教育

IB教育とは?概要とその特徴をわかりやすく解説

近年、グローバル化が進む中、多様な文化や価値観を持つ人々が共存する社会において、国際的な視野を持つ人材が求められています。そんな中、注目を浴びている教育手法のひとつが「IB教育」です。本記事では、IB教育についての基本的な説明や教育方針、メリットなどを解説し、IB教育の理解を深めることを目的としています。

IB教育とは?

IB教育は、スイスに本部を置く非営利団体「国際バカロレア機構(International Baccalaureate Organization、略称IBO)」が提供する教育プログラムのことです。IB教育は、令和4年5月時点、世界159以上の国・地域、約5,500校において実施されています。

IB教育の最大の特徴は、保育・教育の一体化にあります。IB教育では、生徒の知的・社会的・感情的・身体的な発達を総合的に促進するため、保育・教育を分けずに行います。

IB教育は、保育園、幼稚園、小学校、中学校、高校から導入できるプログラムに分かれており、生徒一人ひとりの能力や個性を尊重し、主体的に学ぶことを促すことを目的としています。

IB教育の概要

IB教育は、世界各国で採用され、グローバルな視野を持った人材を育成することを目的としています。

総合的な教育を行う

IB教育は、保育園から高等教育機関まで、教育の幅広い層に対して提供されています。教育内容は、文化・言語・歴史・科学・芸術・スポーツなど、多岐にわたり、総合的な教育を行うことが特徴です。

国際性を重視する

IB教育は、国際的なカリキュラムを採用し、異なる国・地域の文化や価値観を尊重することを重視しています。また、英語をはじめとする外国語の習得にも力を入れており、世界で活躍できる人材を育成することを目指しています。

自己主体的な学習を促す

IB教育は、生徒が自分自身で学ぶことを促し、自己主体的な学習を重視します。また、グループワークやディベートなど、コミュニケーション能力を身につける機会も多く設けられています。

国際的な資格を取得できる

IB教育は、学校教育において最も国際的な評価を受けているとされており、IBディプロマを取得することで、世界各国の大学に進学することができます。

IB教育の種類

プライマリーイヤーズプログラム(PYP)

3歳から12歳までの児童を対象としたプログラムで、自己探求、主体的学習、調査学習を中心とした教育を提供しています。PYPの主な目的は、児童の好奇心を刺激し、探求心を育み、総合的なスキルを身に付けることです。また、世界各地の文化や習慣について学ぶことを通じて、国際的な理解を深めることも重視しています。

ミドルイヤーズプログラム(MYP)

11歳から16歳までの生徒を対象としたプログラムで、より高度な調査学習を中心とした教育を提供しています。MYPの主な目的は、学生が自己認識を高め、自己表現能力を向上させ、自己主張できるようにすることです。また、文化的な多様性や国際的な理解を深めることも重視しています。

ディプロマプログラム(DP)

16歳から19歳までの生徒を対象とした高等教育課程で、大学や短期大学に進学するための高度な教育を提供しています。DPは、6つのグループの中から専攻科目を選択し、個人レベルでの研究やプロジェクトを行うことができます。DPの主な目的は、学生が高度な専門的スキルを身に付け、グローバルな視野を持ち、高等教育に成功するための準備をすることです。

キャリア関連プログラム(CP)

16歳から19歳までの生徒を対象として生涯のキャリア形成に役立つスキルの習得を重視したキャリア教育・職業教育に関連したプログラム。生徒がキャリアパスを確立するために必要なスキルや知識を身につけることができるよう職業専門的な教育とIB教育の理念に基づいた学習を組み合わせています。

IBの学習者像

文部科学省IB教育推進コンソーシアムより引用:

「IBの学習者像」は、「IBの使命」を具体化したもので、「国際的な視野をもつとはどういうことか」という問いに対するIBの答えの中核を担っています。具体的には、IB認定校が価値を置く人間性を、以下10の人物像として表しています。

・探究する人

私たちは、好奇心を育み、探究し研究するスキルを身につけます。ひとりで学んだり、他の人々と共に学んだりします。熱意をもって学び、学ぶ喜びを生涯を通じてもち続けます。

知識のある人

私たちは、概念的な理解を深めて活用し、幅広い分野の知識を探究します。地域社会やグローバル社会における重要な課題や考えに取り組みます。

考える人

私たちは、複雑な問題を分析し、責任ある行動をとるために、批判的かつ創造的に考えるスキルを活用します。率先して理性的で倫理的な判断を下します。

コミュニケーションができる人

私たちは、複数の言語やさまざまな方法を用いて、自信をもって創造的に自分自身を表現します。他の人々や他の集団のものの見方に注意深く耳を傾け、効果的に協力し合います。

信念をもつ人

私たちは、誠実かつ正直に、公正な考えと強い正義感をもって行動します。そして、あらゆる人々がもつ尊厳と権利を尊重して行動します。私たちは、自分自身の行動とそれに伴う結果に責任をもちます。

