「遊びが長続きしない」「音や感触に敏感で遊びを避けてしまう」「友だちとのやりとりがうまくいかない」──ASD特性を持つお子さんとの日常で、遊びの時間に悩むパパやママは少なくありません。
でも、遊びはただの楽しい時間ではなく、お子さんが社会性を学び、言葉や感覚を育てていく大切な機会です。家庭での遊びにちょっとした工夫を加えるだけで、お子さんが「できた!」と感じる体験を増やしてあげることができます。
本記事では、ASD特性を持つお子さんにおすすめの家庭あそびアイデアと、遊びを続ける工夫をやさしく解説します。パパやママが安心して取り入れられる実践的なヒントを、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
ASD特性と遊びの関係を理解する
ASD特性を持つお子さんが遊びでつまずきやすいポイント
ASD(自閉スペクトラム症)特性を持つお子さんは、遊びの中で次のような難しさを感じることがあります。
集団でのルール遊びが理解しにくい
音や光、触感など感覚に強い反応を示す
興味の幅が狭く、特定のことにこだわりがち
言葉でのやりとりが難しく、気持ちが伝わらずにイライラしてしまう
これらは「苦手だからできない」というよりも、感覚や情報の受け取り方が独特であることによる特徴です。
遊びを通じて育つ力
遊びは、発達支援の大切な場面でもあります。
社会性:順番を待つ、相手に合わせる
コミュニケーション:言葉やジェスチャーで気持ちを伝える
感覚統合:触る・動く・聞くなど複数の感覚を組み合わせる
集中力:一つのことに取り組み、達成感を得る
日常の遊びを通じて、こうした力が少しずつ育っていきます。
「できないこと」ではなく「工夫で楽しめる」に視点を変える
「なぜできないのだろう」と悩むよりも、「どう工夫すれば安心して遊べるだろう」と視点を変えると、パパやママの気持ちもぐっと楽になります。
家庭で取り入れやすいあそびアイデア
感覚を育てるあそび
粘土やスライム遊び:手でこねたり伸ばしたりすることで触覚の刺激を楽しめます。
砂遊び:サラサラ、ぎゅっと固めるなど感触の違いを体験できます。
トランポリンやバランスボール:体を大きく動かして前庭感覚やバランス感覚を育てられます。
コミュニケーションを促すあそび
ごっこ遊び:「お店屋さん」「お医者さん」など、やりとりを通じて自然に会話の練習ができます。
カードゲームやすごろく:順番を待つ・ルールを守る経験を積むのに最適です。
集中力を育てるあそび
パズル:少しずつ形が完成していく過程で達成感を味わえます。
ブロック遊び:自分の世界を自由に表現でき、想像力も広がります。
言葉を育てるあそび
絵本の読み聞かせ:リズムや音を楽しみながら言葉の世界に触れられます。
しりとりや言葉カード:遊びの中で自然に語彙を増やせます。
遊びを続ける工夫
興味に合わせて遊びを選ぶ
お子さんの好きなキャラクターや色を取り入れるだけで、遊びへの入り口が広がります。
「短時間でもOK」と考える
集中が続かなくても数分で終わって大丈夫。「少しできた」を積み重ねることが大切です。
できたことを一緒に喜ぶ
「すごいね」「できたね」と声をかけることで、お子さんの自信がぐんと育ちます。
パパ・ママが気をつけたい視点
無理に友だちと同じように遊ばせない
「周りと同じように遊ばせなきゃ」と焦る必要はありません。その子に合った遊び方で十分です。
「得意」を遊びに取り入れる
電車が好きなら電車カード、絵が好きなら絵を描く遊びなど、得意なことから広げていくと取り組みやすくなります。
小さな成功体験を積み重ねる
「一つできた」「ちょっと続けられた」など、小さな成功を大事にすることが成長への近道です。
家庭だけでは難しいと感じたら
家庭の工夫でできることはたくさんありますが、「もっと具体的な方法を知りたい」「家庭だけでは難しい」と感じることもあるでしょう。
そんなときに役立つのが、専門的な視点を取り入れた教育プログラムです。こちらの記事では、ABAや感覚統合の考え方を取り入れた「療育55レッスン」が紹介されています。遊びを通じて自然に力を伸ばしたいパパやママにおすすめです。
まとめ
ASD特性を持つお子さんにとって、遊びは成長のチャンスそのものです。感覚を育てる遊び、コミュニケーションを広げる遊び、集中力や言葉を育てる遊びなど、家庭でできる工夫はたくさんあります。
大切なのは「無理に完璧を目指さないこと」。パパやママが少し工夫を加えるだけで、お子さんが安心して楽しめる時間が増えていきます。
今日からひとつでも新しい遊びを試していただけたらと思います。お子さんと笑顔で過ごせる時間が少しでも増えるとなるといいですね。