなることが減ったケースがあります。
片づけが習慣になった家庭
おもちゃ箱に写真を貼った家庭では、以前は片づけを嫌がっていたお子さんが、自分から「ここに入れる」と動けるようになりました。
こうした実例からも、視覚的な工夫がいかにお子さんに安心感を与えるかがわかります。
さらに広げられる家庭での発達支援の工夫
TEACCHにプラスできるアプローチ
TEACCHは「見える化」で安心感を育てますが、ABAの「できたらすぐ褒める」工夫や、体を使った感覚統合あそびを組み合わせると、より幅広い発達支援につながります。
家庭で実践できるプログラムを取り入れる
「どう取り入れたらいいのかわからない」というときには、具体的に使えるプログラムを活用するのも方法のひとつです。四谷学院の「療育55レッスン」は、家庭で親子一緒に実践できる55のプログラムが揃っており、「今日はこれをやってみよう」とすぐに取り組めるのが特長です。遊びながら社会性やコミュニケーションを育てたいパパやママにとって、家庭療育の強い味方となります。
まとめ
TEACCHプログラムは「見てわかる」工夫でお子さんが安心できる環境をつくる支援方法です。家庭でも、予定カードや収納のラベル付け、安心できるスペース作りなど、小さな工夫から始めることができます。大切なのは完璧を目指さず、お子さんの特性に合わせて少しずつ進めていくことです。
さらに、ABAや感覚統合といった他の支援方法を組み合わせたり、家庭で実践できるプログラムを取り入れることで、サポートの幅は広がります。今日から「予定をカードで見える化する」といった小さな工夫を試していただけたらと思います。お子さんが安心して過ごせる環境づくりが、日々の成長や自信につながるとなるといいですね。