心を開く人

私たちは、自己の文化と個人的な経験の真価を正しく受け止めると同時に、他の人々の価値観や伝統の真価もまた正しく受け止めます。多様な視点を求め、価値を見いだし、その経験を糧に成長しようと努めます。

思いやりのある人

私たちは、思いやりと共感、そして尊重の精神を示します。人の役に立ち、他の人々の生活や私たちを取り巻く世界を良くするために行動します。

挑戦する人

私たちは、不確実な事態に対し、熟慮と決断力をもって向き合います。ひとりで、または協力して新しい考えや方法を探究します。挑戦と変化に機知に富んだ方法で快活に取り組みます。

バランスのとれた人

私たちは、自分自身や他の人々の幸福にとって、私たちの生を構成する知性、身体、心のバランスをとることが大切だと理解しています。また、私たちが他の人々や、私たちが住むこの世界と相互に依存していることを認識しています。

振り返りができる人

私たちは、世界について、そして自分の考えや経験について、深く考察します。自分自身の学びと成長を促すため、自分の長所と短所を理解するよう努めます。

日本におけるIB教育の普及状況

日本におけるIB教育は、日本国内においても注目されるようになり、近年急速に普及しています。以下に、日本におけるIB教育の普及状況について詳しく説明します。

日本のIB認定校

日本には、IBプログラムを提供する「IB認定校」と呼ばれる学校が、全国に191校(令和4年12月31日時点)存在します。これらの学校は、IBO(国際バカロレア機構)の指定を受け、幼稚園から高校までのいろいろな学校があります。

導入校の特徴

日本においては、主に私立の学校がIBプログラムを導入しています。また、インターナショナルスクールにおいても、IBプログラムが導入されているケースが多いです。

また、IBプログラムを導入する学校には、国際性の高いカリキュラムを提供することを掲げる学校が多く、生徒に国際的な視野を持たせることを目的としています。

大学入試における評価

IB教育は、国際的なバカロレア資格を取得できるため、世界各国の大学に進学することができます。日本の大学でも、IBプログラムのカリキュラムを採用する学部があるため、IB資格を持つことは大学入試において有利になる可能性があります。

以上のように、日本におけるIB教育は、急速に普及しています。ただし、教育制度やカリキュラムが異なるため、導入するためのハードルが高いことや、学費が高額であることなどの課題もあります。今後も、IB教育をより多くの子どもたちに提供するための取り組みが期待されます。

IB教育が注目される背景

グローバル化の進展

グローバル化が進む現代社会において、国境を超えたコミュニケーションや仕事が増えています。そのため、国際的な視野やコミュニケーション能力、多文化共生のスキルが求められるようになり、その教育ニーズに応えるためにIB教育が注目されるようになりました。

多様なスキルの習得

IB教育は、単に知識を学ぶだけではなく、批判的思考や問題解決、コミュニケーションスキル、リーダーシップなど、さまざまなスキルを習得することを目的としています。そのため、単なる学科的な教育だけでなく、学習者の能力を多面的に育成することができるとされ、注目を浴びています。

留学希望者の増加

留学を希望する学生の数が増えるにつれて、IB教育が注目されるようになりました。IB教育は、海外の学校でも採用されている国際的な教育プログラムであり、留学する学生にとってもスムーズに受け入れられる教育体系として人気があります。

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まとめ

IB教育は、グローバル化が進む現代社会に必要な国際的な視野やコミュニケーションスキル、問題解決能力、リーダーシップなど、多様なスキルを身につけることができる教育プログラムです。

IB教育は、学科的な知識だけでなく、批判的思考力や対話的学習、文化的理解や社会的責任、学習効果の反省と改善などを重視する教育プログラムです。そして、グループワークやプレゼンテーション、プロジェクトベースの学習など、単に授業を受けるだけでなく、自分自身で学びを深め、主体的に学ぶことを目的としています。

IBの認定を受けた学校で学ぶことで、世界中の大学へ進学する際にも有利な立場に立つことができます。また、IBの認定を受けた学校で学ぶことで、留学希望者の方々もスムーズに受け入れられる教育プログラムとなっています。

IB教育は、多様なスキルを身につけることができることから、将来的にグローバルで活躍することを目指す方や、国内外の大学進学を目指す方にとって特におすすめの教育プログラムとなっています。

IB教育を検討される方は、是非一度IBの認定を受けた学校を訪問し、授業や教育プログラムの内容を実際に見て、IB教育がどのようなものか体験してみてはいかがでしょうか。

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かつおう

奈良県在住。のびのびと自然の中で育つ6歳の娘と3歳の息子のパパ。IT×マネジメント×脳科学を駆使して、職員と子どもたちの自立をはぐくむ保育に取り組む副園長。

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